この記事をまとめると
■例年アメリカ各地でオートショーが開催される■それぞれのオートショーの特徴や現状について解説
■開催地によって展示車両の傾向も異なる
デトロイトショーに出展するメーカーは減った
本稿執筆時点では、アメリカ・イリノイ州シカゴにおいて、「シカゴオートショー」が開催されている。アメリカでは10月上旬開催の「オレンジカウンティ(南カリフォルニア・グレーター・ロサンゼルス地域)オートショー」を皮切りに、全米各州で年間を通じてオートショーが開催されているのだが、シカゴオートショーはそのなかでももっとも集客するオートショーとされている。
アメリカで開催されるオートショーといえば、ミシガン州デトロイトで開催される北米国際オートショー(通称デトロイトショー)が有名。
事情通は「そもそもデトロイト市とその周辺では居住人口が少なく、集客数は伸び悩んでいました。それでもアメリカメーカーに力があるころには、お付き合いで多くの海外ブランドがショーに参加していたのです」と語る。
一方でシカゴオートショーがどうかというと、まずシカゴ市は全米屈指の大都市であり、その周辺地域も含めれば人口もかなりの数となり集客が十分見込めるのである。そのシカゴオートショーが2月に開催されるのに、1月にデトロイトショーが開催されるのだから、開催時期を見ても集客はなかなか見込めないだろう。

またデトロイトはアメリカにある時差区分ではニューヨークなど東海岸の都市と同じ『東部時間』地域となるのに対し、シカゴは『中部時間』地域となり、デトロイトショーとはまた一味違うというか、展示されるクルマの趣向も多少異なってくるのである。アメリカでも東西両沿岸部を中心にSUVは高い人気を誇っているのだが、そのなかでシカゴの街を歩くとセダンがやたら目につく。つまりシカゴのある中西部では、東西両沿岸部に比べるとまだまだセダンニーズというものがあるように見える。

そして、郊外では農業に従事する人も多いので、ピックアップトラックのニーズが断然高まってくるのである。また、展示車個々を見てもたとえばキャデラックの最新クロスオーバーSUVでも、東西両沿岸部ではあまり見かけない、ドアの内張りの一部など内装色がマルーン(赤系統)になっていたりする。30年ほど前ならばキャデラックやビュイックなどラグジュアリーブランドではマルーン一色の内装色も珍しくなかったが、いまは東西両沿岸部ではなかなかお目にかかれない。

つまり、仮にシカゴ地区の人がデトロイトショーへ出かけても、置いてある展示車の趣向性がいまひとつ合わないのである。
シカゴオートショーにはワーク仕様のモデルが多数
また、デトロイトショーに比べシカゴオートショーは会場でワールドデビューするモデルは少なく、市販車メインの展示でトレードショー色を強めて開催を続けてきた(いまはデトロイトショーが衰退しているのでシカゴオートショーのほうがワールドデビューモデルは多いぐらいにはなっているが……)。前述したようにピックアップトラックのニーズも高いので、展示車も多く、しかもパーソナルユース仕様だけでなく、高所作業車などいわゆる「ワーク仕様」のモデルの展示も多く、バンやパトカーなども展示されており、見ごたえも十分になっている。

シカゴショーが終わったあとすぐに、3月下旬から4月上旬あたりからニューヨークのマンハッタン島で「ニューヨーク国際オートショー」が開催される。こちらも人口の多いニューヨーク地区で開催されるので集客もかなり多いが、ニューヨークという土地柄、投資関係の人へのアピールの場所と捉えて出展するメーカーも多いようだ。ショー会場のほか、さまざまなイベント会場で各メーカーが個別に新車披露パーティなどをショー開催のタイミングで行っている。

西海岸では「ロサンゼルスオートショー」が開催される。近年ではカリフォルニアが環境問題に積極的に取り組み、アメリカ国内でも桁違いにBEV(バッテリー電気自動車)が走っている土地柄なので、BEVをメインとしたZEV(ゼロエミッション車)関連の展示が目立っている。地元ロサンゼルスはまさに自転車代わりにクルマがないと生活できない地域。そのためクルマが当たり前すぎて、地元の人のオートショーへの眼差しは意外なほど冷めているのだが、ZEVに熱心という特徴が定着してきたので、シカゴ、ニューヨーク、ロサンゼルスの各オートショーは今後も世界から注目され、いまの存在感を維持していくのではないかとされている。

ヨーロッパでは自動車は兵器以上に社会にとって悪いもののように見られていることもあり(内燃エンジン搭載車)、オートショーの衰退が止まらない。アメリカでもデトロイトショーの衰退は目を覆うばかりだが、それは局地的というかデトロイトショー固有の問題のほうが大きく作用しているともいえるだろう。
