【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#118


 アルバム『イエロー・サブマリン』(1969年1月17日)③


  ◇  ◇  ◇


■『ヘイ・ブルドッグ』


 ジョンの曲。映画『イエロー・サブマリン』の中で、この曲が流れるシーン(ビートルズが犬をからかうシーン)はずっとカットされてきたのだが、1999年のDVD化に合わせて復活した。


 そのDVD化に合わせて、この曲のMV(ミュージックビデオ)も公開。68年初頭、インドに行く前の4人を拝める貴重な映像だ。ジョンの頬までヒゲ(もみ上げ?)が伸びていて、まるで尾崎紀世彦のようになっている。


 さて、この曲はやはりポールのベースだろう。過去曲でいえば『タックスマン』(66年)のような16ビートのグルーヴが前に出た、ビートルズとしては珍しいリズム感の曲となった。


 なお、歌詞本編に「シープドッグ」は出てくるものの「ブルドッグ」は出てこず、長いエンディングで初めて出てくる。


 一説には、そこでジョンの歌う「♪ヘーイ・ブルドッグ」(視聴リンク再生時間「2:16」)はアドリブらしい。【オリジナル記事で試聴する


 ということは2回目の「♪ヘーイ・ブルドッグ」(同「2:21」)にポールが見事なハーモニーを付けているのもアドリブということになる。このあたりに私は、ビートルズの「コーラスグループ」としての本質というか、すごみを感じるのだ。


■『イッツ・オール・トゥー・マッチ』


 ビートルズファンの中で重視されている曲とは決して言えないが、私は好きだ。


 ジョージの作品。6分半もあって、かなり長い曲なのだが、私はぜんぜん長く感じないのである。


 体感的にはより長い『レボリューション9』の半分ぐらい。


 いろいろ小難しいことを考えていた当時のジョージが、小難しい小理屈を捨てて、ハードロックしているのがいい。


 歌詞も「イッツ・オール・トゥー・マッチ=何もかも素晴らしすぎるよ」というハッピーな内容になっているのも救われる(ベースにはLSD体験があるらしいが)。だからか、映画の中では、ペパーランドに平和が戻ってくるという(それなりに)感動的なシーンで流れる。


 ジョージファン(というかポール嫌い)で有名な高橋幸宏によるカバーがある(82年)。こっちはテンポが速く、その分、尺も4分台と短い。


 そのカバーのタイトルは「すべて素晴らしすぎる」。まさにビートルズの音楽をトータルで言い当てているようだ。あっ『レボリューション9』(68年)は除いて、ね。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。

半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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