この記事をまとめると
■2019年にBMWはX7をベースにしたコンセプトカーのX7ピックアップを公開■BMWがSUTに参入するかと期待されたが実現はしなかった
■その成否はともかく、すでに多くの日欧メーカーがSUTを販売している
BMWのX7改ピックアップに業界騒然
コロナ禍に入る前の2019年5月、BMW本社のプレスリリースに驚いたり、または納得する人が世界中にいたことだろう。
SUVのBMW「X7」をベースとしたピックアップトラックのコンセプトモデルが公開されたのだ。X7 xDrive40i (最高出力250kW)の後席後部をオープンスペースに大幅改造したモデルで、荷台の縦方向の長さは140cmで、リヤゲートを下げた状態だと最大で200cmに達する。
公開されたコンセプトモデルでは、荷台にBMW「F850 GS」を搭載し、上級な遊び心を演出した。

残念ながら、このX7ピックアップトラックは”コンセプト止まり”でいまだに量産されていない。当然、コロナ禍の影響が大きかったものと考えらえるが、結局はBMWユーザーやBMWディーラーからの要望がさほど高くなかったことが未量産の背景にあるのではないだろうか。
こうした、SUVをベースとしたピックアップトラックを、SUT(スポーツ・ユーティリティ・トラック)と呼ぶことがある。
そもそも、SUVは1990年代、ピックアップトラックの派生車としてアメリカで普及が始まったカテゴリーだ。それが2000年代に入り、欧州メーカーや日系メーカーのSUVシフトが盛んになるなか、SUVの差別化要因としてSUTという考え方が出てきたという経緯がある。
ビッグ3とトヨタ以外にも参入を果たしているメーカーは多い
代表的なSUTは、GMキャデラック「エスカレードEXT」、GMシボレー「アバランチ」、ハマー「H2 SUT」、そしてホンダ「リッヂライン」など、主にアメリカ市場向けモデルである。

一方で、プレミアムブランドでSUTというよりも、純粋にピックアップトラックに参入した事例がある。それが、メルセデス・ベンツ「Xクラス」だ。登場したのは2017年だが、2020年5月に生産中止という、メルセデス・ベンツ史上でも稀な短命モデル(クラス)となってしまった。

このXクラス、ダイムラー(当時)とルノー・日産(当時)の業務提携によって誕生した企画で、ベースは日産のピックアップトラック「ナバラ」だった。「ナバラ」は、北米向けピックアップトラックではなく、東南アジアや南米など向けの商用と乗用を兼用する庶民向けモデルという位置付けのモデルだ。

それを外装・内装を演出だけで、いきなりメルセデス・ベンツを名乗られることに、多くの人が違和感を持ったのだろう。仮に、メルセデス・ベンツがこの領域に本気で参入するのならば、自社のSUVモデルをベースとしてSUTを企画するべきだったと思う。
こうした東南アジア・南米向けのピックアップトラックを使った、欧米ブランドのコラボでの成功例は、フォード「レンジャー」とフォルクスワーゲン「アマロック」であろう。

今後、SUVやピックアップトラックもグローバルでEVシフトが進むと考えられるが、そうなるとさまざまなメーカーからEV版のSUTが登場するのかもしれない。