トヨタは原則ディーラーが在庫車を持たずに販売している
国内販売では、圧倒的なシェアでトップを維持し、最近では“トヨタ一強”などとも呼ばれているトヨタ。ただ、そんなトヨタのアキレス腱とでもいうべきものが、“納期遅延”となるモデルが多いこと。ここ最近は半導体の供給不足問題もあるので、その影響で生産が滞り、新車全体において納期遅延が目立ってきており、状況は刻一刻と変化している。
平常時ならば、日産やホンダは、売れ筋人気車ほどディーラーがストックしている在庫車販売がメインとなっており、在庫車に希望車種があれば、最短で1カ月以内には納車となるケースもあると聞く。ただ、“ジャストインタイム”を標ぼうするトヨタでは、原則ディーラーは在庫車を持たずに販売活動を行っている。ディーラーのストックヤードには、納車予定車以外は置いていないのが大原則なのだが、最近ではそれでも車種は限られるが、在庫車が置かれることもあるようだ。
トヨタ車でいまのところ深刻な納期遅延となっているモデルとしては、ヤリスクロス(ウエブサイトにおける出荷目処ベースで5~6カ月)やハリアー(グレードや仕様によって最長半年?)が有名だが、そのほかの車種でもおおむね納車までに2カ月は見ておくのが一般的ともされている。
トヨタでは、7月末に次期型アクア、8月末に次期型ランドクルーザー、そしてこの2台に近いタイミングでカローラ クロスの国内デビューが予定されている。前述したように、半導体の問題もあるので、スケジュール通りになるかは微妙なのだが、このデビュー予定の3車は、発売になれば間違いなく深刻な納期遅延になるともいわれている。
事実次期型ランドクルーザーについては、予約発注するための“予備予約”、つまりメーカーに発注する優先順位を決めるための受付を始めているディーラーも出てきているようだ。このようなケースでは、すでに販売サイドは深刻な納期遅延となることを想定しているといっていいだろう。

※写真は現行ランドクルーザー
前出のヤリス クロスはグレードやオプションによらず、納期は半年待ちとされているが、販売現場において不満が爆発しているという話は聞かない。ただ、トヨタは6月に2工場3ラインにおいて、生産調整が行われることを発表しており、ヤリスクロスの生産も影響を受けるのは必至とも言われており、今後販売現場はすでに注文を入れているお客などへの説明に追われることになるだろう。

乗り換え前の車検切れや残価設定ローン車への工夫もされている
あるトヨタ系ディーラーセールスマンに話を聞くと、「トヨタ車に長く乗られているお客様のなかには、納期遅延ありきで新車購入を進められる人も多いです。たとえば、いまは納期遅延が解消されているアルファードですが、ヴェルファイアとともに納期半年というのが恒常的だった時期があります。

そこで、あらかじめ新車に乗り始めたい時期から、半年を逆算して、余裕を持って新車をご注文されるお客様も結構おられました」とのこと。また、売る側も納期トラブルを避けるために“売り込むタイミング”を見計らっているとのこと。「大昔には、車検有効期限まで1カ月といった下取り車でディーラーに乗り付けると、“ホット客”となり大幅値引きも出やすいとされていましたが、いまは最低でも車検有効期限切れまで半年を切らない状態が“ホット客”となります。われわれも次回車検まで半年後ほどのお客様をターゲットカスタマーとして販売促進活動を行います」(前出セールスマン)。

前出の話は、既納客(自分で販売して乗ってもらっているお客)のケースであるが、一見、つまりフリー来店客の場合はどうするのだろうか?
「たとえば、購入希望車種の納期が遅延気味となり、その間に下取り車の車検有効期限切れがきてしまうとします。こうなると『車検がきちゃうならなあ』と、購入を諦められるお客様も出てきます。そこで弊社では、とりあえず10万円にて弊社で車検を通してもらいます。ただし、1年以内に弊社で新車をご購入していただければ、その10万円はお返しすることとなっております」と話してくれた。
納期については、当初の説明より遅れればトラブルとなるが、当初納期より早まればトラブルにならないといわれている。トヨタ以外でも、当初「納車は半年先」としても、たいていは早まるのが一般的。ただ、半導体問題が納期に絡む現状では、残念ながら納期は延びる傾向にあるが、契約時にその旨を説明し、契約後も売りっぱなしではなく、細かくコミュニケーションをお客ととって情報提供していれば、トラブルになることはまずない。
30年ほど前、初代セルシオがデビューすると、たちまち膨大なバックオーダーを抱え、長期の納期遅延となった。

トヨタに限らず、契約後に納車待ちをしているお客へのホスピタリティさえしっかりしていれば、お客も納得して契約しているのだからトラブルになることはほとんどないものと考えている。
ちなみに、納期遅延が深刻なモデルについて残価設定ローンを利用して購入した場合は、ローンの支払いが先行してしまうのかという不安を持つひともいるかもしれないが、ディーラーローンは、新規登録手続き(ナンバープレートがつく)完了翌月から支払いが発生することになるし、下取り査定については、納期遅延車が購入対象の場合は、その旨を査定のチェックシートに記して、ディーラーの査定部門に送ることで、納車予定時期の相場を想定した査定額を算出したり(だいたい甘い値付けになる)、ディーラー個々で工夫が凝らされている。
