この記事をまとめると
■レクサスからLBXというブランド最小サイズのコンパクトカーが登場する予定だ■かつて日本の自動車業界にもプレミアムコンパクトを掲げたクルマが販売されていた
■安価かつ利便性の高さを追求しがちな軽自動車でプレミアム性を追求したモデルもあった
日本の自動車業界を彩ったプレミアムコンパクトを振り返る
2023年6月に立て続けに公開となったレクサスの新型SUVたち。その先陣を切った「LBX」はTNGAのなかでももっともコンパクトなGA-Bプラットフォームを使用するもので、ボディサイズにとらわれない高級車として新たな価値を創造しようとしていることが見て取れる。
ただ、過去にもコンパクトなボディに高級感を詰め込んだコンセプトのモデルは複数存在しており、なかにはいまでも乗り換える先がないと言われるほど愛されているモデルも存在している。
トヨタ・プログレ
“小さな高級車”というキャッチコピーが鮮烈に印象に残っているプログレは、1998年5月に登場したトヨタの4ドアセダンだ。ボディサイズは全幅が1700mmとギリギリ3ナンバーサイズとなっているが、ほぼ5ナンバーサイズに収まっている点が特徴で、全長も4500mmと非常にコンパクト。
ただ、ホイールベースは2780mmと当時のクラウンと同等のサイズを確保しており、後部座席のスペースも十分とられていた。

また、搭載されるエンジンも直列6気筒の2.5リッター及び3リッターのみのラインアップとなっており、余裕の動力性能を確保していたほか、室内には当時のクラウンですら木目調であったところ、リアルウッドを採用し、吸音材もふんだんに使用するなど、質感はクラウン以上とも言われるほどだった。
残念ながら販売的には成功したとは言い難いプログレであったが、2007年5月の終売以降、同じコンセプトの車両が存在しないことで乗り換え先がなく、いまだにプログレを乗り継いでいるユーザーも少なくないようだ。
こだわり満載だったが爆発的ヒットにはならず
マツダ・ベリーサ
マツダの上級コンパクトカーとして2004年6月に登場したベリーサは、2代目デミオと同じプラットフォームを使用して誕生したモデルだ。上級モデルということもあって、エンジンは1.5リッターのみのラインアップとなっており、ミッションはデミオに存在していた5速MTは用意されず4速ATのみとなっていた。

もともとフォード・フィエスタともプラットフォームを共有するだけあって、デミオでも骨太な走り味が好評となっていたが、ベリーサはより欧州車らしい味付けに変更されていた点も魅力のひとつ。
また、インテリアにはピアノブラックなどを多用して高級感を演出し、このクラスの車両としては希少な本革シートもラインアップ。さらにウインドウガラスは遮音性の高い厚いものが採用されているうえに、ドアまわりのウェザーストリップはドア側と車体側、両方に備わって気密性を高めるなど、大小さまざまな手法で質感を高めていた。

その結果、4代目デミオ(のちのMAZDA2)が登場してもしばらく販売されるほどのロングセラーとなり、多くのユーザーに愛される1台となっていたのだ。
スバル R1
ボディサイズの上限が決められている軽自動車は、ほとんどの車両でそのサイズいっぱいのボディを持ち、限られた大きさの中でいかに広く快適な空間を作り上げるかがテーマになっている。
しかし、2005年1月に登場したスバルR1はあえて全長を軽自動車枠よりも短く設定し、コンパクトな2+2のマイクロクーペとして登場した。

ターゲットとしたのは子育てが終わったシニア世代となっており、あくまでフロントシート重視で、リヤシートはエマージェンシー用もしくは荷物スペースと割り切ったもの。その代わりシートにはレザーとアルカンターラを使用した豪華なものを設定するなど、質感をアップさせる方向に力を入れていた。

搭載エンジンは当時のスバルが誇る直列4気筒の660ccエンジンが設定されていたが、当初はDOHC仕様のみ(のちにSOHCやDOHCスーパーチャージャーも追加)となっていた点も上級感を重視していたからかもしれない。
実際のところはそのコンセプトは軽自動車ユーザーにはなかなか受け入れられなかったようで、およそ5年間の間に1万5000台ほどしか販売されなかったのは残念だった。