この記事をまとめると
■「テスラ」がどんな企業であるのかをおさらい



■CEOのイーロン・マスク氏の経営手腕は各業界からも高い評価を得ている



■1つの自動車メーカーとして見るべきではないほど大きな可能性を秘めていると言えよう



トヨタも凌駕するBEV界の巨塔「テスラ」はどんな会社なのか

電気自動車(EV)専業のスタートアップがいくつも起業するなかで、その目標となっているのがテスラであることに疑いはない。



19世紀の発明家二コラ・テスラにちなんだEVスタートアップ「テスラモーターズ」が誕生したのは2003年7月のこと。当初の創設者としてはマーティン・エバーハード氏とマーク・ターペニング氏とされている。

ただし、のちに出資したイーロン・マスク氏は裁判の結果、共同創設者として認められているという。なお、現在の社名はモーターズを取ってテスラとなっている。



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ご存じのように、イーロン・マスク氏は世界一の大金持ちとしてメディアで扱われることも多い。ただ、彼はもともとはオンライン決済システムで財をなした人物。現在の資産評価は、所有するテスラの株によるところが大きい。



実際、テスラの時価総額(発行株式×株価)は自動車メーカーとしては圧倒的な金額となっている。

2022年9月2日時点での時価総額は、およそ8467億ドルで、日本円に換算すると約120兆円となっている。日本を代表する自動車メーカー、トヨタの時価総額が同タイミングで約28兆円なので、まさに桁違いの企業価値を持っているといえる。



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ちなみに、現在のテスラの株価はひと株270ドルとなっているが、これは2022年8月25日に、1株→3株となる株式分割をしているため。株式分割前にはひと株1000ドルを超えていることもあった。



一般には、株式分割をすると小口投資家が買いやすくなるなど流動性が上がることがメリットとされている。そのため株価も上がることが多いのだが、テスラについては分割した際の株価が300ドルだったことを思うと、意外に下がっているという印象もある。

もちろん、短期間で株式分割の是非を判断することはできないので、今後の動きに注目だ。



自動車メーカーとして見る企業ではない

それにしても、世界の自動車メーカーのなかでみてもテスラの時価総額は群を抜いている。2021年の生産台数は100万台足らず(日本のメーカーでいうとスバルと同じくらいのイメージ)で、工場を増設した現在でも年間の生産規模は200万台ほどのメーカーが、これだけの評価を受けているのはなぜだろうか。生産能力でいえば、トヨタやフォルクスワーゲン・グループの1000万台規模には遠く及ばないにもかかわらず、だ。



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株式市場における高評価についてテスラ独自のEVテクノロジーや生産技術という見方もあるが、公開されている工場の映像などを見る限り、見たことがないレベルという印象もない。最後の組み立てラインでは、工員がパーツを取り付けいる様子が確認できるほどで、拍子抜けするほど普通の工場という印象も受ける。



テスラに限らず、自動車メーカーは労災を減らし、人件費削減することに励んでおり、工場のオートメーション化というのは世界的なトレンドであって、ギガファクトリーとネーミングされたテスラの生産工場に用いられる技術が、株価をここまで引き上げるほどのアドバンテージがあるとは思えない。



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むしろ、株式市場において評価されているのはイーロン・マスク氏のカリスマ性といえるだろう。エキセントリックな発言も目立つ同氏についての評価はわかれるところだろうが未来へのビジョンを提示する発信力は、自動車というカテゴリーに限らず、世界中のあらゆるす経営者の中で見てもダントツといえる。



その意味では、テスラは単にEV専業の自動車メーカーではなく、新しい“何か”を生み出すという期待を抱かせる企業といえる。自動車業界だけの比較で、生産規模と時価総額の乖離からバブル的に株価が上がっていると捉えるのは間違いである。



結論として、テスラについては、自動車メーカーと捉えるべきではない。



かつてパソコンを主力商品としていたアップルが、いまやスマートフォンのブランドになったように、EVにとどまらないと期待されていることが、テスラの株価を高めているといえるし、ビジョンの提示が企業価値の源泉となっていると考えるべきだ。