この記事をまとめると
■スバルは国内出資特約店を地域ごとに経営統合するという発表を行った■日本の新車販売の環境はいまだに1980年代からあまり変わってない
■新車ディーラーではこれまでの販売スタイルが限界を迎えていると言われている
スバルディーラーの体制が変わろうとしている
スバルは2024年7月11日に「SUBARU 国内出資特約店を地域ごとに経営統合」というニュースリリースを発信した。リリースによると、すでに2008年より国内出資特約店の経営体制を順次統括会社体制へ移行していたとのこと。そして今回、出資特約店を統括地区ごとに統合することについて、2025年4月より順次当該地域における販売会社一社化を行うことを発表したのである。
たとえば、東京・山梨地区では「東京スバル」と「山梨スバル自動車」が東京スバルに統合されるとことになる。ニュースリリースでは、2026年4月時点で現状33社の出資特約店が統合後7社となり、そして北海道スバル、神奈川スバル、千葉スバルを加え10社となる予定とのことである。
筆者の私見を述べれば、日本国内の新車販売体制は基本的な部分では1980年代とあまり変わっていないように見える。事実、筆者はいまの地域に住んで50年以上経つが、新車販売台数が最盛期に比べおおよそ半減しているなか、店舗は目立って減っていない。メーカー直営か、地場資本系かを問わずに、各都道府県に少なくともひとつの販売会社を置いてきたのが日系メーカー系正規ディーラーだ。
トヨタでは、いまだに多くの地域でトヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店といった4チャンネル体制を継続している。日産でも日産店、プリンス店、サティオ店が残っている地域が多い。ホンダでは「ホンダカーズ」という屋号は同じでも、同一地域内にメーカー直販系と地場資本(メーカーと資本関係のない地元の有力企業がオーナーとなる)系ディーラーが混在している。

新車販売ビジネスは、1960年代に各地元の有力企業がサイドビジネス的な感覚で、メーカーの販売代理店として始めていることが多かった。当時は庶民がマイカーをもつことなどは夢のまた夢の話。新車販売ビジネスへ懐疑的な見方をしながら参入した企業も目立っていたようだ。1970年代にはオイルショックが新車販売を直撃した。
昭和の売り方はもう限界
そして1980年代後半、日本がバブル経済を迎えるとまだまだ新車の新規需要(初めて買う)も多く、好景気に沸くなか新車が売れに売れ、新車ディーラーはまさに稼ぎまくることとなった。バブル経済崩壊後、なんとかもちこたえていまに至っているが、ここ最近は新車販売業は「儲からない仕事」ともいわれるようになり、バブル経済期のような華やかさはすっかり失っているように見える。

儲かるのか儲からないのかの話のほかに、最近では慢性的な「働き手不足」もご多聞に漏れず顕在化してきている。地域をまたいで販売会社を一本化する動きはスバルだけではなく、すでにホンダやマツダ、三菱などでも進めている。販売会社の統合は在庫も含む受発注管理の共有による効率化や、間接部門の集約によるコスト低減など、新車ディーラーがスリムな形で経営できる環境作りに効果を発揮するものとされている。

「新車ディーラー個々もさまざまなコスト削減を進めてきましたが、ここへきて収まらないインフレなどもあり、ますます経営環境は悪化してきています。そのなか、労働集約型産業ともいえる新車販売業では、コスト削減のために人件費に手を付けるところも出てきているようです。複雑な基準を設けることで、セールスマージンが一切払われなくなったという話も聞いています。現場のセールスマンは心の病も含め、休職も目立つとも聞いています。ただでさえ働き手不足のなか、多忙を理由に離職の目立つメカニックも多く、マンパワーは圧倒的に不足してきているようです」とは事情通。

ディーラーの経営統合などは、とかくネガティブなことのように見えてしまう。