「いざ“戦争”をしたら強いのは進次郎だね」混迷する“ポスト石破”レースの行方 「自公国の枠組みの中で“玉木総理”も現実味」
「いざ“戦争”をしたら強いのは進次郎だね」混迷する“ポスト石破”レースの行方 「自公国の枠組みの中で“玉木総理”も現実味」

参院選で歴史的敗北を喫した石破政権に対し、自民党内からは退陣を求める声が噴出し、“ポスト石破”を巡る動きが活発化している。次期総裁を巡っては、前回の総裁選にも出馬した小泉進次郎氏や高市早苗氏らの名が急浮上しているが、果たして厳しい状況に追い込まれた党を立て直すのはいったい誰なのか。

 

「野党に政権をやらせるべきだ」“下野論”まで飛び出す事態に

「いったい、アイツは何を考えているんだよ」

7月23日深夜、自民党の重要閣僚経験者は筆者の取材に対して、吐き捨てるように語った。“アイツ”とは、石破茂総理(68)のことだ。

衆院選、都議選に続き、7月20日投開票の参院選でも歴史的大敗を喫した石破政権。衆院に続き、参院でも与党が過半数を割り込む結果となった。

「自民党大敗は、消費減税などに後ろ向きで、アピール力の乏しい物価高対策に終始した石破総理の責任が極めて大きいです。野党との連携にむけた動きも鈍く、もはや政権を担当する資格はありません。

政権側はアメリカとの関税交渉を、15%の相互関税でまとめたことをアピールしていますが、巨額の対米投資が条件とされるなど決して誇れる内容ではありません」(前出・重要閣僚経験者)

39議席しか取れなかった自民党や、過去最少の8議席だった公明党はもちろん、立憲民主党も改選前と同じ22議席を確保するだけに終わるなど伸び悩んだ。

その半面、国民民主党は野党で比例最多得票を獲得し、参政党はそれに次ぐという躍進ぶりをみせた。要は“既存政党”に対する根強い反発が有権者にあるのだ。

国民民主党の玉木雄一郎代表は7月23日に都内で行われた、政治解説者の篠原文也氏が主宰する「直撃!ニッポン塾」で講演し、「このトレンドは今後も続く。自民と旧民主の対立の時代から、多党制の時代に入った」と指摘した。

日本政治の分岐点に直面し、自民党には解党的出直しが迫られている。しかし、こうした状況にもかかわらず、石破総理は7月21日の会見では「比較第一党の議席を頂戴した」と語り、「米国の関税措置」や「南海トラフ地震の可能性」などを理由に挙げ、続投意欲を明言。

何ら責任をとろうとしない執行部に対して、自民党内からは公然と反発が出た。

自民党青年局の関係者によると、青年局長を務める中曽根康隆衆院議員は25日までに自民党本部に対して、石破首相へ退陣などを求める緊急提言を自民党青年局として申し入れする予定だという。

「昨日、全国の47都道府県の青年局青年部が集まるオンライン会議がありました。石破首相の出身地である鳥取県や、森山幹事長の出身地である鹿児島県は、『すぐには賛成できない』などと難色を示していました。けれども、大多数の都道府県は賛成ということもあり、青年局の総意として、現総理に対して退陣を求めることとなりました。

そこで出た意見として、現総理に対して退陣を求めるものや自民党の組織体制の見直し、なぜ保守層の票が逃げてしまったのかの検証の必要性などがありました。

ここがターニングポイントと考えている青年局の人がほとんどです。このままだと本当に自民党がなくなってしまうくらいの危機感を党全体として持つべきという意見もありました」

また、青年局の申し入れには、こんな記載があったという。

「私たち自民党青年局は、今年、四度にわたり、地域や現場の実情を踏まえた提言を党本部に届けていた。しかし、それらが党運営や政策にどのように反映されたかは一切説明されていない。手応えのないまま今回の参院選を迎えた。

特に10代から40代の若年層の支持離れが顕著であり、現場で何度も警鐘を鳴らしてきたのに、それが無視されたのではないか」

大臣クラスも動き始めている。

河野太郎前デジタル相は党執行部の刷新を求め、各地の自民県連も石破退陣を相次いで要求。

佐藤勉経理局長や萩生田光一元政調会長らからは「野党に政権をやらせるべきだ」という“下野論”まで飛び出した。

「石破退陣を求める党内の声はやむ気配がありません。各社の世論調査でも、石破政権の支持率は20%程度まで落ち込み、もはや退陣は不可避な情勢です。

こうした中、石破総理は23日に党本部で、麻生太郎最高顧問、岸田文雄前総理、菅義偉元総理という総理経験者らと約1時間20分面会。麻生氏は『石破自民党では選挙に勝てない』と最後通告をした。

しかし、石破総理は会談後に『私の出処進退について一切話は出ていない』となぜか強気に言い張り、毎日新聞や読売新聞による退陣報道も否定しました」(政治部記者)

とはいえ、自民党に石破続投を容認するムードは一切なく、もはや退陣は既定路線とされる。7月28日午後に両院議員懇談会が予定されているが、8月後半にも自民党総裁選が行われるのではともささやかれる。

「石破総理は、2007年に第一次安倍政権が参院選で大敗した時には、『やめるべきだ。そうでないと自民党が終わってしまう』と退陣を迫った。2009年にも現職閣僚ながら“麻生おろし”に急先鋒として励んだ。自分だけ責任回避することは許されません」(自民党関係者)

国民民主などを巻き込んだかたちでの連立拡大の議論が本格化か 

“ポスト石破”を巡る議論が本格化する中、前出の自民党の重要閣僚経験者は、こう語った。

「いざ“戦争”をしたら強いのは進次郎だね」

自民党派閥の裏金事件を受け、40人以上のメンバーを抱える麻生派(志公会)は存続しているものの、それ以外の派閥は解消された。派閥談合的な動きがやりにくくなる中での総裁選は「純粋投票」の側面が強くなる。“選挙の顔”として、党内から幅広い支持を得やすいのは小泉氏というわけだ。

政治解説者の篠原文也氏はこう指摘する。

「大事なのは、時代がリーダーをつくるということです。いまは“乱世”ですから、林芳正官房長官や加藤勝信財務相といった実務型の政治家には風が吹きにくい。

その点、リベラル色の強い石破政権で自民党から離れてしまった保守層を取り戻すために、高市氏や小林鷹之元経済安保相という選択肢は当然出てくる。高市氏については女性初の総理になるという点は強みです。前回総裁選で、麻生氏が支援していた点も注目されます。

いっぽうで、劇場型の要素もある小泉氏を、自民党の救世主として求める声も高まるでしょう。農水相として奮闘した小泉氏は、前回総裁選で石破総理を支援した勢力も、乗りやすいです。

いずれにしても、自・公が衆参で過半数を割る時代が、しばらくは続きます。

3年後の参院選で自民は75の改選議員がいますが、それを維持した上で、今回の参院選での負けを取り返すことは困難だとみられているからです。

現状では、野党が一枚岩となり、政権交代を迫ることはハードルが高いとみられている。本格的な予算審議を前に、秋の臨時国会以降は、国民民主などを巻き込んだかたちでの連立拡大の議論が本格化するでしょう。そうすれば、自・公・国の枠組みの中で“玉木総理”といったプランも現実味を帯びる。その意味では、野党が乗りやすいリーダーというのも、次期総裁選の争点になるかもしれません。いずれにしても、次の自民党総裁は難しい舵取りが求められます」

自民党総裁選後には、早期解散があるという見方もくすぶっている。乱世に自民党のリーダーとなるのは誰なのか。自民党は激動の時を迎えている。

取材・文/河野嘉誠 

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