ポルトガル出身の振付家が描く、歴史と記憶をめぐるエネルギッシュな世界 『CARCAÇA -カルカサ-』10月上演
©José-Caldeira

2025年10月24日(金)・25日(土)、神奈川・KAAT神奈川芸術劇場<ホール>にてKAAT DANCE SERIES『CARCAÇA -カルカサ-』が上演される。ポルトガルを拠点に活躍する気鋭の振付家、マルコ・ダ・シルヴァ・フェレイラによる2022年の作品で、その後世界各地で上演を重ねてきた話題作だ。



マルコ・ダ・シルヴァ・フェレイラは、1986年生まれ。独学でアーバンダンスを習得し、ホフェッシュ・シェクター、ティアゴ・ゲデスといった国際的に活躍する振付家のもとでダンサーとして活動、振付家としては、2013年の『HU(R)MANO』、2016年の『BROTHER』などで高い評価を得ている。その後2020年にポルトガル国立バレエ団で振付けた作品『Corpos de Baile コルポス・デ・バイレ』が、『CARCAÇA』へと繋がったという。



ポルトガル出身の振付家が描く、歴史と記憶をめぐるエネルギッシュな世界 『CARCAÇA -カルカサ-』10月上演

©velislavvelislav---One-Dance-Week

“CARCAÇA”とは、遥か昔に絶滅した動物の骸骨を意味するポルトガル語だそう。マルコ・ダ・シルヴァ・フェレイラは、この言葉を“歴史”や“記憶”の象徴と捉え、創作に取り組んだ。振付家自身を含む10人のダンサーと2人のミュージシャンが繰り広げるのは、集団のアイデンティティや、その文化にまつわる考察だ。ポルトガルに伝わる伝統的な大衆の踊りや身体を使った儀式に着目したとコメントを寄せているマルコ。「こうした伝統の多くは抵抗や社会の団結力から生まれますが、年月とともに力強さを失い洗練され、時に忘れ去られます。本作ではこの身体的記憶を失くすとどうなるか、それらを保存対象としてではなく、今後も変化し続けるものとして、再び命を吹き込む方法を探りました」。



実にエネルギッシュで生命力にあふれる、独創的な作品だ。冒頭では、パーカッションのシンプルなリズムが、ダンサーたちを舞台へと導いていく。その響きが次第に複雑に、トリッキーに変化していく中で、ダンサーたちの動きが大きなうねりを生み出し、膨大なエネルギーを放出する。

彼らの身体は、そのコスチュームの印象も手伝って、まるでアスリートのよう。マルコ自身も水泳に取り組んでいたというが、ストリートダンス出身者も多い彼らの出自は実に多彩、性別も人種も超越した一人ひとりの個性が、より一層際立ち、輝いていく。



ポルトガル出身の振付家が描く、歴史と記憶をめぐるエネルギッシュな世界 『CARCAÇA -カルカサ-』10月上演

ⒸMerkat de Flors

彼らがその身体を尽くして語るのは、ポルトガルの「過去」と「現在」と「未来」。ポルトガルといえば、イスラム文化の影響を受けた美しい建物や、大航海時代と植民地支配、憂いを帯びた響きが美しいファドと、さまざまなイメージが喚起されるが、その独特の薫りを漂わせながら、怒涛のラストへと文字通り汗だくで走り抜ける。そのエネルギッシュかつ独創的な身体表現は、ここでしか味わえない貴重な体験となるだろう。



ポルトガル出身の振付家が描く、歴史と記憶をめぐるエネルギッシュな世界 『CARCAÇA -カルカサ-』10月上演

2023 年にはフランス・リヨンのメゾン・ドゥ・ラ・ダンスのアソシエイト・アーティストに就任したというマルコ。ヨーロッパのダンスシーンにおいて、明らかに独特の存在感を放つ振付家だけに、『CARCAÇA』も、これからのクリエーションも要注目だ。




<公演情報>
KAAT DANCE SERIES
『CARCAÇA -カルカサ-』



振付・演出:マルコ・ダ・シルヴァ・フェレイラ
音楽:ジョアン・パイシュ・フィリプ、ルイシュ・ピシュタナ

出演:マルク・オリヴェラシュ・カーサシュ、マルコ・ダ・シルヴァ・フェレイラ、ナラ・レヴロン、アンドレ・スピーディ、ファビオ・クレイズ、マリア・アントーヌシュ、マックス・マカウスキ、メラニー・フェレイラ、ネルソン・テウニシュ、エリック・アモリム・ドス・サントス

2025年10月24日(金)・25日(土)
会場:神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場<ホール>



チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2520296(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2520296&afid=P66)



公式サイト:
https://www.kaat.jp/d/carcaca

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