AセグメントだけでなくBセグメントにも採用が広がっている

ちょっと前までは日本で3気筒といえば軽自動車専用エンジンといったイメージもあった。実際、スバルが4気筒エンジンを積む軽自動車の生産終了を宣言したのは2008年末、三菱の4気筒エンジンを積んでいたパジェロミニの生産も2012年に終わっている。



もっとも軽自動車専用というわけではなく、実際には3気筒エンジンを積んだリッターカーは少なくない。

トヨタ・パッソ/ダイハツ・ブーンの1リッターエンジンは3気筒であるし、三菱ミラージュや日産マーチはいずれも1.2リッター級の3気筒エンジンを積んでいる。いずれにしてもAセグメント級のコンパクトカーに使われるエンジンというイメージだった。



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しかし、いまは違う。Bセグメントでも3気筒エンジン搭載モデルが増えているのだ。



日産ノートe-POWERは1.2リッター 3気筒エンジンと2モーターを組み合わせている。輸入車でもフォルクスワーゲン・ポロが1リッター 3気筒ターボをメインユニットとして使っていることが時代の変わり目を象徴している。プジョーシトロエンも3気筒エンジンが主流だ。



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Cセグメント以上でも3気筒の過給エンジンを使っているケースは珍しくない。BMW(ミニ含む)が搭載している1.5リッターターボ、メルセデスでいえばCクラスにも3気筒エンジンは設定されている。



かつては振動が気になるといわれることもあったが、エンジンマウント設計の進化などにより、実際に乗っているぶんには3気筒エンジンだからといって振動が大きく感じられることはないのは、いまどきの軽自動車に乗ったことがあれば理解できるだろう。さすがに排気音は3気筒のサウンドとわかってしまうが、いまどきの遮音に優れたキャビンであれば気になることもない。



とはいえ、ここまで紹介したモデルはグレードによっては4気筒以上のマルチシリンダーに対応しているが、トヨタの新型ヤリスは完全に3気筒に特化したプラットフォームを採用している。

ガソリンエンジン、ハイブリッド、そしてGRヤリスのターボエンジンまで、1.5~1.6リッターのエンジンはいずれも3気筒になっているのだ。



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今後も3気筒エンジンの採用はますます増えるだろう

なぜ3気筒が増えているのかといえば、大きく2つの理由が考えられる。



ひとつは、モジュール設計によるものだ。いまのエンジンというのは燃焼室の状態をしっかりとシミュレーションして開発している。ガソリンエンジンでいえばヘッド側の形状、ピストントップのデザインは各社がひとつの正解に導き出したもの。同じ形状であれば同様の結果が出るわけではなく、そのボア径によって最適な形状は決まってくる。そのため、排気量が異なるからといってボアを変えるのは筋が悪いやり方だ。



結果的に、同じボアのエンジンで気筒数を変えて排気量の異なるエンジンを作り分けるというのがベストの選択になる。その代表といえるのがBMWやメルセデスのやり方で、同じボア×ストロークのまま1.5リッターは3気筒、2リッターは4気筒、3リッターは6気筒としている。



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もうひとつは、そもそもシリンダー数を減らすことによる効率アップだ。1.2~1.5リッタークラスのエンジンについて、かつては4気筒が主流だったが、気筒数が多いと部品点数が多くなるコストも増えるものの、摩擦する箇所も増える。ピストン、カム、バルブなど動いている部分のほとんどすべてで何らかの摩擦抵抗が発生しているのだから、発生箇所を減らすことは機械効率のアップにつながる。



こうした考え方を「レスシリンダー」と呼んだりする。ヤリスが3気筒エンジン専用モデルとして開発されたのは、まさしく効率的なパワーユニットを搭載することを第一に考えたから、といえる。



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というわけで、3気筒エンジンの採用例はますます拡大していくことだろう。

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