この記事をまとめると
■三菱からデリカミニのエクステリアが公開されて話題となった



■しかしデリカミニよりもeKクロスの顔の方がデリカD:5に似ているように見える



■そこで今回は三菱の「ダイナミックシールド」とは一体何なのかを紐解く



「ダイナミックシールド」って一体何?

専用サイトでエクステリアが公開されて以降話題沸騰の「デリカミニ」。「eKクロス」をベースに軽のデリカに仕立てたものですが、じつは「デリカD:5」の顔に似ているのはeKクロスのほうで、同じ三菱顔でもデリカミニはちょっと違っています。そこで、三菱顔を作る「ダイナミックシールド」とは一体何なのかを、あらためて紐解きたいと思います。



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なかなか根付かない三菱の「顔」

トヨタの「キーンルック」や日産の「Vモーション」などと同様、ダイナミックシールドは三菱車独自の個性を表現する一種のデザイン言語ですが、読者の皆さんもご存じのとおり、三菱にはこれまでにも同様の取り組みを行って来た経緯があります。



まず、2000年代初頭、フランス人デザイナーのオリブエ・ブーレイ氏より提案された通称「ブーレイ顔」があります。もともとは、2001年の東京モーターショーに出展された「CZ2」など、一連のコンセプトカーで提案されたグリル表現。



カーブを描いたグリルと、エンブレムを置いた三角形で構成される「顔」は非常に先鋭的で、シャープなボディのコンセプトカーによく似合っていました。が、市販車となると話は別で、ブーレイ氏自身による「グランディス」こそ馴染んでいましたが、「ランサー」など既存車へのあと付けはいささか無理があったようで、氏の移籍とともに短命に終わった表現でした。



けっこう違う感じするけど統一顔!? 三菱の「ダイナミックシールド」とは



続いて、ダイムラー・クライスラーとの提携解消後、新体制で気分一新の三菱は、2005年の東京モーターショーに個性的かつ魅力的なコンセプトカー群を出品。その内の1台、のちのランサーエボリューションを予告する「Concept-X」で打ち出されたのが「ジェットファイターグリル」です。



けっこう違う感じするけど統一顔!? 三菱の「ダイナミックシールド」とは



逆スラントノーズに台形グリルを組み合わせた造形は、文字どおりジェット機のエンジンを想起させるもの。多くの空気を取り込む機能性の表現など、ハイパフォーマンスなイメージは欧州などでも展開されましたが、三菱車すべてを代表する表現には至りませんでした。



想像以上に自由なコンセプト!

ふたつの要素を組み合わせた新しい顔

こうして変遷を続ける三菱の「顔」ですが、2014年に日産から三菱に移った國本恒博氏がデザイン本部長に就任すると、そこでまったく新しく打ち出されたのが件のダイナミックシールドです。



「形状は機能に従う」という発想により、先述のランエボなどのグリルから「性能を表すカタチ」を、「パジェロ」のプロテクションバンパーなどから「ヒト、クルマを守るカタチ」を抽出、2015年のジュネーブショーに出品の「Concept XR-PHEV Ⅱ」で、このふたつの要素を組み合わせた「顔」が初披露されたのです。



具体的な表現としては上下に分けたランプが特徴で、上部は歩行者の視認性を意識したデイタイムランニングランプ、下部は眩惑を防止するヘッドライトという構成。このランプ間を金属的なシールド表現でつなぎ、強靱なプロテクト感を生み出します。



けっこう違う感じするけど統一顔!? 三菱の「ダイナミックシールド」とは



非常にわかりやすい構造ですが、じつはそれをどう見せるかの細かい規定はなく、思っている以上に自由度のあるコンセプトと言えそうです。

たとえばダイナミックシールドを100%反映したという「アウトランダーPHEV」と、デリカD:5の表現では相応に異なるのが好例です。



けっこう違う感じするけど統一顔!? 三菱の「ダイナミックシールド」とは



変化と成長を織り込んだデザイン

そこでデリカミニです。あらためて顔を見れば、先述の上下2段構成すらなく、上部にはふつうにヘッドライトが置かれていて、ベースのeKクロスとは大きく異なっています。加えて、メッキパーツが前提だと思われていたシールドはブラック素材に変化、形状は初期デリカD:5のバンパーガードに準じて短かいものに。



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ところが、それでも一見してダイナミックシールドに見えるところが肝と言えるでしょう。そうした変化球もあり得ることをデリカミニは上手く表現しており、結果、デリカD:5の顔はむしろeKクロスに似ているということになったワケです。



いやいや、そんないい加減なデザイン言語はあり得ないと考えるか、あまり同じ顔ばかりじゃツマラナイと考えるか、そこは意見が分かれるところでしょう。いずれにしても、この自由度の高さによって、今度こそ三菱の顔として定着することを期待したいところです。

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