この記事をまとめると
■日産アリアがデビューして1年以上が経過したがいまだB6の2輪駆動しか発売されていない■その理由は半導体不足と物流の停滞だけでなく、EV普及に向けた日産の工場への取り組みにある
■ロボットを活かした生産性の向上に向けて日産は数々の課題に取り組んでいる
いまだワングレードしか販売されていないアリア
日産リーフで世界的に電気自動車(EV)の販売を推進してきた日産自動車が、初のクロスオーバーEVとして2021年に発売したのがアリアだ。同年6月に、予約注文による日本専用特別限定車であるリミテッドがまず発売された。続いて翌年1月から、標準の車種体系であるB6が販売になった。
アリアには、B6とB9の区別があり、車載バッテリー容量が異なる。そのうえで、それぞれに2輪の前輪駆動と4輪駆動の設定がある。通常のB6は2輪駆動での販売が行われ、現在もなおその1車種に止まっている。
背景にあるのは、自動車業界全体に影響を及ぼしている半導体不足とコロナ禍による物流の停滞だ。さらに、日産はここにきて工場生産の革新に手を付けている。それが、日産インテリジェントファクトリーの取り組みだ。
日産インテリジェントファクトリーとは、次世代のクルマ作りへの工場改革と、2050年の脱二酸化炭素へ向けた生産の実現である。
次世代のクルマとはCASEを指し、それへ向けた生産ラインの刷新を行っている。それは単に、製造の自動化を進め人的労働の軽減に止まらず、精度を高めた自動化技術を導入することで、より精緻な新車組み立てに挑む。
EVの普及に向けて日産がファクトリーでしていること
たとえばアリアで注目される技術のひとつに、希少金属を使わない巻き線式モーターがある。簡単にいえば、電磁石を利用することで永久磁石を省き、永久磁石の利用で不可欠な希少金属を不用とするモーターである。巻き線式モーターは、ほかにもアウディやメルセデス・ベンツで採用例がある。
一方で巻き線式モーターは、鉄芯に銅線を巻き付けるのに最終的には人手を必要とする部分があり、生産性に課題があった。これを改善することで、巻き線式モーターの本格的量産につながることになる。日産インテリジェントファクトリーでは、その量産に取り組んでいるのである。
ほかにも、CASEへの対応、匠の技をロボットに伝承する最高品質での量産、ロボットを活かした働きやすい労働環境、脱二酸化炭素へ向けた完全電化と再生/代替エネルギーの全面適用など、数々の取り組みを行っている。それらを、受注を消化するための生産速度に高める取り組みを行っているため、大きな受注増につながる販売車種の拡充に時間を要しているようだ。
現在販売されているアリアのB6は、一充電走行距離がWLTCで470kmであり、通常の使い勝手では納得できる性能を備えている。もちろん、e-4ORCEと名付けられた電動4輪駆動のよさを味わいたいという期待は高いが、539万円でアリアの素のよさを体感することにも妙味がある。
もちろん、全車種が一日も早く揃うことが何より待たれる。その下地づくりが、いま日産の生産工場で営々と進められていることを応援したい。

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