「運営とアイドルの交際はよくあること…」と16歳アイドルに“わいせつ”…逮捕された芸能プロ代表はクレーマー気質、事務所サイトには「私たちに背中を押させて下さい」
「運営とアイドルの交際はよくあること…」と16歳アイドルに“わいせつ”…逮捕された芸能プロ代表はクレーマー気質、事務所サイトには「私たちに背中を押させて下さい」

芸能プロダクションの代表を務める男が、未成年の所属アイドルを相手にわいせつな行為を複数回行なったとして、警視庁少年育成課により児童福祉法違反の疑いで逮捕された。現在20歳の被害女性は「16歳のころからわいせつ行為を受けていた」と相談して発覚。

容疑者宅周辺を取材すると“横暴な横顔”が浮かび上がった。

「真剣な交際のつもりで、立場を利用していない」

9月15日に児童福祉法違反の疑いで逮捕されたのは、東京都豊島区に事務所を構える芸能プロダクション「GO little by little」代表、鳥丸寛士容疑者(39)だ。

社会部記者によれば「被害女性は現在20歳だが、未成年のころから撮影と称してわいせつな行為をされ、つらかった」と訴え、新宿署に相談するまで何年も悩んでいたようだ。社会部記者は続ける。

「被害女性のA子さんは16歳から17歳の当時に『求めに応じなければ今後のアイドル活動は続けることができない』と誤信させ、2021年4月1日から2022年10月21日までの間、東京都内のホテルでわいせつな行為をした疑いで逮捕されました。女性はこれまで黙っていた理由を『アイドル活動が好きで続けたいから、未成年時の代表からのわいせつ行為は黙っておこうと思っていた』と説明しています。女性が従属せざるを得ない状況を悪用した卑劣な犯罪です」

鳥丸容疑者は容疑を認めるいっぽうで、「真剣な交際のつもりで、立場を利用していない」「運営側とアイドルが交際することはよくある」などと供述している。

20歳年下の未成年の女性に対し、恐怖を植えつけ続けてきた鳥丸容疑者。この事務所の所属アイドルを知るカメコ(カメラ小僧。アイドル写真を撮影する人物)歴30年近くのBさんによれば、「被害女性の言い分も容疑者の供述も、地下アイドル界では非常にあり得る話だ」と言う。

「この事務所は芸能プロダクションなどと報じられていますが、実際は地下アイドルよりもさらに下の“地底アイドル”を抱える、認知度は皆無の名もなき事務所です。そういった事務所のアイドルは向上心がある子も多いですが、『運営側の意見は絶対』と思ってしまう傾向が強いのです」

それはなぜなのか。カメコのBさんは続ける。

「実は今回のようなことは、過去にも事件化された事例もあります。私が知っているのは、あるアイドルグループの未成年の女性がマネージャーから受けた200回以上の性的被害を訴えて事件化しました。

しかし、同グループの他のメンバーの女性は『訴えたあの子が悪い』とさえ言うのです。そのグループは訴えた子以外にも未成年時に性的被害に遭っている子もいるようなのですが、被害の自覚がない。表面化されてないだけで類似事件はたくさんあるはずですよ」

鳥丸容疑者の前職は大手通信会社の営業職、芸能界については“素人

今回の被害女性は、「わいせつな行為をされ、つらかった」と訴えているが、そもそもなぜ地下アイドルや地底アイドルたちの事務所で今回のようなわいせつ事件が起こりやすいのか。

レイ法律事務所に所属し、芸能分野の刑事事件を多数扱う弁護士の河西邦剛氏は言う。

「まず芸能プロダクションには設立するのに資格も免許も設備も不要ですから初期費用がかかりません。極端な話ですが、HPや名刺を作って『芸能プロダクションです』と名乗ればその日からなれる。

また、タレントには『売れる』明確な基準がない。運営や制作側のイメージに合うかどうかという非常に曖昧な感覚や好みにより選別が左右されたりするため公平性もありません。そのため男性はもちろん女性も性的に搾取されやすい構図にあります」

実際に鳥丸容疑者の前職は大手通信会社の営業職で、芸能界については“素人”だったと思われる。

河西弁護士によれば「今回のような芸能プロダクションに所属するアイドルまたはアイドル志望の未成年女性や成人女性の性的トラブルは、年間10件ものご相談を受ける」ようだ。

「昨今、大手芸能プロダクションはコンプライアンスが厳しくなっている反面、無名事務所は外部からの目も行き届かないところがあるため、運営側に悪用されやすい一面があります。

まさに今回の事件は氷山の一角に過ぎない。

先ほど説明した初期費用がかからない点も悪意を持ってプロダクションを創設しやすい理由のひとつです。今回のような事件を起こす芸能プロダクションのわりと多いのが事務所スペースを持たない『バーチャルオフィス』というケースです。

法人登記のために必要な住所や電話番号、郵便物の受とりと転送サービスが受けられ、月額1万円以下とオフィスを持つよりかなり低コストで始められるからです」

「GO little by little」のHPに記された事務所も、住所はバーチャルオフィスプランも兼ね備えたレンタルオフィスだった。

レンタルオフィスの受付の担当者に話を聞いた。

「こちらでは現在、こちらのオフィスにいるかいないかだけでそれ以上のことはお答えできません。こちらのオフィスには300社近く登録されているので、住所が利用でき、郵便物を受け取れるバーチャルオフィスプランの会社さんが最も多いですね」

HPに書かれた事務所のビル名は、実際のビル名とは違う名前が記されていた。しかしそのレンタルオフィスのネームプレートには、確かに「GO little by little」のプレートが存在した。

近隣の飲食店の店主「すごい剣幕で怒られました」

鳥丸寛士容疑者が住む自宅マンションも訪ねた。マンション住民は言う。

「奥さんには見えない高齢女性と一緒に住んでいたと思います。高齢男性の姿は見たことがないので二人暮らしだったのかもしれません。

その部屋によく鳥丸容疑者と同じくらいの背丈で恰幅がよく、(容疑者と)同世代くらいの男性が出入りしていました」

近隣の飲食店の店主は、鳥丸容疑者のこんなクレームを受けたことがあった。

「いつも同じ定食を召し上がっていたのですが、ライスが有料化したことと、昨今の材料高騰でおかずが少しだけ減ったことについて、ものすごい剣幕で怒られました。『なんで高くなってこんなに少ねえんだよ!』と。

何度も謝ったのですが収まらなかったのでサービスでおかずを提供したらやっと納得してくれました。しかしそれ以降、ご来店はされませんね。被害女性が僕に怒った時のように怒鳴られていたとしたら、いたたまれません」

また、飲食店の常連客は鳥丸容疑者のことをこう語る。

「数年前、よく同世代で同じように太って背が高い男性と食事に来ていました。その時、テーブルの上に女の子のプロフィール写真を広げながら『こいつはダメだ』などと、女性を明らかに下に見た感じで品評していました。見ていて非常に不快でしたね」

「GO little by little」のHPの代表挨拶には、長文で「アイドル志願」の女性たちに向けたそれらしい言葉が並べられていた。

〈人に影響されず、己の力だけで直進できるのは本当に一握りの人だけでしょう。
では、どうしたら良いか?
私なりの答えになりますが、それは誰かに『本気』で背中を押してもらう事だと思います。
(略)
私たちに背中を押させて下さい。

アイドル活動を真剣に取り組んでいた女性たちの背中を、鳥丸容疑者はどう押したと言うのか。今後の捜査で事件の全容解明が待たれる。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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