日本は過去最大の経常黒字を記録しているにもかかわらず、円安は回復しない。その背景には、海外投資で得た収益が国内に戻らず、そのまま再投資されている構造がある。
新刊『インフレ・円安・バラマキ・国富流出』より一部抜粋・再構成してお届けする。
なぜ経常黒字でも円高にならないのか
2024年1年間の日本の経常黒字額は28.7兆円と過去最大となっています。対名目GDP比で見ても4.5%と、2007年とほぼ同じ程度の高水準の黒字です。ちなみに2025年も今のところ年初からの経常黒字額の合計額は前年同期を上回っていて、過去最大の黒字額を更新する可能性が高そうです。なぜ過去最大の経常黒字なのに円高にならないのでしょうか。
その答えは経常黒字の内訳にあります。日本の経常黒字はすべて第一次所得収支の黒字(2024年は39.7兆円)となっているのです。第一次所得収支の黒字がなければ日本の経常収支は11.0兆円の赤字ということになります。
「第一次所得収支」とは耳慣れない言葉かもしれませんが、「過去に海外に対して行った投資から得られる利益」のことです。通貨が歴史的な水準まで売られたり、賃金水準が2位から24位まで転落したりとあまり良いところがない日本経済ですが、ひとつ、少しだけ誇れるのは、今でも日本は世界で2番目に大きい対外純資産国であるという点です。
少し前まで1位だったのですが、最近ドイツに抜かれました。3位の中国にも迫られていますが、それでも大きな対外純資産国には変わりはありません。
2024年末の対外純資産額は533兆円です。内訳としては、過去に日本の企業が行った海外での工場建設やビジネス関連の投資や、海外企業の買収、日本の投資家が行った海外の債券や株式への投資などがあります。
また、過去の円売り・米ドル買い介入で積み上げてきた外貨準備も含まれます。こうした過去の投資から得られた利益や、クーポン収入、配当金の受け取りなどの合計額が第一次所得収支39.7兆円となります。稼ぎとしては悪くない金額です。
この第一次所得収支の黒字の問題点は、そのかなりの部分が日本に戻ってきていない可能性があるということなのです。つまり、海外での投資残高は大きいのですが、そこで稼いだ収益が海外で再投資されている可能性が高いのです。
つまり、黒字は黒字でも円買いを伴っていない可能性があるということです。39.7兆円のうち、11.6兆円は明確に「再投資収益」とされていて戻ってきていません。他にも「債券利子」が14.5兆円あるのですが、これもかなりの部分は外国債券にそのまま再投資されている可能性が高いと思われます。
そうなると、経常黒字は大幅な黒字でも、そこから発生している円買いはかなり小さく、場合によっては貿易収支、サービス収支、第二次所得収支から発生する円売りの方が大きくなっている可能性さえあると考えられます。
「割安な日本」より「割高な海外」へ向かう日本企業の投資
日本企業は過去の海外投資から得られた収益を海外でそのまま再投資しているだけでなく、新たな海外投資もハイペースで続けています。2024年の「対外直接投資」は28.2兆円と、こちらも過去最高を記録しました。
このうちすべてが円売りにつながるとは限りません。第一次所得収支のところで説明した再投資分も入っていますし、外貨を借り入れて投資している分もあるので、こうした部分は円売りにはつながりません。ただ、正式なデータはないものの、再投資分を除いた金額の半分程度は円売りを伴っていると考えられます。
これは案件ごとに事情がまったく異なるので、正確な数字を把握するのは不可能です。したがって、様々な機会に企業の方にこの点について伺っているのですが、概ね「対外直接投資の半分程度は円売りを伴う」というのは「当たらずとも遠からず」という反応をされます。この後、様々な形で日本からの流出している資金を紹介しますが、おそらく対外直接投資に絡む円売りが最も規模が大きいのではないかと考えられます。
そして、この点が日本経済の現状、今後の課題を考える上で重要なポイントになると思っています。日本の対外直接投資の行き先で圧倒的に多いのが米国なのですが、米国の平均年収は日本の倍以上です。オランダ、英国、オーストラリアの平均年収も日本よりずっと高いです。それではなぜ日本企業は労働コストが割安な日本ではなく、割高な海外への投資を増やし続けているのでしょうか。
日本国内の需要がそもそも弱いということもありますが、国内で生産をして輸出すればよい話です。やはり人手不足が問題なのでしょうか。国内で生産拠点を作りたくても、工場で働く人が確保できなければ意味がないので、海外に出ざるを得ません。おそらく様々な理由があって日本企業がわざわざコストの高い海外に進出しなければならなくなっているのだと思います。そのあたりの原因を根本的なところから改善することができれば、日本経済も強くなれるはずですし、円の価値が下落し続けることもないと思います。
文/佐々木融
『インフレ・円安・バラマキ・国富流出』(日経BP 日本経済新聞出版)
佐々木融
【内容紹介】
円の価値が毀損し続ける中、どのように自分の資産を守るべきか
「いつか円高に戻る」という過去の経験則は通用しない
本書は、為替の第一人者が、円安の根本原因を解き明かし、今後起こりうるシナリオと防衛策を提示する。静かに進行する危機の本質を把握し、インフレの時勢を生き抜くための一冊。
【著者より】
今回の本では、強かった円がなぜ弱くなってしまったのかという構造変化を中心に解説し、今後の見通しについても私の見方をご紹介したいと思います。
「円」という紙切れは今、信用を失い、取り戻せなくなる瀬戸際に立っているような気がします。正直なところ「時既に遅し」と思っているのですが、それでも本書を書くことによって、少しでも多くの人がそれに備えることができればと思っています。
【目次】
第一章 お金、投資、マーケットのそもそも
第二章 なぜ円はこれほどまでに弱くなったのか
第三章 日本政府の借金はなにが問題なのか
第四章 マイナスの実質金利から抜け出せない円
第五章 止められない日本からの資金流出
第六章 失われた30年はなぜ失われたのか——取り戻すために必要なこと

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