この記事をまとめると
■イギリスのBAC社のMONOは行動を走れるフォーミュラカーのようなクルマ■540kgという車重に対して332馬力の直4を搭載しウエイトパワーレシオは1.62kg/ps
■並み居るスーパースポーツカーに勝るとも劣らないパフォーマンスを有している
コスワース製直4を搭載する車両重量540kgの超軽量マシン
フォーミュラカーで公道を走りたい欲求、誰しもあるかと思います。なにしろF3000に無理やりナンバー付けちゃった人もいるくらいですけど、そこまで苦労や無茶をせずとも、今ならいいマシンがあります。
イギリス、リバプールのBAC社(Briggs Automotive Company)がリリースしている、こちらのMONOは、ご覧のとおりひとり乗り(モノシート)で、フォーミュラカーにアウタースキンをかぶせたようなスタイリングに、名チューナー「コスワース」がチューンナップしたフォード製4気筒ターボエンジンを搭載。
ちなみに、似たようなコンセプトでKTMからはクロスボウというふたり乗り公道フォーミュラみたいなマシンもありますが、こちらは790kgで240馬力ですから3.29kg/psといささかパンチに欠けているようです(そうはいっても、走ったらめっさ速いことは確実です)。
それにしても、気合が入ったマシンだといろいろ調べてみると、なるほどハンパないマシンになるわけだと納得。つまりは、「フォーミュラカーを公道で乗りたい欲求」の塊みたいな兄弟によって作られたマシンということが判明した次第。

ニールとイアンのブリッグス兄弟は、幼いころから父親の影響でレース間近で育ってきたようです。長じて、イアンはメルセデス・ベンツやポルシェのデザイン部門、ニールはフォードのエンジニアとしてフォーカスRSなどホットなマシンの開発者に。また、兄弟はドイツの名レーサー、フランク・イェリンスキーとの出会いがMONO開発の原動力になったとも述べています。イェリンスキーは、若いふたりにF2やF3といったシングルシーターのレース、経験について教えてくれたそうですから、さぞかしワクワク&ゾクゾクしたに違いありません。
その後、BACを興した兄弟は2011年にドイツで開催されたRetro Classic ShowにMONOのコンセプトモデルを出品。ジュネーブのモーターショーとかぶっていただけに「数少ない友人と家族だけ」しか来ないと思っていた兄弟は、1500人ものマスコミ、観客に囲まれ「最初の1台」を売ることに成功。

水面下、というかバックヤードビルダー的に開発を進めていたふたりにとって、これは感動的なスタートだったようです。
まるでフォーミュラーカーのような成り立ちと出立ち
MONOの構造は端的に言ってしまえば鋼管チューブラフレームに、カーボンパネルのボディをかぶせたもの。

ちょっと探ってみると、BACの軽量コンストラクションの秘密は、どうやら設計ツール(ソフトウェア)の効果的な使い方にあるようです。AUTODESK社の設計支援ソフト「ジェネレーティブデザイン」を使うと、重量や機能といった設計目標をもとに製造方法やコストといった制限を打ち込むことで最適な設計解を導き出してくれるのだそうです。
たとえば、1本あたり2.2kgという極めて軽いアルミホイールは、それまで3軸CNCマシンでの製造を前提としていたものを5軸マシンに変更したことで得られた結果。一般的な軽量ホイールに比べ35%も軽いというのは大きなメリットにほかなりません。

また、シャークノーズに近いフロントマスクや、ディフューザーを大型化したかのようなリヤセクションもMONOのキャラを際立たせているかと。当然、エアトンネルでの緻密な解析がなされているものと思われますが、このあたりは非公開。

ブリッグス兄弟なら、クルマ関連のコネがいっぱいありそうですから、もしかしたら「お友達料金」が適用されて新興F1コンストラクターよりも空洞実験の回数が多いかもしれませんね。
で、肝心のパフォーマンスですが、ここはクルマ番組のトップギアから「パワーラップ」のランキングでご紹介しましょう。ちなみに、これはロータスのテストコースだったサーキットをスティグという覆面ドライバーがアタックするというもので、現在のトップタイムは1分11秒3でフェラーリSF90ストラダーレ、次いで同488ピスタが1分12秒7、でダラーラ、パガーニ、マクラーレンなどが名を連ね、MONOは7番手に位置する1分14秒3というリザルト。

パワーウエイトレシオやパッケージを鑑みれば、もう少し上位でもおかしくない気がするものの、お値段2450万円となるとこのあたりが適正かと。
最後に、イアン・ブリッグスが世界的なEV化や自動運転の普及についてインタビューを受けた際のコメントをご紹介しておきましょう。
「馬がクルマに変わっても、馬の存在は消えることなく乗馬というぜいたくなものに変わりました。ほとんどの人が自動運転のクルマに乗っているときでも、ドライビングを楽しむ人がいるはずで、ドライビングはカヌーやパラシュート、マウンテンバイクのようになり、とりわけMONOはより輝く存在となり得るのです」

三つ子の魂百までとは言いますが、この兄弟やっぱりハンパないですね!