初めて通る道を運転しているような「ぎこちなさ」があることも

一般路線(街なかを走る)バスに乗ることが大好きな筆者は、公私ともに鉄道よりも一般路線バスを移動手段として優先的に利用しているのだが、最近バス運転士の運転が下手というか、雑というか、とにかく「この運転士は大丈夫なの?」と感じることが多い。まるで、独り立ちしたばかりの新人運転士のような運転をする運転士が目立っている(けっして新人ではない様子)。



始発停留所から定時に出発し、しばらくは信号が黄色になっても、加速してそのまま交差点を通過するなど、少々急いでいるような運転をしているかと思えば、しばらく走行したあとに、バス停に早く到着したようで時間調整を行ったりしている。

二種免許を持つ運転士とは思えない、急制動とまではいかないが荒っぽいブレーキングも目立つ。以前から、ていねいな運転を行う運転士もいれば、荒っぽい運転士もいたのだが、最近は以前より気になる運転士が目立っている。その様子は一般ドライバーでいえば、初めて通る道を運転しているように見える。



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以前、ある事業者のバス運転士から聞いたところでは、同じ路線でも平日と土曜や日曜、休日では、バス停とバス停の間の指定移動時間が交通渋滞の有無などで変わっている(土曜や日曜、休日のほうがはやい)というのを聞いたことがある。しかし、とくに土曜などは予測しているより交通量が多く、指定された移動時間をオーバーしがちになるので、速度を上げ気味になるとは聞いたことがあるが、いまの状況は単に“急いでいる”というものではないところで異なる。



コロナがバス業界を襲う! 最近路線バスの走りが「ぎこちなく」なったワケ



コロナウイルス感染拡大によって職場環境が変化している

業界事情通によると、新型コロナウイルス感染拡大以降の走行環境の変化がまず影響しているようだとのこと。「新型コロナウイルスの感染拡大が進むと、外出自粛が要請されるなかでも、それまでは電車などを使い勤務先へ向かっていたひとが、公共交通機関を利用することでの感染リスクを避ける意味から、自家用車や会社のクルマで自発的だけでなく、会社の要請で通勤するひとが増えました。朝夕の交通渋滞はそのままか、かえってひどくなりましたが、逆に日中は平日でも日曜日並みの交通量となるところも出てきました。またフードデリバリーの自転車が急増するなど、いままでとは走行環境が大きく変わりました」と事情通は説明する。



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ほかにも、「バス運転士の仕事環境も変わりました。勤務シフトがかなり変則的となっているようです。さらに、自分の所属営業所とは異なる営業所へ応援で向かい、慣れない地域の路線を運転する機会も増えていると聞きます」とも話してくれた。

つまり、運転技術が下がっているのではなく、運転士を取り巻く環境が大きく変化し、慣れないなかで、バスを運行していることで前述したような“気になる”運転となっているようなのである。さらに、路線バス運転士は、不特定多数の乗客が車内に乗り込んでくるので、感染リスクの高い仕事ともされ、それに対する不安も運転士の間では高まっているようで、少なからずそのような不安な気持ちも影響しているのかもしれない。



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緊急事態宣言が解除され、通勤利用だけでなく、買い物などで出かけるひとも増えてきており、バス車内は“密”な状況になりやすくなっている。しかし、慢性的な運転士不足が続くなかでは、これ以上増便して車内の“密”を防ぐことは不可能に近い。さらに、公共交通機関の利用を避けて通勤するために、自転車で通勤するひとも増えていることから、運転環境もさらに変化していきそうなので、バス運転士の“不安”もさらに増していきそうである。

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