この記事をまとめると
■CO2排出の削減は世界的なトレンドになっており、自動車の電動化はもはや避けられない



■そんな時代でもエンジン車に価値を見出してあえて電動化するのを避けたモデルも存在する



■エンジン車の価値は化石燃料の安定供給が前提であり、今後もエンジン車が残るかは疑問だ



世界的なトレンドに逆行するエンジン車が生き残る意義

人為的なCO2排出を削減することは、もはや世界のコンセンサスとなっている。発電についても可能な限り、再生可能エネルギーを利用するというのは常識となっているし、自動車においても電動化は避けられないトレンドだ。



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大衆ブランドの多くが2030年~2050年でのゼロエミッション(排出ガスをなくすこと)を宣言しているのは、ご存じのとおり。

2021年にイギリスで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、メルセデス、ゼネラルモーターズ、フォード、ジャガーランドローバーなどの自動車メーカーが、2040年までに世界的にゼロエミッション車だけの販売とするという共同声明に署名をしている。



そうしたなかでエンジン車が生き残る余地はあるのだろうか。



上記のCOP26では、日本の自動車メーカーほかフォルクスワーゲンBMWといったドイツ系メーカーも署名しなかったが、その中でもエンジン車の価値をもっとも重視しているブランドといえば、日本のトヨタを置いてほかにない。



たとえば、トヨタが2021年にフルモデルチェンジしたランドクルーザー(300系)のパワートレインは純粋なエンジンにより構成されている。ハイブリッド技術ではもっとも経験豊富といえるトヨタが、ランドクルーザーには簡易的なハイブリッド機構さえ与えていないのだ。



いくら電動化って叫ばれたってダメなものはダメ! 安心・安全のために「純エンジン車」であることが必須なモデルとは



CO2削減の観点からいえば、ランドクルーザーのようなオフローダーであってもハイブリッドを採用することは世界的にも求められている。

しかし、あえてトヨタは純粋なエンジン車としてランドクルーザーをフルモデルチェンジした。



「どこからでも帰ってこられる」というランドクルーザーが持つ信頼性やタフネスを実現するために電動パワートレインは不要というのが、トヨタの結論だったといえる。



エンジン車が生き残るかどうかは化石燃料次第

100%電動の電気自動車では、航続距離を確保するためには多量のバッテリーが必要となる上に、充電に要する時間が長くなってしまうというウィークポイントがある。給油することで短時間の停車で走り続けることのできるエンジン車は、極限状態で信頼できるのは間違いない。



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エンジンだけのパワートレインを選んだ理由は、単純に航続距離の問題とはいえない。航続距離を伸ばすということだけでいえば、ハイブリッドシステムを採用したほうが有利なのも事実だからだ。

トヨタの横置きハイブリッドシステムでいえば、商用車のプロボックスにも使われているほど耐久性には定評あるところで、そうした技術を応用すれば、よりロングレンジを実現できるようにも思えるが、そうはしなかった。



つまり、現時点では、トヨタさえも電動パワートレインの信頼性はエンジンのそれには敵わないと考えているといっていい。



砂漠のような環境における微小な砂ぼこりに対する電動系のリスク、車両の半分程度までが水に浸かるような渡河でのバッテリー保護といった極限での信頼性を考えると、ランドクルーザーの基準においてハイブリッドの採用さえも難しいという面があったのだろう。



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ランドクルーザーに求められる性能を実現するには、電動化は1ミリたりとも考えられないというのが、トヨタの判断であり、2020年代におけるエンジン車のアドバンテージといえる。



ただし、エンジン車の価値が維持されるためにはガソリンや軽油といった化石燃料が安定供給されることが大前提となる。世界的にCO2排気量を減らすという目標に向かっている中で、化石燃料の供給量が減っていくことは容易に想像できる。

燃料がなければエンジンというのは、ただの金属ゴミとなってしまう。エンジン車が求められる状況が永遠に続くのかといえば、大いに疑問なのもまた事実だ。