この記事をまとめると
■クルマの擬音は「ブオオオオオーッ」みたいな音が一般的



■現代ではハイブリッドやEVが増えてきたのでいままでの擬音は最適ではない



■一部車種では、聞き手次第で異なる解釈が生まれる場合も!



いまの時代にあったクルマが発する擬音とは

1970年代に放映されていたTVアニメ『ど根性ガエル』の劇中で、登場人物である「南先生」が乗っていたクルマの愛称は「ブロラン号」だった。ブロラン号のモデルは、おそらく1963年から1969年まで販売されたダイハツ・コンパーノ ベルリーナと思われるため、その排気音はブロロン、ブロランと、かなりうるさかったのだろう。それゆえ、南先生が乗るクルマの愛称が「ブロラン号」になったというのは理にかなっている。



いつまで「ブオオオオ」を使うんだ? クルマが進化した現代に「...の画像はこちら >>



しかしいま、多くのエンジン車の排気音は1960年代や70年代当時と比べれば格段に静かになっており、加えてハイブリッド車も隆盛をきわめているというのに、いまだ多くのマンガなどで走行音の擬音語が「ブオオオーッ」的なものになっているのは、正直いかがなものか? そろそろ「クルマに関する新たな擬音語」が設定されてしかるべきなのではないか──ということで、(ヒマなので)現代における正しい擬音を考えてみることにした。



いつまで「ブオオオオ」を使うんだ? クルマが進化した現代に「擬音」を見直すべきだとマジメに考えてみた
トヨタ・プリウス



まず、一般的なエンジン車が走行する際の擬音語は、これまで「ブー系」または「ガー系」の音で表現されることが多かったが、「ガー系」の擬音語はいまだ有効であろう。いくら排気音が静かになったとしても、ある程度以上の速度で走るクルマは、現代においても「ガーッ」あるいは「ゴーッ」というようなロードノイズや風切り音を発生させるからである。



しかし、「ブオオオオオーッ」的なブー系音を多大に発しているのは、いまやトラックか一部の輸入スポーツカー、あるいは改造車ぐらいのもの。それゆえ、一般的なエンジン車の走行擬音語は今後、ロードノイズと控えめな排気音が混じり合った「んあああああーっ」ぐらいのものに改定されるべきであろう。



そして、モーター走行とエンジンを使っての走行が断続的に繰り返されるハイブリッド車の走行擬音語は、正しくは「んー、んー、んあああがあああっ、んー」ぐらいになるべきだ。しかし、これだと文字数が多すぎてマンガのコマ内に収まらず、そして字面も美しくないため、実際には「ンンアアアアーッ」ぐらいが落としどころか。



いつまで「ブオオオオ」を使うんだ? クルマが進化した現代に「擬音」を見直すべきだとマジメに考えてみた
日産セレナ



完全に余談ではあるが、過日劇場で観た映画『翔んで埼玉~琵琶湖より愛を込めて~』は、なかなか楽しめる良質なエンターテイメント作品だったが、劇中で白い商用車を運転していた市役所職員の男が、まるで昭和のドリフのタクシーコントのようにステアリングを右へ左へと小刻みに、いわゆるソーイングを常に行っていた点にだけは苦言を呈したい。



現代のクルマで直進時にあのようなハンドル操作を行ってしまったら、クルマは右へ左へと小刻みに進行方向を変えることになり、乗員はクルマ酔いをして嘔吐してしまうだろう。現代の俳優陣および演出家各位におかれては、「いかにドリフっぽい動きなしで“クルマの運転”を表現するか」という点について、もう少し真剣に考えていただきたいと切に願うものである。



いつまで「ブオオオオ」を使うんだ? クルマが進化した現代に「擬音」を見直すべきだとマジメに考えてみた
ソーイングのイメージ



特徴的な音はそのままで!

それはさておき、「クルマの新しい擬音語」だ。日本ではいまだ隆盛とは言い難いが、増えつつあるEVの走行音は「イーーーーッ」で良いと思うが、もしかしたら「スウィーーーン」のほうが適切なのかもしれない。

ここについては、実際に日々EVに乗っている有識者の意見を待ちたいところだ。



また、往年のスバル車の不等長エキゾーストマニホールドによるボクサーサウンドを表現する擬音語は「ドコドコ」「ドロドロ」「ドルルルル」などさまざまなパターンがあるが、これに統一表記を求めるのは困難である。あの音は人によって聴こえ方が異なるもので、そもそも同じスバル車であっても、時代や世代によってボクサーサウンドの音色は異なるからだ。



いつまで「ブオオオオ」を使うんだ? クルマが進化した現代に「擬音」を見直すべきだとマジメに考えてみた
スバル・インプレッサWRXSTI S202



そして、ランボルギーニ・カウンタックのエンジンを始動させる際の独特のセル音も、「クゥーッ、クゥーッ」的に表記する人もいれば、筆者などは「ギューッ、ギューッ」という音に聞こえるわけだが、これも統一ないし改定は難しい。セル音という機械語(しかもランボルギーニ語!)を人間語へと正確に、かつ共通性をもって翻訳するのは、外国語を日本語へ無理なく翻訳する以上に困難な作業であるからだ。



いつまで「ブオオオオ」を使うんだ? クルマが進化した現代に「擬音」を見直すべきだとマジメに考えてみた
ランボルギーニ・カウンタック



とはいえ、もしもクルマが登場するマンガ内の擬音語にスーパーリアリズムを求めるのであれば、降雨中の信号待ち時、車内でふたりの登場人物がしんみり語り合っているシーンにおいては、「カンカンカンカンッ!」という雨粒がトタン屋根を叩いているかのような擬音語を描き加えるべきだろう。



いつまで「ブオオオオ」を使うんだ? クルマが進化した現代に「擬音」を見直すべきだとマジメに考えてみた
雨の日のイメージ



近年のクルマは屋根の鉄板を薄くしても強度を保てるようになったからか、それとも遮音材の関係なのかは知らないが、とにかく最近、大きな雨粒がルーフに落ちてきた際の音はきわめてトタン屋根的である。まぁそんなところでリアリズムを追求しても「労多くして功少し」ではあるのだろうが。

編集部おすすめ