ガソリンやクリーンディーゼルに近い乗り味
世界的にクルマの電動化が押し進められているなか、ついにメルセデス・ベンツの100% EV、EQCが上陸した。これまでメルセデス・ベンツにはスマートEV、初代Bクラスの北米向けEV=電気自動車は存在したものの、メルセデスベンツの大規模生産、日本仕様として初の電気自動車である。
Cクラスのプラットフォームを用い、GLCと同じラインで生産される、SUVのカテゴリーに属するEQCのボディサイズは、全長4761×全幅1884×1623mm(欧州仕様)と、全幅はけっこうワイド。

気になるEV航続距離は、欧州のWLTPモードで400キロ。今回、都市部の一般道&首都高を走った感じからすると、エアコンONで、実質330キロ程度は走れるイメージだ。充電口は急速充電用と200V用のふたつがボディサイドとリヤバンパー右端に用意され、充電時間は急速充電でバッテリー残量10%から100%で約80分(実際には30分しか使えないが)、200Vで約12~13時間となる。
日本の路上では大柄なボディサイズにして、後席は格段に広くない。身長172cmのボクのドライビングポジション背後で頭上に125mm、ひざ回りに160mmだから、例えばマツダCX-5の同155mm、190mmのような空間は望めない。

とはいえ、インパネ回りの2面のディスプレーを用いた、最新のメルセデス・ベンツ同様のデザイン、機能性は先進感たっぷり。もちろんハイ・メルセデスでおなじみのMBUXを標準装備し(じつは、ハイは不要)、EVを安心かつ快適に使うための管理、設定が可能になる。例えば、充電しやすい目的地へのルート設定も積極的に行ってくれるのだから安心である。

高めの運転席に着座すれば、戸惑うことは一切ない。これまでのメルセデス・ベンツ同様の、ステアリングコラム右側のセレクターレバーを操作し、Dレンジに入れて走りだすだけだ。408馬力、765Nmもの出力だから、立ち上がりの大トルクに期待が高まるが、意外にも出足のトルクは通常のペダル操作ならかなりジェントル、かつシームレス。これは、“あえての”設定で、ロケットダッシュの味付けより、メルセデスらしい、ガソリンやクリーンディーゼルに近い乗り味を重視した考え方に基づいているという。
小回り性に優れ都会でも乗りやすい
スルスルと走りだせば、まずは圧倒的な車内の静かさに驚かされる。「EVだから当然だろう」と思うかもしれないが、パワーユニットがほぼ無音なだけに、かえってロードノイズや風きり音が目立ってしまいがちなのが、リーフなどを含む従来のEV。しかしEQCの場合、大径タイヤが発するロードノイズの遮断が見事で、120km/hまでなら風切り音もないに等しく、ほぼ無音の空間がウルトラスムーズに移動している……という感覚に支配される。タイヤは20インチと大径だが、乗り心地もまさに上級メルセデス・ベンツ同様の重厚でマイルドな心地良い快適感がある。

アクセルペダルを深々と踏み込めば、0~100km/h 5.1秒の、ポルシェ・ボクスター/ケイマンといったスポーツカーに匹敵する加速力が、強烈なGとともにほぼ無音で得られるものの、それは電気の無駄遣いにほかならない……!?
つまり、ガソリン、クリーンディーゼルのメルセデスベンツからいきなり乗り換えても、違和感は皆無(ほかのメルセデスベンツも十二分に静かなだけに)。戸惑うことなく発進し、巡航し、4WD&低重心による安定感に満足し、駐車できるというわけだ。

ただし、EQC独自の操作方法がないわけではない。それはステアリングコラム左右にある回生用のパドルシフト。

EQCの100%EVとしての実力に納得した試乗だったのだが、感動ポイントとして発見できたのが、たっぷりとした車幅でも扱いやすさを強く感じさせてくれた最小回転半径の小ささ、小回り性の良さである。Uターンはもちろん、料金所などでの幅寄せも楽々。SUVならではの視界の高さもあって、都会の渋滞路や狭い裏道でも、意外なほど運転しやすかったのである。

最後にとっておきのニュースを。いま、EQCを買うと、残価保証型のリースが用意され、ほかのメルセデス・ベンツが3年間保証のところ、5年、10万キロのメンテナンス保証が付く(バッテリーは8年、16万キロ)だけでなく、家庭での充電用のウォールユニット(ピアノブラックでスリーポインテッドスターマーク入り! のカッコいいやつ)が無償提供されるのだ。

なお、2019年内は発売記念の特別仕様、55台限定のEQC EDITION 1886、1200万円~のみの展開。今回試乗した日本仕様のEQC400 4MATICは2020年からの発売で、10%税込みで1080万円となる。