〈衝撃データ〉"20代の4人に1人が終活中"は本当か?  27歳女性がしたためた「カジュアルな遺言」の中身
〈衝撃データ〉

葬儀会社のティア(愛知県名古屋市)が発表した、全国の20代から70代の男女1,500名を対象とした調査によると、遺書や遺影の準備といった“終活”をしていると回答した割合が全体の4人に1人という結果になった。年代別では70代が最も多く、次いで多かったのは20代だが、若い世代はなぜ終活をするのか、その実態を探ってみた。

 

20代の4人に1人が「終活」、街頭アンケートの結果は……? 

葬儀会社ティアが行った男女1500人を対象にしたアンケートで「終活」に取り組んでいると答えたのは、全体で24.6%、そのうちトップの70代は40.0%、2位の20代が26.8%という結果となった。

具体的な終活の取り組みについて、全体では「生前整理」が8.5%と最も割合が高く、次に「家族との話し合い」(8.3%)、「エンディングノートの作成」(6.2%)と続いている。20代に関しては、「家族との話し合い」が8.0%と最も多く、続いて「遺書の作成」、「遺影の撮影」が7.2%という結果となっている。

はたして、20代の終活は本当に広まっているのか。集英社オンライン取材班は、東京・渋谷にて20代の若者約100名に、終活についての街頭インタビューを行なってみた。

「友達と写真を撮った時に、すごく綺麗に撮れたら『これ遺影にする』みたいなノリはやったことありますけど、実際に遺影にするかを深くは考えていませんでした」(20歳女性・大学生)

「終活なんて気にしたこともないです。余命宣告とかされた時には親友と親と妹には(遺書を)書こうかなと思いますけどね」(23歳女性・アパレル店員)

気にしたことがない・興味がないという若者がいるいっぽうで、意外な意見もある。

「アルバイト先の人間関係がうまくいかず、メンタルがやられている時に、友人に遺言というわけではないですが“お願い”は送りました。可愛がっているぬいぐるみがいて、死んでもずっと一緒にいたいので『棺に入れて』とお願いしました」(27歳女性・フリーター)

 「一応何かあった時のためにお葬式ができるくらいの貯金をしています。葬儀の価格は会社やプランによってピンキリですが、大体150万円くらいですね。毎月2万円は貯金するようにしています。葬式だけが目的ではないですが、今のうちからもしものことは多少考えています」(24歳女性・大学職員) 

家族と日ごろからカジュアルに“死”について話し合う女性

そして今回、実際に終活をしたことがあるという女性に詳しく話を聞くことができた。ユミさん(27歳・仮名)は大学4年生のころ、友人の影響で初めて“終活らしきこと”を始めたそうだ。

「友人から『急に死んでしまったときのために、SNSやショッピングサイトのログイン情報を紙に書いてまとめている』と聞いて、私も軽い気持ちでやってみようかなと思ったのがきっかけです。

SNSや使用中のサブスクリプションサービスのログイン情報のほか、自分の持ち物で捨てていいものもまとめて書いていました」(ユミさん)

そんなユミさん、ほかにも友人たちとカジュアルな終活をしているそう。

「友人たちと綺麗な景色の場所で写真を撮って、自分の姿がうまく綺麗に撮影できたら、『これ遺影にしようかな~。どれがいいと思う?』と友達とカジュアルに話すこともありますね。終活として意識していなかったですが、終活と言われたら終活に当てはまるんじゃないでしょうか」(ユミさん)

ユミさんがさまざまな終活をするに至った背景には、死に関する自身の体験が関係しているようだ。

「私はこれまで親族の葬式を10回近く経験していて、普通の20代よりも身近に死の体験をしてきていると思います。亡くなってからすぐに葬儀会社に連絡して、葬儀の日程を決めたり、参列者へ連絡したり、遺品整理をしたりと、“人が急に亡くなるって、こんなに大変なことなんだ”と感じることが多かったんです。

だから自分は死んでから身の回りの人に迷惑をかけないように、できる限りの準備はあらかじめしておきたいなって思っています。母親ともよく葬儀の話などをしますが、母親は『葬儀は盛大にやらずに、プランはいちばん安いものでいいから。ここの葬儀場がいいな』と伝えてくれているので、自分がもし喪主になるときに、悩むことが少なくなるので助かりますね。

家族同士で死んでからのことを話し合うのって珍しいことかもしれないですけど、人はいつ死ぬかわかりませんから、日ごろからカジュアルに話し合っておくことは大事なんじゃないかと思います」(ユミさん)

終活のきっかけは「いかに“死”を身近に感じているか」 

20代の若者が終活をするようになるきっかけにはどのような理由があるのだろう。東京都・足立区にある葬儀会社「孝行舎」の代表・田中孝平氏に話を聞いてみた。

「おそらく若い方で終活をされていらっしゃる方というのは、身近で近親者が亡くなった、自身が大病を患ったなど、“死”を身近に感じる経験をした人が多いと考えます。

こうした経験がない限り、20代という若さでは、大半の人が将来やりたいことや展望など、未来のことに思いを馳せることが自然でしょう。

年齢に関係なく、終活を考えるきっかけには、いかに“死”の存在を身近に感じているかということが関係しているのではないでしょうか」(孝行舎・田中氏)

――注目される20代の終活だが、その背景には先行き不安定な社会保障への不安、身近な“死”の体験などが関係していた。突然訪れるかもしれない“死”を軽視せず、日ごろから家族や友人とカジュアルに“もしもの時”について話し合うことが大事なのかもしれない。

取材・文/瑠璃光丸凪(A4studio)

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