1964年に公開され、近年では『ラ・ラ・ランド』がオマージュを捧げた映画としても注目を集めたジャック・ドゥミ監督の『シェルブールの雨傘』。カトリーヌ・ドヌーヴの奇跡的な美しさやミシェル・ルグランによる甘く切ない音楽は時を超えても色褪せず、今でも世界中で愛され続けている。
舞台はフランス、シェルブール。自動車整備士のギイと17歳のジュヌヴィエーヴは愛し合う恋人同士だが、雨傘店の店主である彼女の母親は若すぎるふたりの結婚に反対していた。
登場人物たちがすべてのセリフを音楽に乗せて語っていく点が、この作品の独自のスタイルだ。
仕事終わりにワクワクしながら『カルメン』を観劇するデートシーンや、軽やかなデュエットダンス、包容力を感じさせるギイのバックハグは、思わずキュンとしてしまう名場面。雨傘店の内装やそれぞれの部屋の壁紙、ジュヌヴィエーヴのカラフルでクラシカルな衣装も愛らしい。
ギイが出征してから、彼の子供を身ごもっていることに気づいたジュヌヴィエーヴの選択。闇落ちするほどの絶望の先で、ギイが見つけた光。やがてふたりが再会する場面では、選んだ今と選ばなかった未来、恋と愛の違いとは、そして本当の幸せとは? といくつもの答えのない問いが投げかけられる。京本が見せた最後の表情から伝わるのは、それでも続いていく人生の哀しさと美しさかもしれない。
取材・文:細谷美香
<公演情報>
『シェルブールの雨傘』
脚本:ジャック・ドゥミ
音楽:ミシェル・ルグラン
演出・上演台本・訳詞:荻田浩一
出演:
京本大我
朝月希和
井上小百合
渡部豪太
春野寿美礼
他
【東京公演】
2023年11月4日(土)~11月26日(日)
会場:新橋演舞場
【大阪公演】
12月3日(日)~12月10日(日)
会場:大阪松竹座
【広島公演】
2023年12月14日(木)~12月16日(土)
会場:広島文化学園 HBGホール
公式サイト:
https://cherbourg-2023.jp/
※公演が終了したため舞台写真は取り下げました。