【蝶理】海外で事業領域拡大へ 事業投資とM&Aを積極化

老舗繊維商社の蝶理<8014>は、海外市場を成長の中心に据え、事業領域を拡大する。

世界的な生産・調達網の重要拠点である中国・ASEAN(東南アジア諸国連合)を基点に、海外から海外へのビジネスを強化し、数値目標の達成を目指す。

これらの戦略を迅速に実行するため、積極的な投資を進める方針で、サプライチェーン(調達から生産、販売に至る供給網)の強化に向けた事業投資に加え、事業領域の拡大を目的とするM&Aを積極化する。

時期は未定だが、将来の「ありたい姿」の数値目標として、売上高5000億円、海外売上高比率50%を掲げる。

直近5年間、M&Aの実績がない同社が、既存事業の延長にとどまらない成長手段をどう取り込むかが焦点となる。

海外売上高の停滞と大型事業投資の遅れを課題に

2026年4月に策定した2027年3月期から2029年3月期までの3年間の中期経営計画で、これらの目標を定めた。

同中期経営計画では、前中期経営計画の課題として、海外売上高の停滞と、新たな成長に向けた大型事業投資の遅れなどを挙げた。

前中期経営計画は未達となり、当初計画では2026年3月期の売上高は3600億円を見込んでいたが、実績は3000億円弱(計画比83%)にとどまった。

税引き前当期純利益も同様で、当初の160億円に対し約142億円(同89%)と計画に届かなかった。

新たな中期経営計画は、こうした状況を踏まえて策定した。

同中期経営計画では「戦略を、スピード感をもって遂行していくためには、積極的な投資が不可欠」とし、サプライチェーンの強化や事業領域の拡大に向けた投資計画を盛り込んだ。

また、業界再編に伴う統合・買収の活発化や、サプライチェーン、商流の変化に加え、先進国の少子高齢化と新興国の人口増加を事業環境の変化と位置付けた。

こうした事業環境も踏まえ、各地域の市場環境に応じた戦略を進め、成長投資を通じて海外事業の拡大と収益基盤の強化につなげる方針だ。

成長投資175億円以上を計画

同中期経営計画の目標である海外売上高の拡大については、2026年3月期の海外売上高約1100億円、海外売上高比率37%から、2029年3月期には海外売上高約1400億円、海外売上高比率40%を目指す。

海外売上高で300億円の増加を計画しており、ASEAN(東南アジア諸国連合)で120億円の増加を、欧州と米国でそれぞれ50億円ずつ、インド、中東、北アフリカで合計50億円、東アジア(日本を除く)で30億円の増加を見込む。

この目標を実現するため、繊維事業では、グローバル市場への出口を有する企業や、消費者接点の強い企業、シナジー効果を発揮できる企業を対象に、M&Aや事業投資を検討する。

また化学品事業では、半導体材料事業、リサイクル事業などで出資を行い、加工食品事業、医農薬中間体・原薬事業では設備投資を実施する。

さらに、これら以外の分野では事業領域拡大のためのM&Aを検討する。

こうした事業投資とM&Aを合わせた成長投資額は、3年間で175億円以上を計画している。

5年ぶりのM&Aが視野に

蝶理は1861年、京都の西陣で生糸問屋として創業した。

1926年に人絹工業の勃興とともに人絹糸の取り扱いを開始し、1952年には合成繊維の取り扱いを始めた。

1953年に東洋レーヨン(現 東レ)製品の販売を始め、2004年に東レの子会社となった。

この間の1956年には、石油化学の将来性に着目して、合成樹脂、化学品などの取り扱いを始めている。

同社の沿革によると、2013年の化学品専門商社のピイ・ティ・アイ・ジャパン(現 蝶理GLEX)の子会社化が最初の企業買収となる。

その後、2015年に化学品を取り扱うミヤコ化学、2017年に繊維を取り扱うアサダユウを傘下に収めた。

さらに2018年に化学品を取り扱う小桜商会を子会社化したあと、2021年に繊維を取り扱うスミテックス・インターナショナル(現 STX)を子会社化した。

その後、M&Aの実績はなく、中期経営計画でM&Aの検討を掲げたことで、5年ぶりのM&Aが視野に入る。

【蝶理】海外で事業領域拡大へ 事業投資とM&Aを積極化
蝶理の沿革と主なM&A

海外売上高は2倍以上に

蝶理は祖業の繊維事業と1956年に参入した化学品事業が、それぞれ売上高のほぼ半分ずつを占める主力事業だ。

繊維事業では、川上の原料、川中のテキスタイル・資材、川下のアパレルなどの最終製品に至るまで幅広く事業を展開している。

同社は、合繊素材の開発・生産のネットワークのほか、中国、ASEANでの顧客基盤、中東など海外成長エリアで展開する販売拠点などを含む一貫したグローバルバリューチェーンをはじめ、豊富な知見を持つ人材を自社の強みと分析する。

一方、化学品事業は、合繊原料・樹脂原料、生命科学材料(飼料・肥料、加工食品向け食品原料・添加物)、電子材料、医農薬中間体・原薬・原体といった、ニッチな原料・分野・市場で独自のビジネスモデルを築いている。

専門性の高い商社機能や、グローバルなネットワークと市場開拓力、有望なサプライヤーを発掘し、継続的な取引先に育てる人材などを自社の強みとする。

【蝶理】海外で事業領域拡大へ 事業投資とM&Aを積極化
蝶理の売上高構成比

蝶理の2026年3月期は売上高2992億9300万円(前年度比3.9%減)、営業利益130億5600万円(同9.9%減)と減収営業減益となった。

繊維事業は、素材・資材分野が低調に推移したことなどで減収となり、利益もテキスタイル分野の中東での情勢悪化・市況低迷、アパレル分野の環境・構造変化などで減少した。

化学品事業も、パフォーマンスケミカル分野(ウレタン原料、樹脂、添加物など)の市況低迷などで減収となり、利益も前年度に実施した中国の化学品製造会社グループに関する債権の一部回収や、貸倒引当金戻入額の計上などの反動で減少した。

中期経営計画初年度となる2027年3月期は、売上高3200億円(同6.9%増)、営業利益145億円(同11.1%増)と増収営業増益に反転する見込みだ。

中期経営計画最終年の2029年3月期には、売上高3500億円、営業利益175億円を見込む。

さらに時期は明らかにしていないが、将来の「ありたい姿」の数値目標として売上高5000億円、営業利益300億円を掲げている。

加えて海外売上高比率は50%としており、その時点の海外売上高は2500億円に達することになる。

2026年3月期の海外売上高の実績(約1100億円)と比べると、海外売上高は2倍以上に拡大する計算だ。

今後見込まれるM&Aは、将来の「ありたい姿」の実現に向けた有力な手段の一つになるとみられる。

【蝶理】海外で事業領域拡大へ 事業投資とM&Aを積極化
蝶理の業績推移

文:M&A Online記者 松本亮一

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