脳を元気にするために食べるべき食品とは…茂木健一郎が徹底的に大切にすべきと唱える「第二の脳」と呼ばれる臓器の存在
脳を元気にするために食べるべき食品とは…茂木健一郎が徹底的に大切にすべきと唱える「第二の脳」と呼ばれる臓器の存在

脳のパフォーマンスを上げるために、大事なこととはなんだろうか。規則正しく質の高い睡眠を大切にしている人も多いだろう。

しかし、同じくらい重要なのが「食事」なのだと脳科学者・茂木健一郎氏はいう。そのメカニズムと、脳の力を最大限引き出す食事とは? 

 

最新著書『60歳からの脳の使い方』より抜粋・再構成してお届けする。 

腸内環境を整えると脳にも良い影響が生まれる 

睡眠と同じくらい、脳の活性化のために重要なのが「食事」です。

近年の研究で、特に注目されているのが、「脳腸相関」と呼ばれる腸と脳の関係について。腸の健康状態が、脳の働きや感情の安定に深く関わっていることが科学的にも明らかになっています。

「腸と脳がどうして関係あるの?」と不思議に思われた方もいるかもしれませんが、実は腸には消化器官としての役割だけでなく、「第二の脳」と呼ばれるほど複雑な神経ネットワーク(腸管神経系)が存在しています。その中で、腸と脳は常に情報交換を行っており、腸の状態が脳の感情や意思決定に影響を与えているのです。

たとえばストレスを感じるとお腹が痛くなる人が多いですが、これは、脳がストレス情報を腸に伝えるため。逆に、腸内環境が乱れていると、不安感や気分の落ち込みが引き起こされることもあります。実際に、腸から脳への情報伝達量は、脳から腸への伝達量よりも多いことが知られています。

つまり、脳の状態を改善するには、腸の状態を気にすることが、ひとつの近道だと言えるのです。

たとえば、僕の友人で哲学者の塩谷賢さんが、以前おもしろい事例を教えてくれたことがあります。当時の彼は時間論という非常に難解なテーマに取り組んでいたそうです。

時間というものがどのような性質を持ち、人間の認識とどう関わっているのかという哲学的な問題に深く悩み抜いた末、なんと体調を崩す寸前まで追い詰められてしまったのだとか。

しかし、そんな彼の状況を大きく変えたのが「食事」でした。難問に向き合って頭を抱えていた彼が、京都で素晴らしく美味しい天ぷらを食べたところ、その深刻な悩みが一気に軽くなり、気持ちが落ち着いたとのこと。この事例は、食事が腸を通じて脳の働きに直接影響を与える良い例だと思います。

また、腸と脳の情報交換には、迷走神経という重要な神経経路が関係しています。腸が健康であれば、この経路を通じて脳に良質な情報が伝わり、脳が活性化される。反対に、腸内環境が悪化すると脳にネガティブな影響を与え、集中力や判断力が低下する可能性もあります。

腸のパフォーマンスを高めることは、脳の活性化やメンタルの安定にもつながっていきます。日常的にバランスの良い食事を心掛け、腸内環境を整えることで、腸の健康を意識した生活を送って、脳のパフォーマンスを最大限に引き出すことができるのです。

脳を元気にするために食べるべき食べ物とは? 

では、腸内環境を整えるには、どのような食事を意識するべきなのでしょうか。

その例のひとつが、「善玉菌を含む食品」と「善玉菌の餌となる食品」を積極的に摂取することです。

善玉菌が含まれる食品には、ヨーグルト、納豆、漬け物、みそ、チーズなどの発酵食品があります。これらには乳酸菌やビフィズス菌などが豊富に含まれており、腸内の善玉菌を増やす効果があります。

また、善玉菌の餌となる食品としては、食物繊維とオリゴ糖を含む食品が挙げられます。食物繊維を多く含む食品には、ごぼう、にんじん、ブロッコリー、ほうれん草などの野菜類や、いも類、きのこ類、海藻類、豆類があります。オリゴ糖が多く含まれる食品としては、玉ねぎ、ねぎ、にんにく、アスパラガス、バナナなども望ましいです。

また、メンタルの調子が良くないと感じる時には、温かい食べ物や飲み物を摂ることも効果的。研究によると、身体が温かさを感じると、心も温かく感じやすくなり、他者への思いやりや優しさが増すことがわかっています。温かい食事をすることで心身ともにリラックスし、脳の認知力も高まる可能性があります。

ぜひ、腸の健康を意識し、バランスの良い食生活を心掛けてみてくださいね。

文/茂木健一郎

『60歳からの脳の使い方』扶桑社新書

茂木 健一郎
脳を元気にするために食べるべき食品とは…茂木健一郎が徹底的に大切にすべきと唱える「第二の脳」と呼ばれる臓器の存在
『60歳からの脳の使い方』扶桑社新書
2025年6月29日1100円(税込)256ページISBN: 978-4594100520脳科学の最新研究でわかった、脳はいくつになっても成長します! ・「もう年だから」をやめると脳は元気になる ・シニアこそAIで脳を若返らせよう! ・「生きがい」を持てば、迷いはなくなる 脳科学者・茂木健一郎氏が教える、今日から豊かなセカンドライフを実現する秘訣満載! 人生100年時代といわれるいま、60歳=「還暦」は人生の折り返し地点という意味合いが強まっています。 これまでずっと会社で働いてきた人が定年を迎え、「さあやっと自由だ」と言わんばかりにセカンドライフとしてあたらしいことに挑戦する元気な人がいる一方で、「ずっと家にいる」「急に元気がなくなった」「突然運動できなくなった」……という人も増えています。その違いはどこにあるのでしょうか。 それは、脳に新しい刺激を与える「生きがい」を持っているかどうかだ、と語るのは脳科学者として人気の茂木健一郎氏です。「生きがい」は難しいものではなく、生活のあらゆるところに見つけることができる、と説きます。
そしてそんな「生きがい」があれば、「もう年だからできない」といった、わたしたちが無意識に持っている「エイジズム(年齢に基づく固定観念)」から脱却し、日々をポジティヴに生きることができるようになります。 そこで、脳科学者・茂木健一郎氏が、最新の脳科学の観点から、何歳になってもボケない・若返る脳の使い方を詳しく解説。「いつまでも元気なあの人」はなにが違うのか、著名人の例を挙げわかりやすく説明します。また現代の日本社会を覆う「老害」問題にも茂木氏ならではの視点から斬り込みます。「老い」をポジティヴにとらえなおすための一冊です。
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