この記事をまとめると
■ジャパンモビリティショー2023が開幕■BYDブースでは大型SUV「U8」を展示している
■「U8」の驚くべき性能について解説
大柄ながら0-100km/h加速は3.6秒
実質成長率が200%を優に超えている中国の有力EVメーカー、BYD。2022年は180万台強を売り上げ、中国のEVブームを牽引するトップランナーといっても過言ではないだろう。もちろん、日本国内にもアット3やドルフィンといったベーシックEVが上陸し、価格的なアドバンテージもあって、かなりの善戦をしているという。
そんなBYDが、雨後の筍のように増え続けている中国の富裕層を黙って見ている訳もなく、メルセデス・ベンツやトヨタと合弁会社や協業によってリッチ&ゴージャスなEVを続々とリリースしはじめたのだ。それも、単純に価格だけ高級車のレベルになっているのではなく、世界の富裕層が納得し、一般大衆が驚くようなクルマを仕上げており、今回のモビリティショーで出品されたU8はそんな自信に満ちた1台に違いない。
トヨタの高級ブランドにレクサスがあるように、BYDもプレミアムモデル専用のブランド「仰望(ヤンワン)」を立ち上げたのは記憶に新しいところ。そして、オート上海2023ではふたつのインパクトあふれるモデルが発表された。ハイエンドに属するであろうSUVの「U8」と2シーターのスーパースポーツ「U9」は、中国はもちろん、世界中から大きな注目を浴びたのである。

そして、今回のモビリティショーの参考出品に選ばれたのがU8。全長5メートルを超える大型SUVで、最高出力1100馬力以上と豪語されている。総重量は3.5トンに及ぶというが、0-100km/h加速は3.6秒という瞬足を誇る。
ここまでなら、優秀なパフォーマンスの電動SUVというポジションに留まろうが、BYDの真骨頂はその先にあることは言うまでもない。
タイヤが1本パンクしても走り続けられる
まずはe4プラットフォームと呼ばれる4輪独立モーターで、それぞれのホイールに装着されたモーターを緻密に制御することで、従来の常識が通用しない走り、運動性能を実現しているのだ。たとえば、戦車のようにその場で360度回転できる「タンクターン」は、大柄なボディをマイクロカーのように振りまわせる。あるいは、4本のうち1本のタイヤがバースト、パンクしたとしても平然と走り続けられるなど、クルマの動きとしてはじつに斬新なもの。
また、BYDが注力している新たなサスペンションシステム「Di Sus」もU8専用設計となり、無類の走破性と乗り心地を両立したという。驚くべきは、水陸両用車並みに水上走行が可能というポイント。水深1.5メートルまではタイヤで走行し、それより深くなるとボディが浮いて進んでいくというのだ。これは富裕層ならずとも見逃せないアドバンテージで、並いるハイエンドSUVが軒並み悔しがること間違いない。

4モーターを搭載するハイパーモデルといえば、ここ最近ではリマック・ネヴェーラが注目に値するパフォーマンスを発揮している。およそ1900馬力を発揮し、0-100km/h加速1.97秒と素晴らしいものだが、その分お値段も240万ドル(およそ3億3000万円)と目をむくような設定。一方、U8の価格は未公表ながら2000万円程度に収まりそうな雰囲気。これは比べる方が間違っているかもしれないが、バリューフォーマネーという面では明らかにU8に軍配が上がるのではないだろうか。その証拠に、中国本土では正式発売前にもかかわらず予約が殺到しており、その数は数千台におよぶという。

モビリティショーの会場で、日本への導入を尋ねたところ、前述の予約数もあってか「望み薄」との返答。だが、U8の上陸に期待を寄せるユーザーは決して少なくないだろう。