この記事をまとめると
■独創的なモデルで人気が出ても、長期的に見ると無難なモデルの方が堅実に売れる



■価格に見合った内装に仕立てないとユーザーは離れてしまう



■コンセプトが面白くても市場の意見と真摯に向き合うことが重要だ



いくらブームでも波に乗れない残念モデルたち

1)トヨタC-HR

C-HRは2016年12月に発売され、2017年1~6月には1カ月平均で1万3200台を登録した。小型/普通車の販売ランキング順位も、プリウスとノートに次ぐ3位で、SUVでは突出した人気車になった。



空前のSUVブームにドンピシャ……のハズがなぜか売れない残念...の画像はこちら >>



ところが、その後の売れ行きは急速に下がり、2021年1~7月の1カ月平均は1750台だ。

4年前の13%しか売れていない。



C-HRはSUVのカテゴリーに含まれるが、外観は5ドアクーペ風でデザインに特徴を持たせた。このようなクルマではユーザーが購買意欲を一気に高め、「スグに欲しい」と考える。そのために発売直後には大量に販売されるが、行き渡ると急速に下がってしまう。



空前のSUVブームにドンピシャ……のハズがなぜか売れない残念なSUV3選



その点でヴェゼルのような居住空間や荷室の広いSUVは実用性で選ばれるから、売れ行きが急増しない代わりに長期間にわたって根強い人気を保つ。2017年と2018年には、C-HRがSUVの販売1位になったが、2019年になると、2013年に発売された基本設計の古い先代ヴェゼルが再び1位に返り咲いた。



空前のSUVブームにドンピシャ……のハズがなぜか売れない残念なSUV3選



ちなみにトヨタの販売店ではカローラクロスの受注が始まったが、この背景にもC-HRの販売低迷がある。カローラクロスはホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値まで含めてプラットフォームはC-HRと共通で、ハイブリッドシステムも同じタイプを使う。



空前のSUVブームにドンピシャ……のハズがなぜか売れない残念なSUV3選



価格はC-HRハイブリッド2WDは274万5000円から314万5000円だが、カローラクロスハイブリッド2WDは259~299万円と少し安い。つまりカローラクロスハイブリッドは、C-HRの販売不振を挽回する商品に位置付けられる。



以前は結構売れたはずだったのだが、ライバルの多い市場では目立てず

2)ホンダCR-V

CR-Vは一度国内販売を終了したが、2018年に復活した。開発者は「ヴェゼルの人気が高く、CR-Vは廃止したが、その後にSUVの人気が予想以上に盛り上がった。オデッセイのお客様がSUVに乗り替える時など、コンパクトなヴェゼルでは物足りないのでCR-Vの国内販売を再開した」と語った。



空前のSUVブームにドンピシャ……のハズがなぜか売れない残念なSUV3選



しかし売れ行きは伸び悩む。販売を再開した時の販売計画は1カ月当たり1200台とされたが、今の1カ月平均は400台以下だ。



販売不振の理由は、まず価格が高いこと。カーナビなどを標準装着して装備を充実させたが、それでも1.5リッターターボを搭載するもっとも安価なEX・2WDが336万1600円だ。最上級のe:HEV(ハイブリッド)EXマスターピース4WDは447万400円に達する。



空前のSUVブームにドンピシャ……のハズがなぜか売れない残念なSUV3選



CR-Vはこのように価格が高いのに内装の質は低い。インパネなどのステッチ(縫い目)は、先代ヴェゼルでも本物の糸を使っていたが、CR-Vは樹脂で成形された模造品だ。これでは割高な印象が一層強まってしまい売れ行きを下げた。



3)マツダMX-30

MX-30はCX-30とプラットフォームを共通化したSUVだが、観音開きのドアを採用する。外観は水平基調で視界が優れ、内装にはコルクを使うなど、リラックスできる雰囲気だ。そこにマイルドハイブリッドと、電気自動車のユニットを組み合わせる。



空前のSUVブームにドンピシャ……のハズがなぜか売れない残念なSUV3選



MX-30を開発した本当のねらいは「魂動デザイン」による躍動的な外観、スポーティな運転感覚に興味を示さないユーザーを取り込むことだ。

先代CX-5以降のマツダ車は、クルマ作りが硬直化して「どれも同じに見える」という指摘も多い。マツダが女性を対象に調査したところ、コンパクトカーのマツダ2(旧デミオ)についても「スポーツカーみたいで私には運転できない」という意見が聞かれた。



これではユーザー層が広がらないので、対称的な価値観を備えるMX-30を開発したわけだ。



空前のSUVブームにドンピシャ……のハズがなぜか売れない残念なSUV3選



このMX-30のコンセプトは、今のマツダの現状を反映したもので理解できるが、肝心のクルマ作りで失敗した。CX-30とほぼ同じサイズで、観音開きのドアなどを採用するから魅力がわかりにくい。



空前のSUVブームにドンピシャ……のハズがなぜか売れない残念なSUV3選



マツダのホームページにおける訴求も、掲載色をホワイトのセラミックメタリックにすれば良いのに、相変わらずのソウルレッドだから、CX-30やほかのマツダ車との違いが一層わかりにくくなっている。「CX-30に似たワケのわからないクルマ」と受け取られ、発売時の販売計画は1カ月当たり1000台だったのに、実際の売れ行きは550台程度だ。ロードスターと同程度になる。



従来のマツダ車とは違う新しいシリーズであることを表現するなら、マツダ2のプラットフォームを使い、2代目デミオコージー、あるいはキューブのような馴染みやすく空間効率の優れたクルマを作るべきだった。そこまでやらないと、今のマツダの硬直化したブランドイメージを突き崩すのは難しい。

編集部おすすめ