この記事をまとめると
■新車ディーラーでは顧客の多くが残価設定ローンを利用している■「3年」「4年」「5年」と支払い期間が選べるものが多い
■リセールバリューが高いクルマを3年ごとに乗り換えるのがオススメだ
残価設定ローンの仕組みとは
最近は残価設定ローンを利用するユーザーが増えた。各メーカーの新車販売店によると「いまはローンを使うお客さまが4割くらいに達しており、そのローンの大半は残価設定」という。
残価設定ローンとは、契約時に数年後の残価(残存価値)を設定して、残価を除いた金額を分割返済するローンだ。
残価設定ローンの利用者が増えた背景には、月々の返済額が安いことに加えて、低金利の実施などの販売促進も挙げられる。メーカーや販売会社の狙いは、残価設定ローンの返済期間を終えたときにユーザーが車両を返却して、改めて新車を残価設定ローンで契約することだ。そうなれば新車が売れて、素性のわかった上質な下取り車も手に入るから中古車部門も活性化する。

なお、残価設定ローンの低金利は、残価設定の返済期間中だけ適用されることも多い。残価設定ローンの返済を終えたあと、改めてローンを組んで返済を続けようとすると、金利が高まって月々の返済額も増えてしまう。なので、今までと同じクルマに乗り続けて返済額が増えるなら、新たに残価設定ローンを使って新車を手に入れようと考えるから、残価設定ローンの期間だけ低金利を適用するわけだ。
3年と4年と5年のどれがお得?
残価設定ローンの返済期間は、3年/4年/5年の3種類が多い。トヨタ・シエンタ ハイブリッド Z 2WD(303万6600円/7人乗り)を頭金のない均等払いの残価設定ローンで利用すると、3年契約では月々の返済額は5万4800円だ。4年契約なら4万7100円、5年間では4万2400円に下がる。1台のクルマの返済期間が長くなるほど、月々の返済額は安くなる仕組みだ。

このような返済額の違いもあり、販売店では「5年契約のお客様が多い」という。3年後に乗り替えるのでは慌ただしいが、5年を経過すると飽きも生じる。また5年間を経過すると魅力的な新型車も登場して、車検期間の区切りもあるから5年契約が多いというのが背景だ。
ただし損得勘定を重視すると、3年契約と5年契約の返済額の違いにも注目したい。シエンタでは、5年契約の月々の返済額は、3年契約の77%だ。これが60%まで下がれば5年契約が割安になる。逆に85%なら、5年間を使うメリットが薄れるから、3年間で乗り替えることを考えてもいい。
ヤリス ハイブリッド Z 2WD(249万6000円)は、3年契約では月々の返済額が5万2400円、5年契約なら4万600円だ。5年契約は3年契約の77%になる。

ヤリスクロス ハイブリッド Z 2WD(280万9000円)は、3年契約の月々の返済額が5万1000円、5年契約は4万1300円だ。5年契約は3年契約の81%だから、5年契約は割高になる。3年間で乗り替えることも考えたい。

この違いはリセールバリュー(中古車として販売される時の価値)に基づく。ヤリスクロスはリセールバリューが高いから、5年後でも値落ちが少なく、返済期間が5年間に伸びても月々の返済額が下がりにくい。逆にヤリスはリセールバリューが低いから、5年後の値落ちも大きく、返済額も77%に下がった。
そしてヤリスクロスとヤリスでは、価格と返済額の違いにも注目したい。ハイブリッド Z 2WD同士で価格を比べると、ヤリスクロスはヤリスよりも31万3000円高い。それなのに3年契約の返済額は、ヤリスクロスが5万1000円で、ヤリスは5万2400円だ。ヤリスクロスは価格が高いのに、月々の返済額は逆に安い。5年契約はヤリスクロスが4万1300円で、ヤリスの4万600円よりも高いが、その差は700円に留まる。
このように残価設定ローンは、ヤリスクロスのようなSUVなど、リセールバリューの高い車種がオトクになる。いい換えれば残価設定ローンの普及は、リセールバリューの高い人気車の売れ行きをさらに増やし、不人気車は逆に低迷させる。クルマの販売格差をさらに拡大させるのだ。この作用が今のSUV人気にも結び付いている。
