「みんなが旬のことで生きているわけではない」黒夢・清春がたどり着いた“新しい曲をやる意味がない”の境地
「みんなが旬のことで生きているわけではない」黒夢・清春がたどり着いた“新しい曲をやる意味がない”の境地

20代で駆け抜けた黒夢を、50代になった清春と人時は今どう見つめているのか。若い世代との距離感、今の流行りの音楽について、そして黒夢を支える人時の存在。

黒夢が50代でたどり着いた一つの答えとは。(前後編の後編)

「変に気を遣われるのも嫌ですし」フェスでの50代らしい立ち居振る舞い

――アルバムをリリースした1997年、98年当時は、お二人とも20代でした。今は50代になられたわけですが、当時思い描いていた50代の感覚と、今の自分は重なりますか。

清春:去年フェスなどに出て若い世代を感じると、僕らも当時はその立場にいたわけで、上が「こう見えるのか」という感覚はありますね。でも、本当に時間が経っただけなんですよね。年齢的には大人にはなったんですけど、普通の人よりは大人になっていない(笑)。

だから今でも、下の世代の子たちと話す機会があれば割と話せるんだと思います。でも、フェスの打ち上げには行かないようにしていますけど(笑)。

――えっ、行かないようにしているんですか(笑)。

清春:変に気を遣ってもらうのも嫌ですし。フェスにはフェスのしきたりみたいなものもあるでしょうから、僕らが「あ、行きますよ!」みたいな感じで入っていかない方がいいのかなと。

当時、大阪かどこかで、宇崎竜童さんがいらっしゃるイベントがあったんですけど、そういう偉い人や年上の方たちが「疲れたので帰りました」と打ち上げに参加していなかった。

あれは大人だったんだなと今になって思いますね。

別に疲れていたわけではなく、気を遣って頂いてたんだろうなと。

もちろん、打ち上げに参加するのは得意だし楽しいかもしれないけど、毎回行くのも嫌な大人じゃないですか(笑)。

――そんなことは(笑)。今の20代、30代のミュージシャンの中にも、お二人に憧れている方はたくさんいらっしゃると思います。そういう方々と個別にお話しされることはありますか。

人時:僕はあまりないですね。でも、拒否しているわけではないですよ。話したい人がいるなら全然ウェルカムです。間口は広げているつもりですけどね。

――やっぱり、向こうからすると恐れ多いのかもしれないですね。

清春:話が続かないかもね。向こうも悪い(笑)。

大体「あれ聴いてました」、こちらも「そうなんだー」しかならない(笑)。

「“人時ファミリー”みたいになっていく。僕がそこで“歌わせていただいている”みたいな」

――清春さんは最近のインタビューで、「人時さんが黒夢を本当に大事に思っていることが伝わる」と話されていました。それは、どういったときに感じるのでしょうか。

清春:人時さんは今はリーダーですからね。スケジュールも前より全然黒夢優先にしていると思います。あと、結局、楽器をやっているメンバーはみんな人時さんに懐いていく(笑)。

たとえばライブのメンバーが変わるじゃないですか。ドラムがSATOKOちゃんになったときも、最初は僕がソロでSATOKOちゃんと一緒にやっていて、「いいと思うよ、一回やってみたらどうかな」という感じで黒夢でもやってみて。ギターもそうですね。

で、人時さんのすごさって、やっぱり体感していないとわからないところがあるので、一緒にやって、人時さんのミュージシャンとしてのスキルやキャリアに触れて、「この人すごいな」とみんなわかっていく感じがする。

で、“人時ファミリー”みたいになっていく(笑)。

僕がそこで“歌わせていただいている”みたいな。

――そうなんですか(笑)。つまり、それくらい人時さんを中心にした空気が、今の黒夢にはあるということですね。

清春:僕もそうですけど、スタッフのみんなも、10年前より人時さんの言っていることについていく気持ちが強いんですよ。僕の言っていることも間違いないとは思うけど、人時さんの言っていることの方が客観的に見えているというか。そこが黒夢が今年も続いている理由だと思います。

僕は普段からスタッフのみんなと一緒にいるので、新鮮な存在ではないんでしょうね(笑)。

――今のお話を聞くと、10年前の再始動とはかなり空気が違うようにも感じます。今回の再始動と前回とでは、気持ちの面や考え方でどんな違いがありますか。

清春:僕は、続けることがあまりいいことではないと、10年前も思っていました。復活しても、そこに新しいことは一個もなくて、我々なら目をつぶってもできてしまうところがある。

でも最近は、飽きている中で何かやろう、何か楽しいかもしれないと少し思える。

10年前は新譜を作ろうという楽しさがあったんですけど。今は、たとえ新しい曲を作っても、「ライブでやらないしな」とお互いわかってる。ガンズ(Guns N’ Roses)やモトリー(Mötley Crüe)も、新譜を作ってもライブではあまりやらないじゃないですか。

でもそれは、やりたくないのではなく、やる意味があまりないことをわかっているということなんだと。

「多分、一番“威力がない”のは最新の曲だと思うんです」

清春:新譜は作ろうと思えば作れる。でもやったら、絶対に「前の方がよかった」となる。それって“時間の魔法”でしかないんだと思うんです。僕自身、外タレを観に行って「新しい曲をやってほしい」とは思わない。それと同じように、黒夢の歴史やキャリアには別の魔法がある。

だから、その魔法を消してまで新しいことをやるのは、よっぽど状況が整ったときでないと、やってはいけない気がしていて。

結果的に、僕らは2011年と14年に新譜を2枚出しているので、出せないわけではないと証明してるし、むしろ今やっていることは逆なんですよ。今やっと新たな旧譜を出してる。セルフカバーをね。

10数年前の新譜もいずれ少しずつボディブローのように効いてくるとは思うので。

今は、『CORKSCREW』と『Drug TReatment』の曲をやった方が盛り上がるし、シングルを沢山やった方がいいとは思います。でもZeppクラスだと、『Headache and Dub Reel Inch』(2011年)や『黒と影』(2014年)の曲をやっても、少しは盛り上がる。

作為的ではないんですけど、それを少しずつ延ばしてはいきたい。「I HATE YOUR POPSTAR LIFE」や「13 new ache」、当時出した、「アロン」や「ミザリー」もそうですけど、古くからあった魔法とは違う第二の魔法になっていくんじゃないかなと願っています。

多分、一番“威力がない”のは最新の曲だと思うんです。なぜなら、僕らが最新の人間ではないから。僕らの前には30年ある。で、この先30年ある人たちではなくてね。ただ、その思いは今も乗せていける。

僕がそれを理解できなかったのが10年前、20年前だったんだと思います。というか、理解できていても年齢的に体現したくなかった。

今、最初の活動休止から20年以上経って、やっとその神秘性のような魔法を信用できてる感じかな。

ガンズなんて、ずっと「Welcome To The Jungle」が1曲目じゃないですか。ほぼ必ず。でもそれを観たい人がいる。それがレジェンダリーだということなんだと思います。

日本はキャパシティも狭いし、ロックの歴史も長くはないですけど、僕らが憧れていたような、規模や歴史の大きいバンドに、どこかで我々もなりたいわけですから。

――「時間の魔法」という話でいうと、今あらためて新曲を作ることについては、どう感じていますか。

清春:新しい曲を聴いて、それが良いか悪いかという評価自体が、もう日本には時代的にもなくなってきたように思いますね。

TikTokとかで流れて良い曲かどうかわかるというのは、音楽ではないと思っていますから。人気があるのは、フレーズが覚えやすいかどうかだけで、それは、スナックや飲み屋でママが瞬間的に面白いことを言ったのを覚えているようなもので、それは文化でもない。

僕らの90年代にはまだ、文化があったので。今のTikTokでの音楽とかを否定するわけではないけれど、歴史の長いバンドとかは、それに寄り添わなくてもいいんじゃないかと思います。

特に、黒夢は昔から、1998年頃だって時代に寄り添っていなかったのに、2026年になって寄り添う必要もないなって。

国民みんなが旬のことで生きているわけではない 清春が50代で感じること

――そういう意味では、最近の流行りの曲や音楽シーンとは、かなり距離を置いて見ている感覚なのでしょうか。

清春:「今この人がすごいんですよ」とか、「この番組がすごい人気なんです」「このアニメがどう」とか、よく言われるじゃないですか。でも僕らからすると、関係ないですし、知らないと。

人時:僕は多分、清春さんより知らないですね。

清春:でも音楽をやって生きていける。国民みんなが旬のことで生きているわけでは決してないんですよ。旬の情報で生きているのはごく一部なんです。流行りの曲調も、我々には関係ない、うちのファンにも関係ない。

僕らも昔だったら再生回数や、今でいう登録者数のようなものを気にしていたかもしれないですけどね。でも続けてくると、なくてもできるということがわかる。

――最近のインタビューや発言では、「ライブでこの場所に来るのは最後かもしれない」「黒夢の今後は周年のときだけかも」といった、終わりを意識する言葉も多い印象があります。ただ、実際には黒夢は大きな会場で求められていて、過去最大規模日数のアリーナ公演も控えています。終わりを意識する感覚と、周囲から求められている感覚。そのギャップについてはどう感じていますか。

清春:僕は今回のアリーナも反対していたんですよ(笑)。ただ、昔より明らかに人の意見を取り入れるようになりましたよね。昔なら絶対に取り入れてなかったので。アレンジャーもそうだし、マネージャーもそうだし、お互いについているローディーの意見も取り入れたらいいと思うようになっている。

アリーナ3日間も、Zeppツアーも、ほんとなら絶対にしたくなかったんですから(笑)。でも、やりましょうと言われているのは、幸せなことなんですよね。そこで楽しさを感じてくれている人たちがいるということだと思うので。

それに、僕はまだ当時の黒夢のファンの人たちに全然会い切れていない気がしているんですよ。もう音楽を楽しむ事から離脱してしまった人たち、何処か人生を達観してしまっている人もいると思うんです。音楽が人生に必要ないというか。

でも、もう1本、もう2本ライブがあって、それを知ってくれることがあれば、もしかしたら来てくれるかもしれない。その可能性をわずかに感じながらやっているところはあります。

地方とか行くと、みなさん必死でありながら、どこかで達観しているんですよね。打ち上げをした小さな居酒屋に、何十年も毎日揚げ物をしているような大将がいて、テレビもラジオも接するから「昔聴いてたよ」と言ってくれる。

その人に「大将、ライブ来てよ」とは言えない。土日なんてかき入れ時だし、ライブよりお店の毎日があるわけだから。

ただ、微妙な層もまだいて、もしかしたらライブのことを知らないだけかもしれない。40代でもネットを見ない人はいるし、ライブをしていたら、そういう人に届くかもしれないなって感じますね。

取材・文/ライター神山

◆リリース情報
リテイクアルバム
『CORKSCREW 2026』
『Drug TReatment 2026』
2026年7月15日(水)同時リリース

◆ライブ情報
【黒夢 THE PERFECT DAYS TO DIE】
2026年7月17日(金)TOYOTA ARENA TOKYO
2026年7月18日(土)TOYOTA ARENA TOKYO
2026年7月19日(日)TOYOTA ARENA TOKYO
2026年9月6日(日)東京GARDEN THEATER

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