≪“白バス”暴走事故≫「会計担当は別にいた」と訴えていた部活顧問は事件後にボロボロ泣いて…「遠征での事故は珍しくない」顧問の過重労働と費用問題も
≪“白バス”暴走事故≫「会計担当は別にいた」と訴えていた部活顧問は事件後にボロボロ泣いて…「遠征での事故は珍しくない」顧問の過重労働と費用問題も

練習試合のため移動していた私立北越高校(新潟市)の生徒1人が亡くなった、磐越道のマイクロバス事故。学校とバス会社「蒲原鉄道」(新潟県五泉市)の不透明な契約の末に、常習的に事故を起こしていた問題ドライバーがハンドルを握ったことで悲劇は起きた。

クラブ活動の移動では顧問や保護者が運転する車が事故を起こすことも多いと関係者は指摘する。

「ケーキ屋でケーキ買うのに、わざわざ調理人をチェックしろとはならない」

今月6日に事故を起こしたマイクロバスを手配した蒲原鉄道は「高校から貸切バスでなくレンタカーを使い、ドライバーも紹介してほしいと依頼された」と主張している。

そして福島県警が過失運転致死傷容疑で逮捕した無職・若⼭哲夫容疑者(68)を知人に紹介された蒲原鉄道の営業担当・金子賢二氏が、男子ソフトテニス部員20人が乗るマイクロバスの運転席に容疑者を座らせたことで大事故につながった。

若山容疑者は以前から交通事故を繰り返してきた危険ドライバーだったが、金子氏は運転歴や病歴の確認はしていなかった。

いっぽう北越高校は、「運転手つきのバスを頼んだのであって、レンタカーや外部ドライバーの手配を頼んだわけではない」という主張を続けている。

しかし10日の記者会見で、部顧問の寺尾宏治氏は、昨年度に蒲原鉄道に発注した12件の請求書のうち3枚に「レンタカー代、人件費」と書かれたものがあったと明かし、「それをちゃんと確認せずに私からは会計担当者の方に渡してしまい見逃していた」と説明した。

「白バス」運行の疑いをうかがわせる請求書を受け取っていた学校が「見逃していたと言い切れるのか」という疑問が出る中、寺尾顧問と事故後にも会っている近い知人が取材に応じた。

「実は男子ソフトテニス部には顧問が別に2人いるんです。ただ実際は学校が当てはめた形式的な顧問なんですよね。だから指導はしないし、土日や休日に活動に付き合うのは嫌がるんですよ。家庭もあったりで。それで彼(寺尾顧問)は1人で遠征に付き合っていました。

だから他の人(顧問)たちは『じゃあ会計は全部やりますよ』ということになって、彼は請求書の中身を見ることもなくそのまま会計担当の顧問たちに渡していたんだと言ってました。

なので運転手の免許証やナンバーチェックをしないのかと言われればそうなんですけど、バス会社に頼んだバスが来たら何の疑いもなく乗ると思うんですよね。ケーキ屋でケーキ買うのに、わざわざ調理人を必ずチェックしろとはならないじゃないですか…」(寺尾教諭と親しい知人)

亡くなった稲垣尋⽃君は「部の雰囲気を盛り上げてくれた」

だがこの説明の通りだとしても、学校が「頼んでいない」と言う外部運転手による運転の形跡があったことを見逃していたとの指摘は免れない。

「言動がおかしかった」と周辺の人が声をそろえる若山容疑者に出発前に会った寺尾顧問は、その異変を感じとれず、バスにも同乗しなかったため、生徒たちが感じていた異常な運転にも気づかなかった。事故を防ぐ最後の機会が失われたと言える。

「彼(寺尾顧問)とは事故後に一回だけ会いました。亡くなった稲垣尋⽃(ひろと)君がとてもいい子で、『部の雰囲気を盛り上げてくれて、それでみんなが強くなったんだ』と言ってボロボロ泣いてました」(知人)

いっぽう、10日の会見で寺尾顧問は、3年前に北海道で行なわれたインターハイの際、部員を乗せたワゴン車で会場を向かっている最中に、自分自身も自損事故を起こしたことを明らかにしている。これについて前出の知人が証言する。

「あの時、彼は体調が最悪でしたが他に運転する人もいないので、フラフラになって車を運転して事故を起こし、本人も腕を骨折するか何かのけがをしてます。それで病院で治療を受ける時にコロナに感染していることがわかったんです」

体調が悪い中で生徒を乗せて運転していたことは、生徒が以前にも危険な状態にあったという疑いが浮上する。こうした形で生徒が危険にさらされていることは、「全国どこでも起きている問題」との指摘もある。

他県で高体連代表まで務めた教員は、

「具体的な例は言えませんが、遠征で監督が自ら運転することや事故を起こすことは珍しくないです。大小問わずどこの監督も普通に経験していることなんじゃないでしょうか」

と漏らした。

「そういう事故を起こしても、結局学校や教育委員会も誰もかばってくれません。

監督や顧問が最高責任者として一人で背負わなければいけないのです」

とも話す。

また当の蒲原鉄道の関係者も、

「2009年に大分県の大分自動車道で私立高校野球部のバスが横転し、生徒1人が死亡、42人が負傷した事故があり、運転していた教員が逮捕されました。その事故以降、学校行事では緑ナンバー(営業用バス)を使うという動きが広がりましたが、そういった意識がまた薄れていったんです」

と話す。

金子氏と寺尾顧問の関係は?

緑ナンバーのバスを使う意識が薄れていった背景には、バス料金の上昇があったとみられる。寺尾顧問も、今回のバスの注文でレンタカーや外部の運転手の手配を依頼したことはない、と主張するが、3年以上前に蒲原鉄道の金子氏に「高くなったよね」と話をした記憶があるという。

事故への懸念からクラブの移動時に営業用バス利用の動きが広まったものの、予算に制約がある中でバス料金が上がり、全国のクラブ活動の現場では費用とマンパワーと事故のリスクを考えながら移動手段を選んでいる実態があるとみられる。

10日の会見で、バスを依頼したはずなのにレンタカーを手配されたと主張した寺尾顧問に対し、集英社オンラインが「蒲原鉄道の金子氏に裏切られたという思いか?」とたずねると、寺尾顧問は苦渋の表情を見せながらも金子氏を非難しなかった。

「金子さんには融通をきかせてもらっていて信頼し、わがままを言わせていただいたようなところもあるんですよね。ですので感謝してる思いはすごくあります。今回こういう事故に繋がってしまったのは非常に残念です。

もしかすると金子さん的には、少しでも安く済ませた方が寺尾が喜ぶんじゃないかと思った可能性もありますし、非常に複雑ではあります」

常習的に危険運転をしていたという若山容疑者に運転をさせるという、杜撰な発注がなぜ起きたのか。安全な部活動の体制を立て直すためにも、何が問題だったのかの徹底した究明が求められる。

※「集英社オンライン」では、今回の事故にまつわる情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。
                                    
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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