≪磐越道バス暴走事故≫「安くしろと言われた」VS「そんな話はない」…違法やコンプラ無視の疑いが続々発覚したバス会社と高校の呆れた会見「悲惨な事故、知らないじゃ済まない」
≪磐越道バス暴走事故≫「安くしろと言われた」VS「そんな話はない」…違法やコンプラ無視の疑いが続々発覚したバス会社と高校の呆れた会見「悲惨な事故、知らないじゃ済まない」

福島県郡山市の磐越道で新潟県の私立北越高校の男子ソフトテニス部員を乗せたマイクロバスがガードレールに衝突し21人が死傷した事故。この事故をめぐって、北越⾼と、同校がバスの手配を依頼したとする運行会社の間で、杜撰な運行実態の責任について対立が起きている。

双方とも法律違反やコンプライアンス無視が過去にもあったことが疑われ、高校生のクラブ活動がこれほどいい加減で危険な環境の中で行なわれていたのかと衝撃が広がっている。

「あーそうですか。運転する人がみんな手続きに行くってことなんですかね」

6日朝、新潟市の北越高校から福島県富岡町へ向かっていたバスが道路左脇に突っ込む事故が発生した。ガードレールが車体を貫通し、バス後部の壁を破壊。そこから車外へ放り出されたとみられる同校3年の稲垣尋斗(ひろと)さん(17)が死亡した。

福島県警は7日に過失運転致死傷容疑で、運転していた新潟県胎内市の若山哲夫容疑者(68)を逮捕した。容疑者は「90キロから100キロほど出していた。曲がり切れなかった」と供述している。

現場は制限時速80キロの緩いカーブで、現場にブレーキ痕はなかったが、容疑者は逮捕前のTBSの取材に対し居眠りを否定。逮捕前、病院から警察へ向かった若山容疑者は、歩行が不自由な様子で、正常な運転ができる身体機能があるのかという疑いの声もあがった。

問題は若山容疑者が、北越高がバスによる送迎を依頼したと主張する蒲原鉄道(新潟県五泉市)のドライバーではなく、バスも同社の車ではなかったことだ。6日夜、同社の茂野一弘社長は、自分たちは運行の“仲介”をしただけだと記者団に説明した。

「今回は貸切バスを使わずにレンタカーを使って送迎したいというお話をいただいた。ドライバーのほうも紹介いただけないかということだった。普段からお世話になっておりましたのでレンタカーの手配と、営業担当の方から運転できる人間を紹介して今回の営業に至ったと」(茂野社長)

会見では、若山容疑者が同社営業担当者の「知人の知人」であり、茂野社長は容疑者の健康状態や過去の運転歴も「まったく把握していない」と言い始めた。

一方、茂野社長の会見に同席した貸切バス予約センター営業担当・金子賢二氏は、自分がレンタカー会社に免許を提示してマイクロバスを借り出し、事故当日の朝に車を若山容疑者に渡したと驚くような発言をした。

「使用者を偽ってレンタカーを借り出せば詐欺罪に問われる可能性もあります。そのため記者からレンタカーを運転できるのは免許を示して借りた人だけだという指摘が出ました。

すると金子氏は『あーそうですか。運転する人がみんな手続きに行くってことなんですかね。すみません、申し訳ありません。初めて知りました』と軽く答えたんです。あまりの態度に記者から『悲惨な事故が起きている。知らないじゃ済まない』と叱責される始末でした」(社会部記者)

バス会社は長い付き合いでの“サービスの一環”だと主張

金子氏は、北越高側から「安いものを探してよ」と言われ、レンタカーにたどり着いたと説明。茂野社長は「会社として全面的に協力して引き受けるということではなく、あくまでご依頼があったのでお手伝いをしたという形です」と話し、今回学校から報酬は受ける約束はなく、長い付き合いでの“サービスの一環”だと主張した。

つまり蒲原鉄道は、運転技術や健康状態も不明な面識もない人間を、高校生を乗せて高速を走るバスの運転手として手配し、さらにはレンタカー会社との貸出契約に違反して借り出したバスをつけて提供したことになる。

その若山容疑者は大型一種免許は持つものの、客を運送して対価を得る場合に必要な二種免許は持っていなかった。もし報酬の約束があって運転していれば、道路運送法違反の「白バス(白ナンバーバス)」営業だった疑いが出てくると福島県警はみている。

若山容疑者に報酬が支払われるのかどうかについても茂野社長は、「確認もしていません」と話し、金子氏も学校から弁当代などの名目で「何らかの金銭」が支払われるのではないかと言うだけでほとんど当事者としての説明ができていない。

いっぽうの北越高は7日夜に開いた記者会見で、灰野正宏校長が“無償のサービス仲介”だったとの蒲原鉄道の主張を真っ向から否定した。

「男子ソフトテニス部顧問は4月上旬に蒲原鉄道の営業担当者に人数、発着時間、行き先などを伝えた上で貸切バスの手配を依頼し、いつも通り遠征が終了した後で全体の旅費に対して蒲原鉄道に後日代金を支払うこととしておりました。

業者側(蒲原鉄道)の会見で『北越高校がレンタカーの手配を依頼した』『北越高校で運転できる者がいないので運転手の依頼もあった』といった発言がなされておりますが、顧問によれば、全体の行程や人数などを伝えるという形でバスの手配をお願いしており、こうした発言はしていないということを確認しております」(灰野校長)

学校側から「安いものを求められた」との蒲原鉄道の金子氏の主張に対しても「実際はそういった話はございません」と断言。その理由を「私どもは当然、クオリティ(が維持された形)でバスの運行お願いをするという前提にありますので」と主張した。

「バスを利用する場合に書面を取り交わすということはしていない」

だが、そうした正式な発注をしたというのなら契約書や見積書はどうなっていたのかという質問が出ると、灰野校長の話は途端に迷走を始めた。

「実は(会見直前に行なわれた保護者会でも)ご指摘いただいた部分ではあるんですけれども、遠征等でバスを利用する場合に書面を取り交わすということはしていないという風にしております」(灰野校長)

契約書がなければ金額をどうするのかと問われると、

「大体同じ場所、近い場所に行くといくらぐらいというふうな過去(の事例)をふまえて大体今回もこれぐらいだろうということで、お金の部分で細かい詰めとかせずに、人数、場所、行き先等をこうするのでお願いしますという形でやっていたということのようです」(灰野校長)

結局学校は、今回のソフトテニス部の遠征の予算がいくらなのかも示せなかった。運行の“クオリティ”を求めると言いながら、部の顧問は予算も決めずに発注し、バス会社の制服も着ずに現れた若山容疑者が運転してきた、レンタカーであることが一目瞭然の「わ」の文字がある白ナンバーのバスに生徒らを乗せていたことになる。

若山容疑者は逮捕直前のTBSの取材で、これまで他の高校の引率をしたことがあるのか聞かれ「自分が引き受けたところではありました」と答えている。

蒲原鉄道が今回初めて若山容疑者に仕事を回したというのなら、容疑者は以前に別のバス会社を通じて同じことを行なっていた可能性もある。高校生の命を乗せて走るバスの「闇」はどこまで広がっているのか。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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