フジテレビの月9ドラマ「HERO」に出演中の吉田羊が面白い。
羊(ひつじ)と書いて、「よう」。

芸名は本名の「羊右子」(ようこ)からとったらしい。
(本名にも羊!)

吉田羊演じる馬場礼子検事は城西支部きってのクールビューティ。
前作で大塚寧々が演じた中村美鈴検事顔負けのドSキャラで被疑者を揺さぶり、涙させる。
当時、中村検事は同僚の芝山検事(阿部寛)と不倫していたが、馬場検事は同僚で元彼の田村雅史検事(杉本哲太)と日々、小競り合いを展開。

「田村君、馬場検事とギスギスするのやめてくれないかなぁ……」
と、川尻部長(松重豊)の胃痛の種になっている。

顔を合わせればチクチクいやみを言い、過去の話を持ち出し文句タラタラ。

ドカーンとぶちきれると、川尻検事も顔負け。
こう書くと、ぜひとも元カノにしたくない粘着キャラに思える。
ところが、馬場検事にかかるとすっきり、さっぱり。かわいらしさすら漂うのだ。
いったいどういうことなのか。
美人だからか。
いや、違う。
同じ「美人枠」でも、美鈴さんはしんねり、ねっちり。
この違いはいったい……。今回は馬場検事のかわいらしさの正体を探ってみたい。

■「起訴は無理ですね。昔好きだった男にちょっと……」(第一話)
特捜部にいたことが自慢で、当時の話をしたがる田村検事。
でも、馬場検事は「その話、12回目」「みじめになるだけよ」とバッサリ。冷酷無比な知的美人キャラを突き進むのかと思いきや、第一話から早々に思いがけない素顔を披露する。被疑者に15年前のアリバイを問いただす馬場検事。「じゃあ、検事さんは覚えてるんですか」と問われ、黙りこんでしまう。「1997年7の月に別れた…(元彼に被疑者が似ていた)」と打ち明け、川尻部長を呆れさせる。

■「マスターおかわり! 起きてよ、井戸ちゃん。
おごってあげるんだから、ちゃんとつきあいなさい」(第三話)


「部長、職場から毎日奥さんに電話してのろける事務官は勘弁してほしいです」と、槍玉に挙げられた井戸事務官(正名僕蔵)は新婚ホヤホヤ。担当替えを川尻部長に直訴したはずの馬場検事は、なぜか井戸ちゃんを従え、いつものバーで大泥酔。「本当のこと教えてあげましょうか。わたしね、川崎支部にいたころつきあってたの、田村と」と酔いにまかせて、次々と暴露。どうやら、田村検事は馬場検事との交際中に、牛丸次席(角野卓造)の娘と見合い。いきなり「結婚する」と馬場検事に告げたらしい。

「次席は知らないのよ。あいつがそんな酷い男だなんて……くそ、ばらしちゃおうかな」と言いながらも、いざ「ばらしちゃえ」と井戸に言われると、「そんなことしないわよ! 気にしてないんだから!!」と涙する。その場に居合わせたら面倒なのは確実。でも、ちょっとかわいい。

■「わたしと天秤にかけて次席の娘と結婚しておきながら、わたしの前で奥さんのこと愚痴ったりするんです」(第四話)

京都地検からやってきた、なつかしの美鈴さん。中村美鈴検事は馬場検事とも懇意だったらしく、「田村検事って、あの田村?」とさっそくガールズトークが始まる。
「わたしと天秤にかけて次席の娘と結婚しておきながら、わたしの前で奥さんのこと愚痴ったりするんです。もう信じられない」「デリカシーないわねー! 誰かにそっくり!!」。“パパでちゅよ”の芝山検事もたいがいだったが、田村検事も相当だ。「世の中おかしい。こんないい女がアラフォーになって、どっちも幸せになれないなんて」と嘆く馬場検事だが、「あらー、一緒にしないでくれるー?」と美鈴さんは余裕の表情。それもそのはず、京都の呉服屋の次男坊との結婚が決まったという。馬場検事の「おめでとう」にうらやましさはあっても、妬ましさは微塵もない。またまた好感度が上がる。

■「部長は私に謝ってくれたわ! 君たちがつきあってるなんて知らなかった、
まさか田村君が本当に次席そっくりの娘と結婚するなんて思わなかったって!!」(第五話)


数々の舌戦を繰り広げてきた馬場検事と田村検事だが、第五話ではいよいよ、ガチンコ対決!
田村検事のお見合いをセッティングしたのは、川尻部長だったことも判明する。
馬場「あなたが二股かけて私を捨てたから」
田村「もう結婚するつもりはないって言ってたじゃないか!」
馬場「私に黙って牛丸次席の娘とお見合いするなんて」
田村「部長に勧められたんだ。この人がキューピットだったんだぞ!」
馬場「部長は私に謝ってくれたわ。君たちがつきあってるなんて知らなかった、まさか田村君が本当に次席そっくりの娘と思わなかったって!!」

二股をかけられたのが許せない。次席そっくりの娘に負けたのもくやしい。そんな馬場検事が田村検事に投げかける「謝ってほしい」というメッセージ。第三話で久利生(木村拓哉)が被害者の父親の気持ちを代弁したセリフ「田村さんに謝ってほしいわけじゃないと思うんですよね。ちゃんと知りたいんじゃないかな」はそのまま、馬場検事にもあてはまるのかも。さっさと謝っちゃえばよさそうなものだが、頑なに謝らない田村検事。わざとイヤなヤツを装い、忘れさせようとしている……というのは楽天的すぎるか。でも、そう考えると、どうでもいい痴話げんかもロマンチックに見えてくるのが不思議。恋は盲目!

■「もとはといえば、あんたがいい年して合コンに狂ってるのがいけないんでしょうが!! 人が心配してんのに!!!」(第六話)

お調子ものの遠藤事務官(八嶋智人)が殺人未遂容疑で逮捕されるという騒動が持ち上がった第五話。城西支部の面々は特捜部にバレないよう、遠藤の無実を晴らすための証拠集めに奔走する。ところが、間が悪い遠藤は、みんなが和気あいあいと食事をしている場面ばかりに出くわす。「仲間がつかまったていうのに、みんなハンバーガー食ってるんだ!」と腹立ち紛れに「バカヤロー!!」と捨てゼリフ。無言で受け止めた馬場検事だったが次の瞬間、ドカーン! 川尻検事も顔負けのキレっぷりを披露した。


さて、こうして振り返ってみると、馬場検事はじつに感情の起伏が激しく、表情豊かな女性だということがわかる。クールビューティはクールビューティでも、「黙っていれば」のカッコ書きがつくタイプだ。とうの昔に別れた男の不実をしつこくなじり続けるのも、泥酔した挙げ句に泣き出すのも面倒くさい。

でも、面倒くさいとかわいらしいは紙一重だなとも思う。時折出くわす「よくこんな面倒くさい人とつきあえるわ……」の正体はこれか、これなのかー!

さらに第七話では馬場検事の元夫(戸次重幸)が登場。田村検事より元ダンナのほうがいい男じゃん! いや、じつはすごいイヤなヤツっていう設定? 馬場検事、もしや選球眼に難ありか……と妄想をガンガンに膨らませつつ、今夜9時から!
(島影真奈美)

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第三話
第四話
第五話