「週5回以上自炊する女性、0回の人より10年後死亡率48%減少」

えーーー。ホントに? 48%減ってスゴいな。

これは先日「週刊ポスト」に掲載された記事で、アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い順天堂大学大学院教授・白澤卓二氏が、「自炊」と「寿命」の関係について解説したものだ。ちなみに、女性ほどではないにせよ男性でも週5回以上自炊する人のほうが死亡率が低い結果が出ているとのことで、「料理をする人は、より栄養価の高い食事内容を選択する傾向があり、良い食事の質が寿命に好影響を与えた可能性がある」と書かれている。

今、「自炊」が熱い! 上記の週刊ポストの例だけでなく、先日エキレビでも取り上げた自炊レシピ本『家メシ道場~1食100円でかんたんごはん』のレビュー記事も大きな反響を集めた。この時は、<食費が40万円も浮くコツ><一食100円レシピ><簡単3ステップ>をキーワードに、経済面と効率性からこのレシピ本の特徴を取り上げてみたが、おトクなだけでなく健康にもいいとくれば、もう自炊最高! である。

実はこの『家メシ道場』、出版界でも異例のヒット作として注目を集めている。amazonで総合で1位を獲得。
レシピ本では異例となる発売2か月で5刷、6万部超の大ヒットを叩き出し、今や10万部を狙う勢いを見せている。また本だけでなく、著者であるユニット・給食系男子もテレビ、ラジオ、雑誌で大人気だ。「めざましテレビ」で軽部アナ相手に料理を振る舞ったのを皮切りに、SPA!や日経トレンディネットで「今話題の著者」として取り上げられ、さらには先週発売の女性誌「グラマラス」にまで紹介されてしまった。
「安くて旨くて、カラダによくて、運がよければモテルかも!?」という宣伝文句に対して、前回のレビューでは「男子とかいいながら全員おっさん、これはモテるハズがない」と切り捨てた私の立場は……。もう素直に「ゴメンナサイ」である。
なぜこのレシピ本が売れたのか。
自炊の魅力とは何か。今一度掘りさげてみたい。

「給食系男子」は、料理が好き、そして振る舞うのも好き、という男子(おっさん)11人からなるユニットだ。先日、<出版記念『家メシ道場』のつくりかた実食イベント!>が開催され、たくさんの来場者に料理を振る給食系男子の面々の姿があった。
バターで炒めることで手早く本格的に仕上げる「大根のバター煮」(ちなみにレシピ作成は漫画家にして給食系男子のうめさん)、卵のお尻に針で穴を空け、水から茹でるのではなく熱湯から茹でることで簡単にツルッと剥ける「最強ゆで卵」。そして人を寄せ付ける肉の塊……実際、給食系男子とその料理の周りには終始人で賑わっていた。
やはり人気は本物か?

このユニットの発起人でもあり、給食系男子の小林智之さん(37歳=おっさん)にヒットの秘訣を自己分析してもらった。
「正直、ここまで売れるとは思っていなくて、いい意味で「こんなハズでは……」という状況です。売れた理由のひとつは著者が11人いることじゃないでしょうか。ライター、編集者、漫画家、プランナーなど、11名それぞれが仕事でもプライベートでも独自のネットワークを持っているので、そこからtwitterやfacebookでどんどん拡散することができたんだと思います。ネタが<料理>だから、誰でも気軽につぶやけますからね。今後も料理そのものだけでなく、食べることで生まれるコミュニケーションも大切にしていきたいです。」

本の中で「大人の自炊力検定」を紹介したコラムニスト・石原壮一郎さん(49歳=おっさん)も給食系男子だ。

「ヒットの秘訣は<素人が本気で楽しんだから>でしょう。下心からじゃなく、好きなことを追求した結果。その素人臭さが世の女性の皆様の心をつかんだのではないでしょうか」と答えてくれた。

この日「ゆで卵ワークショップ」で美しいゆで卵を仕上げた給食系男子・河口朋浩さん(43歳=おっさん)は、意外な層に受けたと語る。
「一人暮らしの男性向けの予定だったのに、年配の一人暮らしの方からも好評なんです。年を取ると難しい作業は大変だから、簡単に作れる料理の本はありがたいし便利、という声をもらっています」とのことだった。


話を聞いてみて感じるのは「大人の余力」だ。ananやら女性誌では、草食系やら職人男子、農業男子、アウトトドア男子なんていう色んな〇〇男子が盛んに取り上げられているが、結局どれもこれも鼻タレ小僧ども。それに比べて彼ら「給食系男子」は、そりゃまあおっさんどもの集まりだけど、よくも悪くも「大人の力」をフルに活用しているのだ。
おっさんは、社会の中でも会社の中でも影響力を持つことができる年代。その力を上手に活用すれば、自分の人生であっても予想もできない調理ができる、ということを気づかされてちょっと励まされた。年は取りたくないなぁって思ってたけど、おっさんになるのもいいもんだね。


こんな給食系男子の活動は、これからますます忙しくなるとのこと。いくつか教えてもらったので最後に紹介したい。
まずは今週14日(土)には東京カルチャーカルチャーでのイベント「家メシ道場Night!」が開催決定。書籍掲載メニューのスペシャル版が味わえたり、トークショーのやら名刺交換会が実施されるとのこと。おっさんやなぁ。
また、なんと秋には小説誌「野生時代」で連載を持つことも決定。9月発売号から「Let's 粉もの部」(仮)という連載がスタート! って、小説雑誌で料理コーナーってどういうこと??
さらに面白いのは、学校給食へのレシピ提供という、名実共に「給食系」を目指した動きも進めているということ。「地産地消で作るコロッケ」(例えば既に活動が始まっている神戸では「淡路島の玉ねぎを使ったコロッケ」)など、当面はコロッケをキラーコンテンツにメニュー提供をしていくとのこと。食育としても注目される給食と、健康にいい自炊。なんてナイスなコンビなんでしょう。
さらにさらに、秋ごろにまた次の大きな展開があるかも、ということで、第二弾? 他の新連載? まさかテレビとか? と、勢いはとどまるところを知らない。モッテモテだなぁ、給食系男子。「運がよければモテルかも!?」のコピーは伊達じゃなかった。この人気の寿命は、結構伸びそうです。
(オグマナオト)