ニセコをはじめとする日本の人気リゾート地に、外資系高級ホテルが相次いで進出している。訪れる海外富裕層たちが求める、日本ブランドではカバーしきれない「安心感」「信頼」に応え、彼らが理想とする「何もしない贅沢」をプロデュースできる力が外資系にはあるからだ。
新刊『超富裕層に「おもてなし」はいらない 世界の一流が日本に惹かれる本当の理由』より一部抜粋・再構成してお届けする。
「何もしない贅沢」こそ求めるもの
海外富裕層の大半は、普段は複数の都市部に暮らしながら、経営、投資、社交と国内外を飛び回っている。いろいろな世界を見て回るのは彼ら彼女らにとって「オン」の時間であり、「オフ」はそうした移動や都市の喧騒からログアウトし、家族やパートナー、気の置けない友人たちとただゆったり一つの場所に留まり、お気に入りの美しい雪山や湖畔、ビーチといった自然に癒されながら過ごす時間を大切にする。つまり、「何もしない贅沢」こそ彼ら彼女らが求めているものなのだ。
できればホテルからも一歩も出たくない。だからレストランやバー、スパやプールなどの施設もホテル内に必要だ。スキーやマリンアクティビティをする場合も、スキーインアウトやビーチフロントといった点が重視される訳だ。
こうした機能と格式を備えプライバシーが保たれ、リゾート地にある使い勝手が知れている外資系ラグジュアリーブランドホテルがその選択肢となる訳だ。都会の喧騒から離れゆったり過ごすとなると、都市型観光地がある街よりも、山々や湖に海など大自然に囲まれたリゾート地が選ばれることになる。
外資系ラグジュアリーブランドホテルであるザ・リッツ・カールトンやパーク ハイアットの高級感、安心感、世界中どこにいっても変わらないサービスへの海外富裕層のロイヤルティは高いものがある。「マリオット ボンヴォイ」や「ワールド オブ ハイアット」「ヒルトン・オーナーズ」など会員プログラムによる無料宿泊券や客室のアップグレード、ラウンジ利用サービスなど世界中で利用できる豊富な特典による囲い込みも功を奏している。
日本ブランドではなぜダメなのか
我が国にも帝国ホテル、オークラ東京、ホテルニューオータニの「ホテル御三家」、長野県の上高地帝国ホテル、三重県の志摩観光ホテルといったクラシック・ホテルもある。パレスホテル東京、ザ・キャピトルホテル 東急、箱根町の強羅花壇などに加え、「星のや」や「ふふ」などホスピタリティが魅力のホテルや旅館もある。
こうしたホテルや旅館もミシュランガイドの「ミシュランキー」を得るなど世界的にも評価されている。また最近では日本特有の風情や旅情を理解し、旅館や古民家を好む外国人観光客も増えているのも確かだ。
しかし、海外富裕層やインバウンドにとって、普段使いなれた外資系ラグジュアリーブランドホテルの安心感が勝るケースが圧倒的に多い。勝手のわからない国へ旅行するとき、馴染みのあるブランドホテルはやはり信頼感がある。
マリオットやヒルトンにしか泊まらないと決め込んでいる人も多く、「マリオット ボンヴォイ」や「ヒルトン・オーナーズ」などの上級会員ステータスの獲得や維持のため、マリオットやヒルトンありきで旅行先を決める外国人もいる。
悲しいことではあるが、「日本の地方にはいいホテルがないから行きたくない」と嘆く海外富裕層の声も聞く。スキー場でいえば、志賀高原や野沢温泉、蔵王温泉などは、ニセコや白馬に匹敵、時に凌駕するようなスケールや景観および雪質を有しているものの、エクスペディアなどホテル予約サイトで検索しても「馴染みの」ホテルを見つけられない。旅行先の選択肢から外れる一因になってしまう。
なぜ、「おもてなし」に優れた日本のホテルや旅館よりも、外資系高級ブランドホテルが優先して選択されているのだろうか。それは海外富裕層を含むインバウンドが日本独自のサービスではなく、グローバル・スタンダードなサービスを求めているからだ。前述した「何もしない贅沢」など、海外富裕層のニーズを的確につかむことが必要不可欠だ。
アスペンやクールシュベル、ハワイやモルディブ、コートダジュールなど並み居る世界的な観光地・リゾート地は、こうした顧客のニーズを的確に捉えるノウハウがある。
外資系の資本力とリスクを取る経営
日本企業においても、東京証券取引所からのPBR改善要請、「物言う株主」であるアクティビストの台頭などを背景に、「資本コストや株価を意識した経営」に変わりつつある。しかしながら、相場が下落すると一斉に保有資産を損切り、景気が下向くと一斉に投資計画を中止し、思考停止してしまう、リスク回避志向のサラリーマン経営的な日本の機関投資家や上場事業会社がまだまだ多い印象だ。
それは一方で、「資本コストや株価を意識した経営」が浸透しており、ビジネスライクにリスクを取りながら最大限のリターンを得るため、プロフェッショナルな経営に徹する海外の投資家や事業会社にとって、相場の下落局面や不景気は、むしろ絶好の買い場であり、開発を進めるチャンス、と見るのだ。
そのぶん、経営責任が重くシビアな人員整理もある世界ではあるが、決断力(権限移譲と相応の報酬と責任)と資金力にも裏付けされており、外資と日本との経営思考や組織の差異が如実に表れているといえよう。
「この先更に景気が悪くなったらどうしよう」「もし、金利が高騰したらどうしよう」などとリスク要因を挙げていけばキリがない。価格変動リスク、インフレリスク、景気リスク、為替リスク、地政学リスク、地震や自然災害のリスク、クレジットリスク、流動性リスク、税務リスクなどなど。
釈迦に説法であるが、投資や開発においてリターンがあれば、当然それ相応のリスクもある。それを認識した上で最善策を決断するのがプロフェッショナルな投資行動であり、失敗もあるものの、海外投資家や富裕層はそれを理解し実践している。
所在地に強みあり
なぜ、一泊何十万円もするホテルが増えているのだろうか。
前述のとおり、政府は2030年に6000万人のインバウンドを獲得する目標を掲げている。国際的な知名度のあるマリオットやヒルトンなどの最高級ブランドホテルがあれば、旅先としての信頼感は高い。また、再開発や国際化を進める地元自治体などの思惑もある。世界的な国際会議や見本市、スポーツイベントなどの誘致活動において、知名度がある外資系高級ブランドホテルの存在は大きな決め手になる。
東京、京都、ニセコなど、外資系高級ブランドホテルがある都市やリゾート地は、この先も生き残る可能性が高いと筆者は考える。こうしたホテルは、しがらみや先入観なく、単純にグローバルな視点から①ビジネスとして採算がとれるのか、②成長性はあるのか、③運営委託方式でリスク回避、④自社ブランドに貢献するのか、といった合理的な観点から立地や投資が選ばれているはずだからだ。
マリオットなど米系大手3社は、世界最大のニューヨーク証券取引所やナスダック市場に上場している。エヌビディアやマイクロソフト、アルファベットといった他の上場企業と同じように、①資本コスト、②株価向上、③ガバナンスを常に意識しており、売上高、最終利益、ROEやPBRはもちろん、客室稼働率、客室価格、客室平均単価、収益力の目安となる「1部屋あたりの売上高」などを重視して、日々、世界中の投資家の目線に晒されながら、株価と時価総額を意識した経営がなされている。
「外資系高級ブランドホテル進出」というシンボリックな大型開発が進行中であること。これは、国内外の多くの事業者・投資家が安心して事業継続や不動産投資を行うことができるエリアであることを示していると言える。
一般に、外資系ラグジュアリーブランドホテルがある地は、別荘やコンドミニアム、セカンドハウスのニーズも高く、かつ地価の上昇も続いているため、国内外の富裕層から投資対象として売買されるケースも多い。こうした状況が更なる不動産価値の上昇を生み、ブランド化を推し進めるという好循環を生むことにもなる。
文/高橋克英
『超富裕層に「おもてなし」はいらない 世界の一流が日本に惹かれる本当の理由』(講談社)
高橋克英
日本随一のスキーリゾート地としてその地を確固たるものにする北海道・ニセコ。日本全国のリゾートでは「第二のニセコ」を目指し、各地で開発競争を行っているーー。なぜ国内外の富裕層はリゾートを求め、投資や消費を繰り返すのか。その背景には、金融政策やAI時代の幕開けによる「世界的なカネ余り」と「退屈なひまな社会」の到来がある。
本書では白馬、石垣島など話題のリゾートの現況や世界的ブランド「ルイ・ヴィトン」が日本に進出する理由などを事例に、「富裕層はどういう性格をしているのか」「富裕層はどういう場所・モノ・コトにお金を落とすのか」を読み解いていく。ロングセラー『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか 「地方創生」「観光立国」の無残な結末』の著者・高橋克英氏が、富裕層との実際のやりとりやリゾートでのヒアリングをベースに分析した一冊。
目次
はじめに 「富裕層の性格」を理解することの大切さ
第1章 依然としてニセコが国内ナンバーワンリゾートに
第2章 世界的な「カネ余り」と「退屈でひまな時代」の到来
第3章 ニセコの発展でわかった「世界的リゾート」になる条件
第4章 進む「東京一極集中」と地方の選別
第5章 「ルイ・ヴィトン」が先導する勝ち組・負け組都市
第6章 富裕層を虜にする「ブランデッド・レジデンス」錬金術
第7章 なぜ富裕層は「外資系高級ブランドホテル」をベンチマークにするのか
第8章「NOT A HOTEL」が富裕層を惹きつけるカラクリ
第9章 実は富裕層とタワマンは相性が悪い
第10章 海外富裕層に「おもてなし」は不要
終章 富裕層から学ぶ「投資の鉄則」

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