【GMOインターネット】広告の機能補完から海外展開、AIへ―「買う」から「選ぶ」M&Aへ

GMOインターネット<4784>のM&A戦略が変わりつつある。モバイル広告やスマートフォン広告、アドテクノロジーなどに始まり、インターネットインフラ事業を承継し、海外展開にも乗り出した。

現在は生成AI(人工知能)や機械学習、HPC(高性能計算)向けの計算基盤をクラウドで提供するGPUクラウドへの投資も進めており、M&Aを「規模を拡大する手段」から「既存資産と組み合わせ、成長分野に経営資源を集中する手段」へと変化している。

広告機能の増強から始まったM&A

【GMOインターネット】広告の機能補完から海外展開、AIへ―「買う」から「選ぶ」M&Aへ

GMOインターネットのM&Aは、前身のGMOアドパートナーズ時代に始まった。2011年にサイバードからモバイル広告代理事業を取得する。

続いて2011年12月にスマートフォン向け広告配信を手がけるサーチテリアの株式取得を発表し、2012年1月に連結子会社化した。サーチテリアは、その後GMOモバイルに吸収合併され、広告・メディア機能とアドテクノロジー機能を組み合わせる方向に進んだ。

2013年には成果報酬型広告に強いイノベーターズの株式90%を取得した。さらに同年、中国向けフリーペーパーの編集制作や広告代理、日本企業の中国進出支援などを手がけるチャイナ・コンシェルジュも子会社化している。

この時期のM&Aの特徴は、対象が既存事業の広告から大きく離れていなかったことだ。広告市場の変化に合わせて、不足している機能や顧客接点を吸収している。

背景には、広告市場の急速なデジタル化があった。従来型の広告代理店機能だけではなく、スマートフォンや成果報酬型広告、広告配信技術などへの対応が必要になったためだ。M&Aを活用し、すでに顧客基盤や技術、人材を持つ企業や事業を取得することで市場変化への対応を速める手段になった。

広告会社からアドテク企業へ転換

転機になったのが2015年のアドクラウド買収だ。インターネット広告の配信システムをクラウド型で提供する同社を子会社化した狙いは、広告配信基盤を活用して配信効率や収益性を高めるとともに、統合プラットフォームを開発することだった。

2016年には、GMOモバイル、GMOアドマーケティング、アドクラウドの3社をグループ内で経営統合。3社の技術力と営業・マーケティング力を組み合わせ、広告商品の開発スピードを高めることを狙った。

この頃、広告市場では、純広告中心のモデルから、データやアルゴリズムを利用した運用型広告へ急速にシフトしていた。この環境では、広告営業力だけを強化しても競争力を維持できない。広告配信技術そのものを持つことが重要になった。

これを受けて同社は、M&Aによって技術を獲得したうえで、グループ内の営業・メディア・技術を統合する戦略へ転換した。アドクラウドを買収しただけで終わらず、既存のGMOアドマーケティングやGMOモバイルと連携し、実際に広告配信サービス「AkaNe byGMO」の開発につなげているからだ。

つまり、①「会社を買う」②「技術を取り込む」③「既存事業と組み合わせる」④「新しい商品をつくる」という、M&A後の統合プロセスを最大限に発揮したわけだ。単純な売上規模の拡大ではなく、買収対象の技術をGMOの既存事業に組み込み、新商品開発につなげた。

M&A後の「統合」にアクセル

その後、必要な技術やコンテンツを手に入れた後は、既存会社との統合によって経営効率を高める動きは加速する。2017年には動画コンテンツを制作・販売するシフトワンを子会社化する。動画ソリューションを入手することで、広告市場の商材トレンドや顧客ニーズへの対応を加速した。シフトワンも2018年にグループのGMO NIKKOへ吸収合併されている。


GMOイノベーターズも2017年にGMO NIKKOへ吸収合併され、チャイナ・コンシェルジュも2014年にGMO NIKKOへ吸収された。こうした動きからは、2010年代半ば以降、GMOが買収後のグループ内再編も重視するようになったことがうかがえる。

広告市場では技術革新のスピードが加速し、複数の小規模会社をそれぞれ独立運営するより、技術・営業・顧客基盤を集約した方が効率的になっていた。M&Aによって企業を増やした後、グループ内再編によって重複機能を整理し、規模のメリットを最大限に引き出す。

広告会社から「インフラ×広告」企業へ

最大の転換点は2025年1月だ。親会社のGMOインターネットグループ<9449>は、インターネットインフラ事業とインターネット広告・メディア事業をGMOアドパートナーズに承継し、現在の「GMOインターネット」として再スタートを切る。

これによって同社は、広告・メディアだけでなく、ドメイン、クラウド・レンタルサーバー、インターネット接続などのインフラ事業を直接担う会社になった。

ここでM&A戦略が大転換を迎える。それまでのM&Aは、広告・メディア周辺の機能を補完する「広告+広告」の組み合わせが中心だった。それが、新体制への移行を機に「インフラ+広告・メディア」へと変わったのだ。

広告事業では、顧客との接点が広告取引に限定されるが、インフラ事業にはドメインやサーバーなどの継続利用型サービスがあり、安定した顧客基盤を持つ。

この両事業を統合することで、インフラ顧客への広告・マーケティングサービスのクロスセル(併売)や、広告顧客へのインフラサービス提供につなげる体制を整えた。

海外事業も強化

2025年には、GMOインターネットグループが保有する海外法人8社の株式を取得し、その子会社を含めて11社を子会社化した。日本国内ではインターネットインフラ市場が成熟する一方、アジアではインターネット利用やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展による成長余地が残る。

そこでGMOは、国内市場で培ったインフラ事業を海外へ横展開し、国内に限定されない収益源を確保しようとした。

海外事業を拡大する一方、買収後には一部事業で減損処理が行われ、2026年9月にはタイのデジタルアセット事業からの撤退も決まった。現時点では、海外展開全体の成否を判断するにはなお時間が必要だ。

今後はAI・GPU、マーケティングへ

今後の同社の成長分野を考えるうえで重要なのがAIだ。GMOインターネットは2026年2月、完全自動運転AIを開発するチューリングに32億円を出資するとともに、GMO GPUクラウドの4年間の長期契約を締結した。

GMOはGPUクラウドを提供し、チューリングはその計算資源を使ってAI開発を進める。さらにGMOは、AI開発現場から得られるフィードバックをGPUクラウドの改善に生かすとしている。

このように買収だけではなく、「出資する」「長期契約を結ぶ」「技術を共有する」「顧客関係を構築する」という柔軟な「仲間づくり」が増える可能性もある。

特に候補となり得るのは、「AI・GPU」「AIソフトウエア」「データ・マーケティング」「クラウド・インフラ」「アジアのインターネットインフラ」など、既存事業との接続性が高い分野だろう。

【GMOインターネット】広告の機能補完から海外展開、AIへ―「買う」から「選ぶ」M&Aへ

親子協働で事業ポートフォリオを組み換え

そもそも現在のGMOインターネットは、こうした事業再編を通じてGMOインターネットグループが保有していたインターネットインフラ事業を承継して誕生した。

一連の事業再編からは、GMOインターネットグループがグループ全体の事業ポートフォリオを組み替え、その中でGMOインターネットがインフラ・広告・メディア事業を担う構図がうかがえる。M&Aとは異なるが、親会社と子会社の間で事業・会社を組み替える「グループ内ポートフォリオ再配置」といえる。

今後もGMOインターネットグループ全体として、「どの会社がどの事業を持つべきか」を機動的に見直し、①外部M&A②グループ内事業移管③資本提携④事業売却を組み合わせる可能性が高い。


GMOインターネットのM&A戦略は、「足りない機能を買うM&A」から「GMOのエコシステムを強化するM&A」へ軸足を移している。

買収した会社の技術、顧客、人材、データを既存事業とどれだけ組み合わせられるか。そして、シナジーが見込めない事業をどれだけ早く切り離せるか。この「買収後の統合」と「撤退の速さ」こそが、今後のGMOインターネットの社運を左右することになりそうだ。

文:糸永正行編集委員

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