大家が知っておくべき施設賠償責任保険|補償内容・事例・保険料相場を解説
大家が知っておくべき施設賠償責任保険|補償内容・事例・保険料相場を解説

賃貸経営をする大家にとって、所有している建物や設備の管理は重要な責務です。しかし、建物の欠陥や不測の事態により、入居者や第三者に損害を与えてしまうリスクは常に存在します。

このように万が一、他人に損害を与えた際に備えて賠償責任を補償する保険が「施設賠償責任保険」です。

本コラムでは、施設賠償責任保険の基本的な内容から具体的な適用事例、保険料の相場、加入時に知っておくべきポイントまで、賃貸経営を行う大家が押さえておくべき情報を詳しく解説します。

■施設賠償責任保険とは?

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(画像:PIXTA)

「施設賠償責任保険」とは、所有している建物や設備の欠陥・管理不備が原因で第三者に損害を与え、所有者や管理組合に法律上の賠償責任が生じた場合に適用される保険です。店舗や事務所、工場や倉庫など事業用施設で利用されることが多いですが、マンションやアパートなどの賃貸経営においても利用されています。

一棟アパートや一棟マンションなどを経営する大家は、共用部分の管理や建物の維持に関して責任を負うケースが多く、予期せぬ事故が高額な賠償請求につながる可能性もあります。施設賠償責任保険に加入しておくことで、こうしたリスクに備えることができ、安心して賃貸経営を続けることができます。

■施設賠償責任保険が適用される例

施設賠償責任保険がどのような場合に適用されるのか、具体的な事例を知っておくことで、リスク管理への意識を高めることができます。賃貸物件で想定される主な適用事例としては、以下のようなケースが挙げられます。

・共用部の階段が破損していて転倒事故が発生
・エレベーターの不具合でケガをした
・屋根瓦・外壁が落下し、下にいた通行人や車両に損害が生じた
・共用照明が故障し暗い状態で転倒しケガ
・共用廊下の清掃不足で滑って骨折
・貯水槽の管理不備で水道水が汚染され、入居者の健康被害が発生
・共用給排水管からの漏水で下階住戸に被害
・共用部にある植栽や掲示板が倒れて、居住者にぶつかってケガをした
・駐車場の設備(シャッター・ゲート)が誤作動し車両を傷つけた
・門扉・塀が倒れ通行人をケガさせた
・敷地内の木が倒れ隣家の屋根を破損
など

これらの事例に共通することは、建物や設備の欠陥、あるいは管理不備が原因で入居者を含む第三者に損害を与えたという点です。

施設賠償責任保険は、大家や管理者が所有・管理する建物や設備において、管理上の不備や欠陥が原因で事故が発生し、法律上の賠償責任を負った場合に適用されます。民法では、建物の不備によって他人に損害を与えた場合、管理者が注意を払っていても、最終的に所有者は賠償責任を負わなければならないとされています。

例えば、老朽化による外壁破損は管理や修繕によってある程度防ぐことが可能ですが、これまでの想定を大きく上回るような強風による破損で、その破片が下を走る車両を傷つけてしまったといったケースは事前に対策することが難しいです。

一方で、入居者自身の不注意や故意による事故は、原則として保険の適用外となります。日頃から建物や設備の状態を把握し、定期的な点検と速やかな修繕を行うことが、事故の未然防止と適切な保険活用の両面で重要といえます。

■施設賠償責任保険で補償される費用

施設賠償責任保険に加入しておくことで、事故発生時にさまざまな費用が補償対象となります。ここでは、主な補償内容を確認しておきましょう。

●損害賠償金

第三者に対して法的に支払う必要が生じた損害賠償金を補償します。

これは施設賠償責任保険の中核となる補償内容であり、ケガの治療費や慰謝料、物的損害の修理費用、休業損害など、法律上の賠償責任に基づいて支払う金額が対象となります。

賠償金額は事故の内容や被害の程度によって大きく異なりますが、場合によっては数百万円から数千万円に及ぶこともあるため、十分な補償額の設定が重要です。

●損害防止費用

事故による損害の拡大を防ぐために緊急対応として支出した費用が対象となります。

例えば、漏水事故が発生した際に被害の拡大を防ぐため緊急で行った止水作業の費用や、外壁タイルの落下事故後に二次被害を防ぐため設置した安全柵の費用などが該当します。

事故の際、迅速な対応は被害を最小限に抑えるために不可欠であり、その費用が補償されることは大きなメリットといえます。

●緊急措置費用

事故等が発生した際に初動対応として、応急処置や仮修理、緊急搬送など緊急的に行った措置にかかる費用が補償の対象となります。

例えば、転倒事故の被害者を病院に搬送するための費用や、破損した設備の仮修理費用などが挙げられます。

これらの費用は事故対応において避けられない支出であり、保険でカバーされることで経済的負担が軽減されます。

●訴訟費用・弁護士費用

賠償請求に関連して発生する裁判費用や弁護士費用、示談交渉で解決することになった際の費用など裁判等にかかる費用が補償対象となります。

事故の責任範囲や賠償額について当事者間で合意に至らず、訴訟に発展するケースも少なくありません。そのような場合、弁護士への依頼費用や訴訟にかかる諸経費は高額になることがありますが、施設賠償責任保険でカバーされることで、大家の負担が大幅に軽減されます。

保険会社によって補償内容は異なるため、事前に確認しましょう。

●保険会社の要求に伴う協力費用

事故対応にあたり、保険会社から協力を求められた際に発生した費用が補償されます。

保険会社が事故の調査や示談交渉を進める過程で、被保険者である大家に書類の提出や現場での立ち会いなどを依頼することがあります。その際にかかった交通費や資料作成にかかる諸経費などが対象となります。

保険会社と協力して適切に事故対応を進めることは、スムーズな問題解決につながるため、こうした費用が補償されることは安心材料といえます。

■施設賠償責任保険で補償されない費用

賃貸物件に関連して発生した損害であっても、施設賠償責任保険でカバーされない損害もあります。補償の範囲外となる損害についてしっかりと確認しておき、想定外の支出に悩まないようにしましょう。

●契約者や被保険者の故意による損害

大家や管理者が意図的に起こした事故や損害については、保険の対象外となり、施設賠償責任保険では補償されません。

これは保険の基本原則であり、故意による損害を補償対象とすることは、不測の損害に備えるという保険制度の趣旨に反するためです。

また、重大な過失があった場合も、補償が制限されることがあります。日頃から適切な管理と誠実な対応を心がけることが、賃貸経営において重要になります。

●自然災害などによる損害

地震・噴火・津波が直接の原因となる損害は、一般的に施設賠償責任保険では免責となります。これらの大規模自然災害による損害は、地震保険など別の保険で補償する必要があります。

なお、台風・暴風雨などの風水災による損害は一般的には補償対象となりますが、管理者に過失があると判断されるケースなどは補償対象外となることもあります。例えば、台風の接近が予測されていたにもかかわらず、明らかに必要な対策を怠っていた場合などが該当します。

●石綿(アスベスト)などの発がん性物質に起因する損害

石綿(アスベスト)とは、天然に存在する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」や「いしわた」と呼ばれるものです。その繊維が極めて細いため、所要の措置を行わないと石綿(アスベスト)が飛散してしまい人が吸入してしまう危険があります。昭和50年に原則使用を禁止されましたが、以前はビル等の建設工事などに利用されていました。

これらアスベストなど、特定の有害物質が原因となる健康被害や損害については、多くの保険で補償対象外とされています。アスベストによる健康被害は、長期間にわたって発症する可能性があり、被害の範囲や賠償額の予測が困難であることから、一般的な施設賠償責任保険では免責事項とされています。

アスベストを含む建材が使用されている可能性がある物件については、専門業者による調査と適切な対策が必要です。

■施設賠償責任保険の保険料相場

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(画像:PIXTA)

施設賠償責任保険の保険料は物件条件や補償内容によって大きく異なり、年間数万円~十数万円が一般的な相場です。

保険料は建物の構造や規模、地域特有のリスクなど複数の要因によって決定されるため、下記の表を参考に、保険料に影響を与える具体的な要因について事前に確認しておきましょう。

項目概要施設の構造建物の構造によって事故リスクが異なるため、保険料に影響します。木造は老朽化や火災・漏水リスクが高く割高になりやすく、RC(鉄筋コンクリート)造などは比較的割安に設定される傾向があります。施設の用途施設の用途により、第三者に損害を与える可能性が異なります。人の出入りが多かったり事故リスクが高かったりする用途ほど、保険料は高くなる傾向があります。施設の面積・入居者数建物の延床面積が大きいほど、また入居者数が多いほど事故発生リスクが高まるため、保険料も上昇しやすくなります。施設の売上高主に事業用施設の場合、売上規模が大きいほど賠償責任額が高額になる可能性があり、売上高が保険料算定の基準となることがあります。地域別リスク係数地域ごとの事故発生率や災害リスクをもとに係数が設定されます。都市部や災害リスクの高い地域では保険料が高くなる場合があります。補償内容補償される内容が多岐にわたるほど保険料は高くなります。
補償範囲施設内のみか、敷地外や管理不十分による事故まで含むかなど、補償範囲が広いほど保険料は上がります。契約期間通常は1年契約が多いものの、長期契約を選択することで割引が適用されるケースもあります。

建物構造や延床面積、入居者数、地域特性、補償範囲の広さなどが保険料に影響するため、物件ごとに条件が異なれば保険料にも差が出ます。そのため、複数の保険会社から見積もりを取り、補償内容と保険料のバランスを比較検討することが重要です。

また、必要以上に手厚い補償を選ぶと保険料が高額になる一方、補償が不十分だと万が一の際に十分な補償が受けられない可能性があります。自分の物件のリスク特性を理解し、適切な補償内容を選択することが賢明な判断といえます。

■施設賠償責任保険で知っておくべきポイント

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施設賠償責任保険への加入を検討する際、押さえておきたいポイントがいくつかあります。以下の点を理解しておくことで、より効果的な保険活用が可能になります。

●保険料は経費として計上できる

施設賠償責任保険の保険料は、賃貸経営における必要経費として計上することが可能です。

確定申告の際に経費計上することで課税所得を減らすことができるため、保険料に関する領収書や契約書類は大切に保管し、税務処理に反映させましょう。

●火災保険などの特約でも加入できる

施設賠償責任保険は、火災保険の特約としてセットで加入できるケースも多く、付帯することで契約手続きが一本化され、管理が簡便になります。

また、セットで加入することで保険料が割安になる場合もあるため、既に火災保険に加入している場合は、特約として追加できるか保険会社に確認してみることをおすすめします。

●その他の保険への加入も検討しよう

火災保険や地震保険、漏水補償特約などを組み合わせることで、賃貸経営におけるリスクをより包括的にカバーできます。施設賠償責任保険だけでは対応できないリスクも存在するため、以下のような保険も必要に応じて検討する価値があります。

・火災保険
・地震保険
・孤独死保険
・家賃収入特約
・家主費用特約
・漏水補償特約
・工事発注者責任補償特約
など

火災保険は建物や設備の火災・風水害などによる損害を補償し、地震保険は地震・噴火・津波による損害を補償します。孤独死保険は入居者の孤独死により発生する原状回復費用や家賃損失を補償し、家賃収入特約は火災などで建物が使用不能になった際の家賃収入の損失を補償します。

家主費用特約は入居者の死亡事故などに伴う見舞金や空室期間の損失を補償し、漏水補償特約は専有部分からの漏水事故による損害を補償します。工事発注者責任補償特約は、修繕工事中に第三者に損害を与えた場合の賠償責任を補償します。

これらの保険を適切に組み合わせることで、賃貸経営における多様なリスクに備えることができます。ただし、保険料の負担とのバランスを考慮し、自分の物件の特性やリスクに応じて必要な保険を選択することが重要です。

なお、賃貸物件の資産価値を維持し、事故リスクを減らすためには、適切なメンテナンスの実施も不可欠です。建物や設備の定期的な点検・修繕を行うことで、事故の未然防止につながります。メンテナンスのポイントについては、下記のウェビナーもご覧ください。

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