いまもなお、重要な犯人特定の要素である指紋の歴史と、DNAの進化について、ベルギーの法医学医、フィリップ・ボクソ氏が解説する。
※この記事はフィリップ・ボクソ氏の書籍『死体は語りだす:法医学医が読み解く「死者からのメッセージ」』(三笠書房)より一部抜粋・構成しています。本文中に登場する鑑識実務のあり方の記述には、日本とは異なる事項も含まれています。
はじめて指紋が犯人特定に役立ったのは120年以上前
フランスにおいて初めて指紋が犯人特定に役立ったのは、1902年のことである。シェフェールという名の男が、パリのサン=トレノの歯科医院に強盗に入った。犯行の最中に歯科医の使用人に見つかってしまい、この使用人を殺して逃走した。
だが、司法警察は、診察室の家具のガラスに犯人が残した指紋を発見して、これを採取した。警察に犯行を疑われたシェフェールは否認していたが、彼の指紋は犯行現場に残された指紋と合致し、シェフェールも観念して犯行を認めた。
こうしてシェフェールは、フランスにおいて指紋鑑定で特定された犯人の第一号となったのだ。
モナ・リザ盗難ではピカソも疑われ、最後は指紋鑑定で決着
次に指紋が新聞雑誌で大いに取り上げられたのは、1911年のことだった。この年の8月21日、ルーヴル美術館から『モナ・リザ』が盗まれた。これは、ルーヴルの改修工事に従事していた石工の1人、ヴィンチェンツォ・ペルージャが朝っぱらに実行に及んだ大胆な犯行であった。このイタリア人労働者は展示室に誰もいない隙を狙い、絵を額縁ごと壁から外し、額縁から絵(板絵)を取り出して、その足で館外に持ち出した。
身体測定データによる個人識別法を考案したことで有名となったアルフォンス・ベルティヨンは、『モナ・リザ』を保護していた額縁のガラスから指紋を検出した。
国宝級の絵が盗まれた、ということでフランス中が大騒ぎとなった。単純窃盗にしては破格の扱いだが、予審判事が任命されて捜査の指揮に当たった。
パブロ・ピカソといった有名人にも疑いがかけられ、詩人のギヨーム・アポリネールは7日間も拘留された。逮捕につながる情報には報奨金が約束されたが、犯人は突き止められず絵は発見されなかった。捜査は行き詰まり、膠着状態は2年間も続いた。
偏見が妨げた犯人逮捕
この間、『モナ・リザ』はロピタル=サン=ルイ通り(パリ10区)の犯人のアパートに隠されていた。捜査官の1人がアパートまでやって来てペルージャを尋問したが、一間だけの惨めな住まいを目にして、「こんなところに住むような貧しい労働者が犯人であるわけがない」と思い込んで家宅捜索はしなかった。1913年、犯人のペルージャは『モナ・リザ』を携えてフィレンツェにおもむき、これを骨董商に売ろうとして警察に通報され、逮捕された。むろんのこと、空となった額縁のガラスに残されていた指紋は一致した。
ペルージャは、自分は愛国心に駆られて『モナ・リザ』を盗んだ、フランスに略奪されたこの絵を母国イタリアに連れ戻したかったのだ、と弁明した。
レオナルド・ダ・ヴィンチの死の1年前に当たる1518年に、フランス国王のフランソワ1世が、この絵を買い上げたことを知らなかったのだろう。歴史研究者の推定によると、フランソワ1世は代金として4000エキュ(現在の貨幣価値に換算すると160万ユーロ超)を支払ったようだ。
母国イタリアで裁かれたペルージャは、1年と15日の実刑判決を受けた。比較的軽い刑となったのは、彼の愛国心が考慮されたからだろう。そして刑期をまっとうすることなく、早めに釈放された。
『モナ・リザ』はイタリア各地で特別展示されて大人気を博したのち、1914年1月4日にルーヴルに帰還した。
世界的知名度を獲得したDNA型鑑定技術開発者
近代の犯罪科学の発展に貢献した第三の重要要素であるDNAは、今や、犯罪捜査における「証拠の女王」となった。そしてDNA型鑑定技術を開発したアレックス・ジェフリーズは世界的な知名度を獲得した。全てはイギリスのレスターシャー州で1983年、1986年に起きた2人の少女――リンダ・マンとドーン・アッシュワース、2人とも15歳であった――から始まった。
捜査は難航し、1987年に警察はアレック・ジェフリーズに協力を求めた。レスター大学の遺伝子学者であったジェフリーズはその数年前に、酵素を使ってDNAを分解すると一人ひとりに違いが出ることを突き止め、これは指紋と同じく個人特定に使うことができる、と論文で発表していた。
実は、軽度の知的障害がある青年が少女2人の殺害の容疑者と見なされて拘束されたのだが、1人の殺害しか認めなかった。ジェフリーズは自らが開発したテクニックを用い、この青年の血液のDNAと被害者から採取された体液のDNAを比較した。
DNAはマッチせず、青年がまったくの無実であることが分かった。その後、近隣の男性全員に協力を求めて「協力しないとやましいことがあると見なされたので、5000人近くが協力した」血液を採取し、DNAを鑑定したが、犯人のDNAと一致するDNAは見つからなかった。
犯罪者がはじめてDNA鑑定で断罪された1987年8月
捜査はまたもや行き詰まって振出しに戻ったかと思われたが、1987年8月1日に一人の女性が警察署を訪れ、さきほどパブで気になる話を耳にした、と通報した。ある男性客が「友人のコリン・ピッチフォークに頼まれて身代わりになり、DNA検査を受けて200ポンドの報酬を得た」と得意げに語っていたのだ。すぐにピッチフォークは逮捕され、DNA型鑑定で犯人だと断定された。彼は、DNAを決定的な証拠として断罪された、初めての犯罪者である。
それ以降、DNA型鑑定技術は驚くほど進化し、精度と感受性を大幅に高めた。当初DNA解析にはそれなりの量の血液が必要であったが、現在では数個の細胞で事足りる。
個人を特定するのに役立つテクニックはほかにも存在しており、私がここに紹介したのは最も代表的なものにすぎない。
犯罪科学の進化は続いており、これからも私たちを驚かす新しいテクニックが登場するに違いない。

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