この記事をまとめると
■2023年9月のタイBEV販売台数ランキングでテスラ・モデル3がトップ10にランクインした■車両価格の値下げによりモデル3は販売台数を大きく増やした
■いまやテスラは価格面でも中国系ブランドのBEVとガチのライバルとなっている
テスラ・モデル3の値下げでタイBEV市場の状況が変化
ある中国系メディアの報道によると、2023年9月単月締めでのタイ国内おけるBEV(バッテリー電気自動車)の車名別ランキング上位10車をみると、そのほとんどが中国系メーカー車なのだが、そのなかでテスラのモデルY(250台)、モデル3(125台)がトップ10に入り、中国系ブランド以外で唯一ランクインしている。
現地在住の事情通に話を聞くと、「最近とくにテスラ車が増えている」とのこと。その背景のひとつとしてあるのが車両価格の値下げである。
モデル3の後輪駆動モデルの現地価格は159万9000バーツ(約650万円)、ウェブサイト上では値引きをすると142万6500バーツ(約580万円)になるとされていた。中国BYD(比亜迪汽車)で同クラスとなる「シール」のタイでの販売価格は、廉価仕様の「ダイナミック」で132万5000バーツ(約537万円/後輪駆動)、後輪駆動の「プレミアム」で144万9000バーツ(約588万円)となっている。
タイではモデル3とシールは価格も含めてガチのライバル。シールは2023年末に正式発売になったばかりだが、2023年12月にバンコク市内で定点観測すると、すでに走っているのを見かけており、その出足は好調のようだ。
中国系のほかにもタイでは欧米系ブランドのBEVが販売されているが、中国系とは圧倒的な価格差があった。販売ターゲットについては明確な違いがあったが、テスラが値下げしたことにより、中国系ブランドを脅かすようになってきたのである。
また、韓国ヒョンデでもアイオニック5を2023年11月にタイで正式発売している。

このクルマも中国系BEVの購買層に食い込める価格的パフォーマンスを持っている。
バンコクのモーターショーで感じたテスラの本気度
2023年9月に南カリフォルニアを訪れ、現地在住の事情通に話を聞くと、テスラが値下げしたことによって購買層に変化が出てきていると話してくれた。

「それこそ最近までは富裕層の日常生活の移動手段としての需要が目立っていました。しかし、値下げにより富裕層はテスラから離れつつあります。その代わり、テスラ・モデル3などがトヨタ・カムリやホンダ・アコードなどのユーザー層をメインターゲットにしつつあります。
かつては、東南アジアにおけるテスラ車のイメージは、「富裕層の移動手段」といったところであった。ドイツなど欧州系高級車を所有しながら、セカンドカーとして所有しているテスラにて買い物などに出かけるというのがデフォルト。
あくまで私見だが、テスラは値下げにより東南アジアなどで新しいユーザーを開拓しつつ、販売のボリュームゾーンを移しているようにも見える。BYDなどの価格的にも魅力の高い中国系BEVに対しても十分に価格競争力があり、しかも「テスラ」という世界的なブランドパワーが強力な武器になっている。

これまでバンコクのモーターショーの会場でテスラのブースを見た記憶が筆者にはないのだが、今回のバンコク・モーターエキスポ2023では、小さいながらもテスラがブースを構えていた。意外に思える一方でタイ市場への「本気度」を見たような気がしている。
日本では間もなくBYDがシールを発売するとされている。

日本でもモデル3とガチンコで販売競争を展開していくことになるのだろうか。