「山田孝之のおかげで生き生きできた」ムロツヨシが語る盟友への信頼。貫き続けた俳優としての「真逆の美学」
「山田孝之のおかげで生き生きできた」ムロツヨシが語る盟友への信頼。貫き続けた俳優としての「真逆の美学」

ムロツヨシが主演を務める『ドラフトキング』の続編となる連続ドラマW-30『ドラフトキング -BORDER LINE-』(WOWOW)が、スタートした。本作は、現在も「グランドジャンプ」で連載されている同名漫画の実写化。

コメディタッチな役柄からシリアスな役まで幅広い表情を魅せるムロが明かす、俳優としての想い。そしてムロに影響を与えた俳優とは――。(前後編の後編)

ムロツヨシから見た山田孝之小栗旬

ムロツヨシと言えば、いまや押しも押されもせぬ、日本を代表する俳優の1人だ。だが、『勇者ヨシヒコシリーズ』などでブレイクを果たすまでに、長い下積み生活が続いたのは有名な話だ。

実は、これまでムロの主演作の続編制作はあまり多くない。『ドラフトキング』には並々ならぬ思い入れがあり、さらにその続編が制作されるということで喜びもひとしおだという。

――主演作の続編が制作されるのは、やはり役者としてうれしいものですか。

ムロツヨシ(以下、同) そうですね、やはり嬉しいです。もちろん監督、プロデューサーをはじめスタッフのみなさんが良かったということでもありますが、俳優部の座長として、結果を残せたことは嬉しかったです。WOWOWさんや他の配信プラットホームで前作を見ていただいた方から「続編を楽しみにしている」という声がたくさん届くとやりがいになりますね。

――これまでに共演されたなかで、「座長としてこの人はプロフェッショナルだ」と感じた方、もしくはムロさんに影響を与えた座長はいますか?

いろんな座長がいましたけどね。やっぱり1番長く座長としての姿をそばで見てきたのは、全く僕とタイプが違いますけど、『山田孝之』ですかね。

僕が7つぐらいかな、歳が上ですけども、座長である彼の何か手助けができることはないかという経験も積ませてもらったので。

それは彼が弱いという意味ではなく、“一緒に作る”という意味でです。

彼が座長でいてくれたことで、僕はお芝居を生き生きとできる場所が得られました。そんな信頼関係を築けたという意味でも、彼と一緒に芝居をできたあの時間は貴重だったなと思います。

――山田さんとムロさんのスタイルの違いはどこにありますか?

僕は言葉として伝えてしまうというか。山田くんに関しては背中を見せる、行動で見せるタイプです。その違いを多分、お互い認め合っていると思うんですよね。違いがあるから良いんだというところもあります。

もう1人、これも年下になってしまいますけれども、『小栗旬』という男もそばで見てきました。彼らとは、仕事以外でも話す時間があるからこそ、それぞれの仕事への姿勢や考え方をたくさん見させてもらっています。

「僕らは“でんでん教”なんです」

『ドラフトキング』は、高校生・大学生などプロを目指す若い世代のエピソードが多い一方で、郷原をはじめとするスカウト陣、そして高校や大学、社会人チームで選手の育成に力を注ぐコーチ陣がそれぞれの想いをもって仕事と向き合う姿も描かれる。

郷原の同僚である元プロ選手のスカウト・神木良輔を演じる宮沢氷魚をはじめ、でんでん、伊武雅刀上地雄輔三浦貴大、平山祐介、藤間爽子、川久保拓司、阪田マサノブといった、実力派俳優陣の演技も見どころの1つだ。

――この作品は、いろんな選手やスカウトマンが登場し、それぞれの考えるプロフェッショナルを貫きます。俳優という仕事において、ムロさんはどのような“プロ”であるべきだと考えていますか。

変な話ですけど、常にアマチュアであるべきと思います。何か1つを極めることがプロであるという意識の方もいますけど、僕は結局アマチュアで、「人前に立つということは怖い」としっかり自分に言い聞かせながら常にカメラの前に立っています。

――今回の撮影中に印象的に残った裏話や思い出はありますか。

前作のときから思っているんですけれど、私たち(俳優の)世界の大先輩であるでんでんさんは、セリフ合わせをしているだけで楽しくなる方。自分は「この芝居という世界じゃなきゃ、もう無理だろうな」と思うのですが、でんでんさんはそれ以上に芝居を好きでいらっしゃる。

でんでんさんとのセリフ合わせやシーンを作っている時間は、本当に勉強になることが多いんです。いろんなことを試されるんですよ。

(ドラマの流れを考えて)「こうしていいか?」って提案したり。僕もでんでんさんと同じ世代になった時に、そういうことをできているようになりたいという目標を1つもらいました。

宮沢氷魚くんともこの話を共有していますし、でんでんさんのすごさを若い世代にも一緒に伝えていこうと話しています。もう僕らは“でんでん教”なんです。

「お前の野心は綺麗だ」

数々の苦労を経験しながらも、俳優としての成功をつかんだムロ。

彼には、郷原のように導いてくれた存在はいたのだろうか。

――ドラマでは様々な印象的なセリフがでてきます。ムロさんご自身が、これまでの俳優人生で背中を押された言葉や大事にしている言葉はありますか。

たくさんありますけど、やっぱり最初にいただいたのは、柄本明さんの「君は間違ってないけど、時間がかかるぞ」という言葉ですね。柄本さんはもう忘れたって言っていますけど(笑)、『東京乾電池』という劇団に関わらせてもらった時にいただきました。

「間違ってないことはやっているんだな」と思えたことで、その後、自分の意思で東京乾電池から離れるんです。誰かが作った劇団の場所にいるよりは、「自分で舞台を作ろう」と。

本当にね、予言通り時間はかかりました(笑)。時間かかりましたけど、なんとか今、こうして皆さんの前で話をできています。

本広克行監督の「お前の野心は綺麗だ」という言葉もそうですね。あれは僕が26歳の時だから、今から24年前ですね。サッカーの本田圭佑さんのように行動と結果で信頼を勝ち取っていた時代。

「使ってください」とか「売れたい」などと自ら言うのがダサいというか、そういうことを言わずに結果を出す美学があったんですよね。

そんななか、僕は「使ってください」って言っていたんですよ、いろんな人に。すると、「誰にでも言っていて安いな」みたいことを言われて。

でも本広さんは、「全員にそこまで言うやつはいなかったから、お前の野心に乗ってみる」って言っていただいて。「綺麗だ」というのは、本広さんから「このエピソードを使うなら、うまいこと言った風にしろ」と言われ、加わりました(笑)。でも、「そこまで言うんだったら、じゃあその野心に1回乗ってみる」といっていただいたのはやっぱり嬉しかったです。

「時間はかかるぞ」と予言されたあの日から20余年、数々の縁を力に変えてきたムロツヨシが見せる背中は、どこまでも美しく、そして逞しい。かつて抱いた泥臭い野心さえも品格に変えた彼の第二章はまだ始まったばかり。独自の哲学を胸に、今日もカメラの前に立つ――。

取材・文/羽田健治

撮影/廣瀬靖士

ヘアメイク・池田真希

スタイリスト・森川 雅代

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