この記事をまとめると
■「東京オートサロン2025」に「トヨタ東京自動車大学校」が出展■「ボディクラフト科」の学生7人がトヨタの初代コロナをレストア
■ボディの塗装やカスタムなども行いつつ3カ月で仕上げた
親より年上の旧車レストアに学生がチャレンジ
毎年1月の頭に千葉の幕張メッセで開催される「東京オートサロン」には、今年も多くの出展者が集まり、年に一度のカスタムのイベントとあって、昨年を3万人近く上まわる約26万人の来場者がありました。
来場者の注目ポイントはさまざまですが、年々その数を増している自動車大学校の出展にも、メディアを含む熱い自然が注がれていました。
そんな自動車大学校の展示では、強い意気込みを感じるインパクトのあるカスタム内容の車両が多くを占める印象がありますが、そんななかにポツリと、ほぼノーマルの古いコロナが展示されていたのを発見し、思わず足が止められました。
「なぜ旧車のコロナが?」と気になってしまい、話を聞いてきましたので、ここで紹介していきましょう。
■学校では初めての試みとなる旧車のレストア
この「トヨペット・コロナ1500」の展示車両は、「トヨタ東京自動車大学校」の「ボディクラフト科」の3年生の生徒7人によって仕上げられたものです。
当校では初めての試みとなる、レストアへの挑戦をテーマに製作されたとのことで、それを聞いて「ついに学校でレストアを教えるようになったのか……」と驚かされました。

どういった経緯でこのコロナを扱うことになったのでしょうか。
今回の卒業制作を進めるにあたって、このコロナのほかにMR2とクラウン・クロスオーバーの3台が候補として用意されたそうで、そのなかから手掛けてみたい車両を選んで作業にあたるというシステムが採られました。
このコロナを選んだのは7人の学生たちで、約3カ月でここまで仕上げたそうです。

オリジナルとこだわりの見事な調和
■「トヨペット・コロナ」とは?
この展示車両の「トヨペット・コロナ(RT40型)」は、コロナとしては3代目にあたるモデルで、今から60年も前の1964年に発売されたセダンタイプの乗用車です。
「アローライン」と呼ばれた斜めに突き出したノーズの形状などから「オルガン」という愛称で親しまれ、大衆車を代表する「カローラ」の兄貴分として人気を博しました。
エンジンは1.5リッターの「2R型」が搭載されています。

さてこの展示車両のコロナですが、なにせ60年前の車両なので、ボロボロだった状態からここまで仕上げたのを期待してしまいますが、実際はエンジンはちゃんと稼働して走れるというまずまずの状態だったそうです。
さすがに作業期間3カ月の課題にムチャブリはしなかったようですね。とはいえ、フロアにはあちこちにサビによる穴あきが見られ、内装はところどころ破けていたりしたそうです。
実際に作業にあたったメンバーに「いちばん苦労した部分は?」と質問をぶつけてみると、「……全部ですね」との回答が返ってきて、そのひと言から、やはり3カ月という期間では容易ではない作業だったことが窺えました。

レストアの作業を進めるにあたっては古い資料(サービスマニュアル)を参照しながら、それに沿って作業をしていったそうですが、今の資料とは作業内容などいろいろと勝手が違う点があり、それを理解するのに時間を要したそうです。
とはいえ、外装は全体的には大きな損傷はなかったそうで、バンパーやグリル、ミラーやサイドのモールなどのメッキ部分は研磨で輝きを戻し、バッジ、エンブレム類も汚れを落として綺麗に仕上げ直しています。

見えにくい部分ですが、フロアの下まわりもひととおりサビや汚れを落としたうえでアンダーコートを施工してサビの再発を防止しています。
内装では、まずシートの表皮を製作して張り替え、フロアのカーペットも製作しています。
ステアリングやダッシュボードの表面が劣化していたので、純正と似た質感の素材を探してカバーしています。ステアリングホイールの赤いステッチがワンポイントのアクセントで効いています。

■さり気なくカスタムをおこなっている点にも注目
このコロナの作業のメインはレストアですが、展示する車両ということもあり、密かにカスタムをおこなって、「ノーマルよりも少しカッコよくしたい」という想いも加えられています。
まずはカスタム定番である車高のダウン。このコロナは、フロントがダブルウイッシュボーン方式のコイルスプリングで、リヤはリジットアクスル方式の板バネを採用しています。
フロントはコイルスプリングは、関連企業の「富士発条製作所」にローダウン仕様のスプリング製作を依頼したそうです。

リヤは板バネの固定部分にゲタを履かせて下げています。これでほどよく車高が下げられ、腰高感が緩和されました。
ホイールは当初、純正の鉄チンタイプが装着されていましたが、これもちょっとだけカスタムした雰囲気に見えるよう、「ハヤシ」製ストリート15インチをチョイスしています。

そして、一見純正風に見える外装のカラーですが、これは純正を意識した色を自分たちで調色したもので、塗るのが難しいといわれるキャンディ塗装で仕上げられています。
実習でもキャンディ塗装はしたことがなかったようで、テストピースで何度も練習して、なんとかムラなく仕上げられるレベルになったそう。

プロが作業しても3カ月という期間はかなり短いといえますが、それでもこのように見事な仕上がりを見せたのは、生徒たちの情熱と根気のたまものでしょう。