俳優・佐藤二朗と橋本愛の騒動をめぐる一連の報道から約1カ月――。これまで頻繁に更新されていた佐藤の公式Xはしばらく途絶え、7月3日には「FLASH」が佐藤の静養を報じた。
ファンとしては一日も早い復帰を願うばかりだが、そんな今だからこそ彼がこれまで積み重ねてきた名演を振り返ってみたい。

【関連写真】佐藤二朗、『女神降臨』主演のKoki,と2ショット

コミカルな役柄で親しまれる一方、シリアスな作品でも観る者を圧倒してきた「佐藤二朗」。本稿では、その実力を堪能できる4作品を紹介していこう。

まず近年の作品でいえば、映画『爆弾』での演技力に圧倒された人は多いのではないだろうか。佐藤が演じたのは、謎の中年男・スズキタゴサク。器物破損と傷害の容疑で取り調べを受ける中、彼が口にした"ある予言"をきっかけに物語は大きく動き出す。

一見するとタゴサクは、とぼけた見た目の中年男だ。酔った勢いで人や物を傷つけ、謝罪しようにも治療費や修理費を支払うだけの金もない。「申し訳ないと思ってます」と口では言うものの本気で反省しているようには見えず、その言動はどこか飄々としている。そんな彼が口にした予言が次々と現実で起こり、東京を恐怖のどん底に陥れていく。

コミカルな役柄を得意としてきた佐藤だからこそ、タゴサクの無邪気さには不思議な説得力があった。しかしその飄々とした振る舞いの裏には底知れない狂気が潜み、何を考えているのか分からない不気味さが観客の不安をかき立てていく。
「ユーモア」と「恐怖」という、相反する要素を違和感なく同居させた演技は、まさに彼だからこそ実現できたものだろう。

振り返れば、狂気をはらんだ役を演じる片鱗は、2008年から全3部作で公開された映画『20世紀少年』の頃から見えていたのかもしれない。本作は浦沢直樹の人気マンガを原作とした実写化シリーズで、佐藤は『20世紀少年 第2章 最後の希望』で"ホクロの巡査" 役として出演している。映画『爆弾』と比べれば出番はさほど多くないものの、その強烈な存在感は観る者の記憶に残るものだった。

佐藤が演じた巡査は、物腰が柔らかく、一見すると人畜無害そうな男。だが、その正体は冷酷無慈悲な暗殺者で、穏やかな表情のまま容赦なく標的を撃ち殺していく。静かに、確実に標的へ迫る姿は、多くの人に底知れない恐怖を与えただろう。『爆弾』のタゴサクにも通じる、不気味な魅力を放っていた。

片山慎三監督の商業映画デビュー作『さがす』は、姿を消した父親と、その父を必死に捜す娘の姿を描いたヒューマンサスペンス。佐藤が演じる父・原田智は、中学生の娘に身元引受人を任せるようなどうしようもない父親だが、「指名手配中の連続殺人犯を見た」「捕まえたら300万もらえる」と語った翌朝、忽然と姿を消してしまう。やがて智が失踪した理由や、その裏で行われていた真相が明らかとなり、物語は予想だにしない結末へとなだれ込んでいく。

娘役の伊東蒼や殺人犯役を務めた清水尋也もさることながら、やはり目を引くのが佐藤の演技力だ。
言葉よりも表情で語ることの多い役柄で、体が不自由な妻の面倒を見る疲労感、妻の本音を知ってしまったときの悲しみ、自分にはどうすることもできないやるせなさなどを、その表情ひとつで巧みに表現していた。

いずれの表情も「実際に人がああいう立場に置かれたら、きっとこんな顔をするのだろうな」と思わせる説得力があり、妙に生々しい。そんな佐藤の演技が観る者を物語へ深く引き込み、本作を傑作たらしめている。

さらにもう一作、"俳優・佐藤二朗"を語るうえで、2024年に公開された映画『あんのこと』も欠かせない。河合優実が主演を務める本作は、2020年の日本で実際に起きた事件から着想を得た人間ドラマ。売春や麻薬に依存し、母親から日常的に暴力を振るわれていた主人公の香川杏が、ベテラン刑事・多々羅との出会いをきっかけに更生への道を歩む姿を描いている。

佐藤が演じた多々羅は、取り調べ中に突然ヨガを始めるような変わり者。しかし実際は人情味あふれる人物でもあり、過酷な環境に生きる杏を救おうと誰よりも奔走していた。一方で、薬物依存からの回復を目指す自助グループを主宰する裏では、女性参加者に性被害を及ぼしていたという一面も持つ。善と悪が同居する矛盾を抱えた難役を違和感なく成立させたのは、佐藤の確かな演技力あってこそだろう。

思い返せば『爆弾』のタゴサクも、『さがす』の原田智も、一筋縄ではいかない複雑なキャラクターだった。『20世紀少年』の巡査役も、普段は温厚そうな警察官でありながら、その裏には冷酷な一面を隠している。
こうした一見すると普通なのに、どこか底が知れない人物を演じることこそ、佐藤の真骨頂なのかもしれない。

『爆弾』『20世紀少年』『さがす』『あんのこと』……。「佐藤二朗=コミカルなおじさん」というイメージが強い人ほど、今回紹介した作品を通して、"俳優・佐藤二朗"の凄みを感じてみてほしい。

【あわせて読む】衝撃作『さがす』公開記念舞台挨拶、主演・佐藤二朗がサプライズレターに思わず感極まる
編集部おすすめ