量産ハイブリッドを持たない会社は将来が不安だが……
地球温暖化対策としてのCO2削減という方針を定めたパリ協定。アメリカでバイデン大統領が誕生すると、さっそくパリ協定への復帰を宣言するなど、CO2削減の方向は大いに強化されたという印象だ。
地球温暖化に懐疑的な考えの人もいるだろうし、CO2削減という目標に対してクルマの電動化がけっして効果的とはいえないと主張する人もいるだろうが、もはやそうした意見を世界が受け入れることはないだろう。
当面はエンジン車の環境負荷が低いだとか、ロジカルに考えるとハイブリッドカーが最適解という事実をマインドが上まわり、クルマの電動化はどんどん進んでいくはずだ。
では、そうした時代において国産乗用メーカー8社の未来は明るいのか。現在のラインアップ、公表されている将来技術などをもとに考察してみよう。
まず、心配されるのは現在のラインアップにおいてハイブリッドカー(OEMを除く)をもたないダイハツだ。軽自動車においても電動化は待ったなしの状況だけに、ローコストなエンジン車に注力するダイハツのスタンスは、いま時点ではベストソリューションといえるかもしれないが、数年後が心配される。とはいえ、すでにダイハツについてはトヨタの完全子会社であり、電動化においてトヨタグループのノウハウが投入されることは容易に想像できるところであり、さほど心配することはないのかもしれない。

その意味では、すでにトヨタとの資本提携を進めているマツダとSUBARUの両社においても、けっして未来が暗いわけではない。たしかに現行ラインアップでいえばマツダの電動化というのはISGを使ったマイクロハイブリッド程度であり(かつてはトヨタハイブリッドシステムを採用したこともあった)、またSUBARUにしても薄型モーターをCVTケースに収めたマイルドハイブリッドを用意するのみで、市販車においては電動化に積極的という印象は薄いかもしれない。

しかし、マツダはトヨタやデンソーと共同出資した電気自動車の開発会社を立ち上げ、すでに2020年6月に目的を達成したとして解散しているし、SUBARUはトヨタと共同開発しているミドル級SUVの電気自動車のプロトタイプを発表している。ユーザーイメージより両社の電動化への取り組みは進んでいる。

国産メーカー各社の電動化対応の手法は千差万別だ
さて、国産メーカーで電動化に対する心配無用といえるのが、そのトヨタだろう。

同様に、ホンダもハイブリッドカーから燃料電池車までクルマの電動化においては全方位的に対応する方針をとっている。ホンダは基本的に独立系だけに手広く対応することでリソースの分散が心配されるが、電動化についてはアメリカのGM(ゼネラルモーターズ)と深く連携しており、電動化のトップランナーになると予想される状況にあったりもする。

とくにGMが中心になって開発した次世代バッテリーは、従来のリチウムイオン電池に対して大幅なコストダウンが可能になるといい、世界的にみても価格競争力の高い電動車を生み出す期待が高まっている。
さて、2020年の国内新車販売(登録車・軽自動車の合計)では、ついにシェア2位にまで登り詰めたスズキは、軽自動車、コンパクトカーともに12VのISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)とリチウムイオン電池を使ったマイルドハイブリッドを幅広くラインアップすることで、ローコストな電動化を推し進めている。あまり電動化のイメージはないかもしれないが、スズキの電動化というのは新興国市場にもマッチしたベストソリューションといえる存在だ。

ただし、先進国で求められる電動化基準を満たすには、せめてプラグインハイブリッドに展開できるシステムを持っておく必要があるといえる。とはいえ、スズキもトヨタと提携を深めているのでOEMによるハイブリッドカーの充実は、徐々に進めている。また提携を利用した電気自動車の誕生にも期待したい。
最後に紹介するのはルノーとアライアンスを組んでいる日産と三菱自動車の2社。両社とも電気自動車の市販は早く、電動化に関するノウハウはもっとも豊富といえる。

日産は電気自動車「リーフ」とは異なるシステムを採用する第二世代のBEVといえる「アリア」を間もなく発表する予定となっているし、三菱は世界一の販売実績があるプラグインハイブリッドカーである「アウトランダーPHEV」の経験を活かして、アライアンス内において次世代プラグインハイブリッドカーの開発を担当することが発表されている。

言わずもがなだろうが、この2社についてはプラグインハイブリッド、100%電気自動車と2タイプの外部充電を利用する電動車において多くの知見があることがアドバンテージだ。
というわけで、国産乗用車メーカー8社の電動化への取り組みや近い将来の期待について簡単にまとめてみた。現時点では、どこも電動化時代に向けてしっかりとプロジェクトを進めているといえるが、なにしろ日進月歩の世界であり、仮にいま先行しているからといって気を抜けば世界から置いていかれてしまうのもまた事実。さらに自動運転テクノロジーについても同時並行で進めていかなければならない。100年に一度といわれる変革期の自動車業界において一息つける時代になるのは、まだまだ先のことだ。