この記事をまとめると
■2024年6月16日にマツ耐の第2戦が開催された■マツダのモータースポーツプロジェクトの一環として行われている「バーチャルからリアルへの道」の2期生が参戦
■2期生が乗った2台のロードスターは無事に完走
選ばれた6名の2期生のモータースポーツ活動がいよいよ本格始動
ひと口にモータースポーツといっても、F1のようなプロフェッショナルな世界から、もっと身近なグラスルーツと呼ばれるジャンルまで、その幅は無限大だ。その後者のほうでいま、一番輝きを見せているトップランナーのひとりがマツダだろう。
2002年に2世代前のNB型で開始された“ロードスター・パーティレース”は、現行4代目のND型になって人気が再加速。

また、2003年からは、バトル抜きでタイムアタックのみのMFCT(マツダファン・サーキット・トライアル)も開催。そして2012年には、今回取材したマツ耐(正式にはマツダ・ファン・エンデュランス)も行われるようになり、いわゆるマツダのグラスルーツカテゴリー3部門がコンプリートした。
そして昨年から始まったのが「バーチャルからリアルへの道」。簡単にいうと、これまた最近ブームの“eスポーツ”の世界と、サーキットを実際に走って戦うマツ耐をつなぐ新たな試みのこと。マツダが後援するeスポーツ大会で優秀な成績を収めた候補者から希望を募り、1泊2日の座学やサーキットでのトレーニングを実施。合格者にはレース仕様のロードスターで、マツ耐に出場するチャンスが与えられるのだ。

初年度の昨年は8名が選抜され、やはり6月のもてぎラウンドからデビュー。この選ばれし精鋭たちのパフォーマンスが、じつは衝撃だった。2戦目の筑波ラウンドでは総合2位、さらに最終戦の岡山ラウンドでは総合優勝まで達成。なかにはマツ耐以外のカテゴリーにも参加するようになったメンバーもいるし、パーティレースで優勝する快挙を達成したメンバーもいる。
そんな経緯から、今年の2期生メンバーにも多くの希望者が殺到。3月に美祢試験場と筑波サーキットで開催された合宿の結果、27名の参加者から6名が合格となって、マツ耐への参戦が実現することになった。デビュー戦の舞台は昨年同様に、栃木県のモビリティリゾートもてぎ。今年のマツ耐の第2戦として、6月16日のワンデーで開催された。

今回は5号車「バーチャルtoロードスターR」に鍋谷泰輝/石水優夢/稲葉隼平/三宅陽大、6号車「バーチャルtoロードスターV」に新木悠真/井上幸浩/岩見瞭太朗/加藤達彦がエントリー。じつは合格者のうち川上 奏が諸事情から今回の参戦がかなわず、ここには名前がない。さらに井上幸浩の本職は落語家の“桂 三幸”。2期生の合格者では群を抜く44歳という年長者で注目を集めていたが、練習に参加できなかったため、今回はスタッフの一員としてサポートにまわることになった。
つまり、2期生では5号車の鍋谷と石水、6号車の新木と岩見の各2名ずつが今回ステアリングを握る。5号車の稲葉と三宅、6号車の加藤はいずれも1期生のメンバーで、今回は2期生たちのアシストを兼ねての参加となった次第だ。
さて、ここでマツ耐というレースの概要を説明しておきたい。まずは先ほどのグラスルーツ3部門のうち、ドライバーが4名まで登録できる唯一の団体戦となる。

ただし、安全に関わる面では厳しい。服装こそ難燃性素材の長袖&長ズボンであればOKだが、ヘルメットは製造10年以内のJIS規格品が義務。グローブやシューズもしっかりチェックされる。レース中の給油が禁止されているのも、一番の理由は安全性の確保からなのだ。夏場は熱中症対策でエアコンの作動義務が設けられることすらある。
予選タイム順でグリッドを決めて、ローリングスタートの決勝は150分という長丁場。ドライバーが1~3名でも公平性と安全確保のため、途中3回はピットで1分以上の停車が義務となっている。スタート時の満タンで走り切るというのが主なルールだ。
ちなみにマシンのポテンシャルや改造範囲により、マツ耐では合計20クラスを設定。基本的にはクラス別での順位を争うが、レースごとに総合の上位3位までが表彰の対象になり、ポディウムに立つことが許されるルールも設定されている。
まずは完走を果たして無事な滑り出し
今回のもてぎラウンドはフルグリッドの60台で満員御礼。

11時20分から20分間行われた予選では、あくまで本番の決勝を見据えた戦略を実行した。全員がコースを走って状況を把握することと同時に、限られた時間のなかでのドライバー交代の練習も兼ねてのことだ。
その結果、5号車はベストラップが2分31秒356でクラスでは堂々のトップ。総合でも19位というグリッドを獲得した。一方の6号車のベストラップは2分33秒591。クラスでは5番手で、総合では29位というポジションで、決勝をスタートすることになった。

スタートドライバーは5号車が三宅、6号車は加藤で、2台とも1期生が務めた。マシンの性能に影響しない計器類の装着は自由で、携帯電話での通話もマツ耐では認められている。そこで得られたデータをもとに、2番目以降のドライバーに随時指示が出される仕組みだ。その後は大きなトラブルもなく、3回のドライバー交代をこなして2台とも無事にチェッカーフラッグを受けた。
決勝中にピットが少し騒然としたのは2回くらいだろうか。

結果は5号車が54ラップを走破してクラス7位。6号車は52ラップでクラス12位。昨年の1期生たちのデビュー戦は1台での参戦でクラス3位だったが、周回数は今年の5号車と同じ54ラップ。昨年も今年もセーフティカーの導入がなかったので、デビュー戦としては上々の滑り出しといっていいだろう。

2期生に対する加藤彰彬監督の総評は「じつは昨年のメンバーに比べると今年の2期生は、リアルの経験が少ないんです。その割には頑張りました。他車との接触がなく、迷惑をかけず、反則もしないという、このチームの目標というか伝統も守られました。次戦の筑波はもてぎに比べるとバーチャルでもリアルでも走り込んでいる舞台なので、より上位を目指せるように全員で頑張りたいです」とのことだった。
なお、今回のマツダの取り組み、「バーチャルからリアルへの道」は「マツダスピリットレーシング」という名のもとにマツダが行うモータースポーツへの取り組みの一環となっている。
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