高い支持率を維持する高市早苗政権だが、一方で「ハリボテ政権」と揶揄する声も上がる。経済学者の竹中平蔵氏は「支持率の高さに胡坐をかき、本当に打破すべき岩盤規制には手を出さない。
政権中枢のマネジメントがうまく機能していない証左
現在、高市政権は高い支持率を維持していますが、その実態を深く観察すると、私は非常に強い危惧を抱かざるを得ません。最近、一部の厳しい見方をする人々の間で、今の政権を指して「ハリボテ政権」と揶揄するような声が聞こえてくるようになりました。
「ハリボテ」とはどういうことか。それは、外見としての支持率は依然として高く立派に見えるものの、政策の中身が伴っておらず、何より首相を支える側近やスタッフの陣容が充実していないという批判です。
実際、国会運営のあり方ひとつとっても、政権の取り巻きが機能していないのか、衆議院で不必要に強引な進め方をして反発を招き、結果として参議院で予算や法案の審議がつまずくといった事態が起きています。
これは政権中枢のマネジメントがうまく機能していない証左でもあります。報道ベースの話ではありますが、首相本人もこうした状況に強い不満を抱いていると聞きます。
明確なビジョンが見えてこない
選挙で勝ち、高い支持率を得ている状態というのは、政治学的に言えば強大な「ポリティカル・キャピタル(政治的資本)」を持っている状態です。国民は、このせっかくのポリティカル・キャピタルを無駄に浪費するのではなく、日本が抱える本質的な課題を解決するために上手く使ってほしいと願っているはずです。
かつての小泉純一郎政権も、圧倒的な支持率というポリティカル・キャピタルを背景に、豪腕を振るって構造改革を進めました。そこには「これを成し遂げる」という明確な目的がありました。
しかし、今の高市政権からは、その巨大な政治的資本を使って「一体何を壊し、何を創ろうとしているのか」という明確なビジョンが見えてこないのです。
私が今の政権に、そのポリティカル・キャピタルを注ぎ込んででも真っ先に正してほしいと考えている課題があります。
移民の法的枠組みを作り、正面から受け入れるべき
3大悪政の1つ目は、「ライドシェアを一切認めていないこと」です。
これは単なる交通政策の遅れにとどまらず、地方に住む人々に深刻な迷惑をかけています。現在、東京でタクシーに乗ると、地方から出稼ぎに来ているドライバーに当たることがよくあります。
東京の方が稼ぎが良いからと、地方の貴重な働き手が吸い上げられているのです。彼らは東京の地理に明るくないためサービス低下を招き、同時に地方では致命的な運転手不足が進行するという悪循環に陥っています。
それにもかかわらず、タクシー業界の既得権益に慮り、世界中で当たり前になっているライドシェアをいまだに解禁できない。これは明確な政策の失敗です。
2つ目は、「きちんとした移民法を制定していないこと」です。
日本は「移民政策はとらない」と建前では言いながら、現実にはなし崩し的に外国人労働者を受け入れています。明確なルールや理念のない受け入れを行っているため、地域社会で摩擦が生じ、外国人に対する不必要な反発ばかりが目立つようになっています。
現実問題として、日本の経済社会はすでに外国人労働者なしでは回らなくなっています。
一時的な労働者でない場合は、アメリカやドイツなどの先進国では当たり前に行われている「市民権テスト」のような制度を導入し、少なくとも義務教育レベルの知識や語学力、建国の歴史や理念を理解しているかを確認した上で、責任を持って社会に迎え入れる。そうした真っ当な移民制度から逃げ続けている現状は是正されなければなりません。
そして3つ目が「減反政策」です。農業の競争力を削ぎ、補助金漬けの体質を生み出したこの政策も、見直すべき大悪業の一つです。
これら3つの問題の根が深いのは、自民党政権だけでなく、野党もメディアも本気で追及しようとしない点にあります。野党も地方のタクシー業界や農業団体の影響を受けているため厳しく踏み込めず、メディアも事の本質を報じません。
だからこそ、今のようなポリティカル・キャピタルを持った政権にしか、この状況は打破できないのですが、政権の関心はそこにはないようです。
マーケットは明確な警告を発している
高市政権の看板政策の一つに「責任ある積極財政」という言葉があります。ですが、今のところその具体的な中身は見えません。政権の取り巻きの中には「とにかく財政規模を大きくすればすべて上手くいく」と主張する極端な意見を持つ人々がいます。
しかし、現実は彼らの思い通りには動きません。マーケットは明確な警告を発しています。
首相の所信表明や施政方針演説を聞いても、言っていることの整合性が取れていません。「無茶な財政運営はしない」「市場の信頼を損ねるようなことはしない」と言いつつ、積極財政を掲げる。
片山さつき氏の財政演説に至っては、「積極財政とはやたらに規模を大きくすることではない」と述べています。では、一体どうするつもりなのでしょうか。
彼らが持ち出す政策の一つが「複数年予算でやります」というものです。日本の国家予算は憲法と財政法の規定により単年度主義が原則です。それを無理やり「複数年度でやる」と言い張るための便法として使われるのが「基金」を積むという手法です。
しかし、基金化は財政の透明性を著しく損ない、非常に非効率な資金の滞留を生む最悪の手法です。あるいは「何年計画を作ります」と言いますが、そんな計画は状況が変わればすぐに反故にされるのがオチです。
「補正予算ではなく本予算でやる」という主張にしても、小泉内閣の時には当たり前にやっており、その後崩れてしまった規律を戻すだけの話に過ぎません。要するに、「責任ある積極財政」の目新しい実態はまだ見えていないのです。
経済政策や産業政策の内容が軽すぎる問題
高市政権のコアな支持層は、タカ派的でやや右派的な変化を求めていたはずです。
安全保障の面では、情報局の創設や防衛費の増額、防衛産業の強化、防衛装備移転三原則の改定など、彼らが喜ぶような動きを見せています。個人的には、これらの政策には大賛成です。
しかし、冷静に世界情勢を見渡せば、帝国主義的な覇権争いが激化する現在において、防衛力の強化は「そうせざるを得ない」という外圧の産物であり、強大なポリティカル・リーダーでなくても進められる既定路線です。
現代において、国の経済力は外交や防衛における重要な武器の一つです。経済基盤を強くしなければ、いかなる安全保障政策も砂上の楼閣に過ぎません。しかし、現在の政府が打ち出している経済政策や産業政策は、内容が軽すぎます。
「一体何が変わったのか」「期待外れだった」と気づくことに
例えばAI・半導体分野への投資戦略を見ても、支援対象を17業種にも広げ、満遍なく資金をばらまこうとしている。これはかつての通産省の産業構造審議会が音頭を取っていたような、各業界への財政支援と変わりません。
さらに不可解なのは、日本経済の大黒柱である自動車産業が、その支援対象の枠組みから外されていることです。なぜ日本の主力産業である自動車が外されたのか。はっきり言えば、経産省などの官僚から見て、巨大産業である自動車業界が「言うことを聞かないから」でしょう。
官僚がコントロールしやすい、あるいは顔色を窺ってくれる業界にだけ予算をつけ、本当に国力を牽引すべき基幹産業を軽視する。
支持率の高さに胡坐をかき、本当に打破すべき岩盤規制には手を出さない。これでは、いずれ国民は「一体何が変わったのか」「期待外れだった」と気づくことになります。
ポリティカル・キャピタルが尽きる前に、見せかけではない「本当の改革の姿」を国民に提示できるかどうかが、この政権の命運を分けるでしょう。
文/竹中平蔵 写真/shutterstock

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