この記事をまとめると
■レクサスLBXの販売が好調に推移しており新型車特需が続いている■「ラグジュアリー・コンパクトハッチバック」というカテゴリーが人気を博している
■ちょっと贅沢なコンパクトハッチバックがますます注目されそうだ
5月はレクサスの新車販売の4分の1がLBX
レクサスLBXの販売が好調に推移している。LBXの国内発表は2023年11月9日。そのときのプレスリリースによると、「本物を知る人が素の自分に戻れるクラスレスコンパクトで新しいラグジュアリーの価値を提供」とある。
「2023年12月下旬ごろの発売を予定」ともしていたので、自販連(日本自動車販売協会連合会)統計による、2024年1月から5月までの累計販売台数をみると、8744台であり、月販平均台数は約1748台となった。2024年5月単月だけをみると、レクサス全体の新車販売台数の約25%がLBXとなっている。発売間もないので新型車特需のようなものが続いているとしても、勢いを感じる販売台数が続いている。
レクサスオーナーからは「次元が異なる」とお叱りを受けるかもしれないが、日産ノートの派生3ナンバー車として、ラグジュアリームードも高い「ノートオーラ」も販売が好調である。
2024年1月から5月の累計販売台数は1万9531台となり、ノートシリーズ全体の販売台数の約4割がノート・オーラとなっている。
BMW1シリーズやメルセデス・ベンツAクラス、BMWミニなどが「プレミアムコンパクト」と呼ばれることがある。レクサスLBXはクロスオーバーSUVスタイルながら、この「プレミアムコンパクト」に属するものと考えられるが、ノートオーラはそれらより若干格下になるものの、「5ナンバーノートよりは上」といった立ち位置となる。いわば「ラグジュアリーコンパクトハッチバック」とでも呼びたくなるカテゴリーのモデルといっていいだろう。
過去には「リッターカー」などとも呼ばれたコンパクトハッチバック。自販連統計によると、コンパクトハッチバックの属する小型乗用車の2023暦年(1月から12月)締め年間新車販売台数は89万3228台となり、軽四輪乗用車の134万1330台を大きく下まわっている。
出張やレジャーなどでレンタカーを利用するときによくお世話になるのがコンパクトハッチバックといっていいだろう。トヨタ・ヤリス、ホンダ・フィット、日産ノート、マツダ2、スズキ・スイフトなどがお馴染みといえる。
このような事業用としてのニーズが多いので、ざっくりいえば残価設定ローンにおける設定残価率では軽自動車より10%ほど落ちることも珍しくない。軽自動車は10年以上や走行距離10万km以上でもしっかりと価値が残ることが多いが、コンパクトハッチバックは再販価値の値落ちスピードが速いことも目立っていた。
排気量やボディ寸法の規格の厳しい軽自動車に比べれば、燃費性能などでもコンパクトハッチバックのほうが実用走行では高いともいわれているが、維持費の安さもあって軽自動車の人気が高まっている。
プレミアム感マシマシで軽自動車との差別化を演出したい
ただ、この「軽自動車と比べると」という見方が間違っているのではないかと筆者は考えている。LBXやノートオーラの好調な販売を見ていると、個人ユーザー向けには高級イメージを強調した「ちっちゃいけど贅沢」というコンパクトモデルに特化してもいいように考える。LBXの属するコンパクトクロスオーバークラスは、トヨタ・ライズやトヨタ・ヤリスクロスの人気も高い。
5ナンバーサイズでそれほど高級感があるともいえないライズでも、意外なほど上級グレードがよく売れると聞いたこともあり、明らかに小さいモデルでも高級感を求める層というものは存在する。最近発売されたホンダWR-Vも販売が好調に推移しており、N-BOXなど軽自動車からの乗り換えも目立つという。
ヤリスクロスやWR-Vをコンパクトカーと呼んでいいのかという話もあるが、ノートオーラもLBXも含めて3ナンバーサイズでも排気量が小さめなモデルがよく売れるのだから、いっそのこと5ナンバー規格を全幅ベースで1750mm未満まで拡大させてもいいようにも感じる。
コンパクトサイズでも単純なハッチバックスタイルではなく、クロスオーバーSUVスタイルということもあるが(事業用ニーズがそれほど多くないのも人気を後押ししているものと考えている)、ライズもヤリスクロスも再販価値は高く、WR-Vも残価設定ローンでは強気の残価率を設定しているが、ハッチバックモデルでもノートオーラのように3ナンバーサイズで付加価値を高めれば、十分再販価値の高め推移は期待できるだろう。
しかも、ノートオーラでは輸入車からの乗り換えも多いというから、新規ユーザー層の獲得にもつながる。
トヨタ・カローラスポーツを見かけるのにもその傾向を感じている。かつてトヨタには2.4リッターエンジンを搭載したブレイドというモデルがあったが、このモデルも意外なほど人気が高かった。トヨタ店とトヨペット店扱いということもあり、クラウンなど上級車をファーストカーに持つ富裕家庭のセカンドカー的需要も多かったようである。
でもそうなると、レンタカーなどのフリート販売向け車両はどうするのか? という話もあるが、これはトヨタ・カローラセダンやツーリングなどのほか、5ナンバーサイズのカローラアクシオとフィールダーが併売されているケースを踏襲すればいいだろう。
フリートユースをメインとし、セカンドカーや軽自動車的な街乗り用としてもベーシックなコンパクトハッチバックモデルを希望する個人ドライバーにも向け5ナンバーサイズのフリートやセカンドカーニーズなどに特化したモデルをラインアップすればいいものと考えている。
モデルチェンジのたびにパワートレインを新設計するのではなく、軽自動車のようにキャリーオーバーにすればコストも抑えられるだろう。
現状のコンパクトハッチバック車では、フリート販売を意識しながらも、個人ユース向け仕様(上級グレード)も用意するから、いたずらに単一車種でワイドバリエーションになりがちなのもこのカテゴリーの特徴のように見える。ところがノートはすでにモノグレード(単一グレード)となっており、オーラに比べると装備内容も簡素な印象を受けるので、フリートユース及びセカンドカーや街乗りメインユースを重視しているように見える。
新車販売市場の縮小傾向が止まらないようにも見えるなか、車種を増やすことになるのではともなるが、国内市場では昔ほど単一車種で量販(数がすごく売れること)が期待できないのもまた現実。ならば「選択と集中」ではないが、プレミアム感の増したコンパクトカーを用意し、多少価格を高めに設定して台当たり利益を高めていけばいいようにも考える。
現状を見ると、新車販売ではほぼ絶滅危惧種となっているセダンであるが、街なかではまだまだ乗り続けているユーザーも多い。コンパクトクロスオーバーSUVがそのようなユーザーの乗り換え先となっているようだが、今後は「小さくて取りまわしの良い高級車」というものとして、ちょっと贅沢なコンパクトハッチバックがますます注目されるかもしれない。