ライバルはヴェゼルとCX-3か
トヨタの新コンパクトカー、ヴィッツの事実上の後継車となるヤリス、そしてそのクロスオーバーモデルとなるヤリスクロスが絶好調だ。
ここでは、ヤリスと基本部分を共用しながら、まったく別物のクルマ、キャラクターに仕立てたヤリスクロスの魅力を紹介したい。
ヤリスクロスは今、世界的にも、日本国内で大いに盛り上がっているコンパクトクロスオーバーの新型車。

最高燃費性能はJC08モードであればHVのFFで31.3km/L!! となる(WLTCモードなら30.8km/L!!)
ここで注目すべきは全長で、ヤリスより240mm伸びている。これは主にリヤオーバーハングにあてられ、自慢の荷室(後述)のゆとりに使われているのだ。クロスオーバーモデルと言えば、アウトドア、キャンプなどに使われる機会も多く、RAV4のコンセプト同様に、荷室の使い勝手の良さは譲れない。

一方、国産ライバルと目されるのが、まずは2019年国産SUV販売台数No.1のホンダ・ヴェゼル。ボディサイズは全長4330×全幅1770×全高1605mm、ホイールベースは2610mmと長い。最低地上高はFFで185mmと余裕あり。ただし、現行モデルはガソリン車のみで、標準の4気筒1.5リッター、およびツーリングの1.5リッターターボ、そして1.5リッターのHVの布陣となる。最高燃費性能はHVのFFでJC08モード27.0km/Lだ。

もう1台、国産車で挙げるとすれば、マツダCX-3だろう。

使い勝手や装備面では抜きんでている印象
そんな3台を比較し、後発のヤリスクロスが優れているのが、まずは価格だ。ガソリン車で179.8万円から、HVでも228.4万円からと、エンジンが3気筒であることを差し引いても、装備などを考慮すれば、安さ爆発だ。そして何といっても燃費性能が際立つ。クロスオーバーモデルとして30km/L越えは、驚くしかない。

また、トヨタ最新のトヨタセーフティセンスをXグレード以上に標準装備するとともに、渋滞追従機能付きACC、オプションとはいえこのクラスでブラインドスポットモニターを用意している点も褒められる。これはヴェゼルに望めない先進運転支援機能となる。

HVモデルはCX-3にないグレードだが、さすがトヨタの2モーターHVで、44000円のオプションながら、AC100V/1500Wコンセントも用意。アウトドアではもちろん、災害時にも役立つ便利で安心な、CX-3はもちろん、HVヴェゼルにもない装備と断言できる。

加えて、荷室の使い勝手もヤリスクロスは文句なしだ。後席がトヨタのコンパクトSUV初の4:2:4分割なのも、後席2名乗車時でも長尺物を積むのに便利だが、荷室そのものも、これまたトヨタコンパクトSUV初の6:4分割アジャスタブルデッキボードを採用。コンパクトなヤリスベースでも、リヤオーバーハングを延長したことで大型スーツケース2個、ゴルフバッグ2個を飲み込むだけでなく、上下、左右を使い分けられる、ライバルにない積載性、便利さを実現しているのだ。

もっとも、パンク修理キットが収まるフロア下端の収納ボックスが白い発泡スチロール製で、ヤリスのホイールベースをそのままに、リヤ部分を延長したことで、そのぶん、白い発泡スチロールの箱の手前に隙間があるなど、荷室フロアの下を覗くと、昔の軽自動車っぽい仕立てに、ちょっとびっくりするかもだ(普段見えない部分のコストダウンは徹底している!!)。

ところで、ヤリスクロスの4WDモデルには、スノーモードのほか、ガソリン車にはトレイルモード、HVにはマッド&サンドとトレイルモードが備わるのも注目点。とくにガソリン車は、HVのE-FOURよりも本格な機械式4WDのため、見た目以上の走破性を備えているのである(RAV4ほどではないにしても)。 ただ、最低地上高が170mmと、ヴェゼルの185mm(FF/4WDは170mm)より抑えた印象もあるが、それはヤリス同様、スポーティーな走りにも対応する、走り優先の低重心化と説明される。実際、SUVらしい高めの着座位置、視界にもかかわらず、ハイレベルな安定感、身軽さある操縦性を実現しているのである。

こうしてさまざまな角度からヤリスクロスを見ていくと、3気筒エンジンはともかく、商品力はクラスベストといえそうな実力だ。特に、これがイチオシと言えるHVのFFは、走りのスムースさ、乗り心地、車内の静かさ、もちろん燃費性能などにおいて、このクラスの超目玉といえるベストグレードだ。