ファーガソンですらマンUで生き残れなかった? 英紙が指摘する...の画像はこちら >>

長期政権を築いたアレックス・ファーガソン Photo/Getty Images

「結果を急ぎすぎる」現代サッカー

現代サッカーでは、監督や選手に対して結果を求めるスピードがあまりにも速くなっている――。英紙『THE Sun』が、マンチェスター・ユナイテッドの伝説的指揮官アレックス・ファーガソンを例に挙げ、フットボール界の「忍耐不足」に警鐘を鳴らした。



同紙でコラムを執筆するカレン・ブレイディ氏は、「フットボールは異常なほど忍耐を失っている」と指摘。「新監督が欲しいが、すぐに結果も出してほしい」「若手選手を使いたいが、クリスマスまでには1億ポンド級の選手に見えてほしい」「高額な新加入選手には、荷ほどきをする前から移籍金に見合う活躍を求める」と、現代サッカーの風潮を皮肉った。

さらに、クラブは「将来のためにチームを作る」と言いながら、目の前の試合で勝てなければ「なぜ今日勝てなかったのか」と問われる矛盾も指摘している。

ブレイディ氏は、30年以上にわたってサッカー界の経営に携わり、成績不振に陥った監督を巡る意思決定にも関わってきたという。その経験から、「時には何もしないことが最も難しい決断になる」と主張した。

その具体例として挙げたのが、ウェストハムでのデイビッド・モイーズ監督だ。

成績が振るわない時期には、ファンからモイーズの解任を求める声が上がった。しかしクラブは指揮官を切らず、続投させた。そして2023年、ウェストハムはヨーロッパ・カンファレンスリーグを制覇。クラブにとって58年ぶりとなる欧州タイトルを獲得した。

もちろん、すべての監督を長期間残留させればいいわけではない。ブレイディ氏自身も、監督が「任期を終えた」と判断せざるを得ないケースがあることを認めている。
ただし、解任は周囲からのプレッシャーに押されて決めるのではなく、経営陣が冷静に判断すべきだと訴えた。

そして、現代サッカーの「結果を急ぐ」傾向を象徴する存在として登場するのがファーガソンだ。

ファーガソンがマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任したのは1986年11月。最初のシーズンは11位に終わり、翌シーズンには2位まで順位を上げたものの、1988-89シーズンには再び11位へと後退した。

そして、ファーガソンがユナイテッドで初めてタイトルを獲得したのは1990年だった。

ブレイディ氏は「今ならどうなっていただろうか」と問いかける。

テレビの討論番組では「ロッカールームを失ったのではないか」と議論され、SNSでは解任を求める声が殺到する。そうなれば、後にクラブ史上最高の監督の一人となるファーガソンは、その偉大さを証明する前に解任されていた可能性すらあるという。

この問題は監督だけに限らない。

若手選手が3試合不振に陥れば「期待外れ」とされ、高額な移籍金で加入した選手が4試合ゴールを決めなければ「移籍失敗」と判断される。ブレイディ氏は、人間そのものが「資産」となるサッカー界では、単純に数字を測定して、結果が出なければ入れ替えるという発想では十分ではないと訴える。

選手や監督を成長させ、支え、自信を与え、能力を最大限発揮できる環境を作ることもクラブ経営に含まれるからだ。


さらに、監督を頻繁に交代させることは経済的にも大きな負担になる。監督を解任すれば本人だけでなくスタッフへの補償も必要となり、新監督が異なる選手を求めれば新たな補強費も発生する。そして、その次の監督が前任者の獲得した選手を評価しなければ、再び補強が必要になる。

「長期的なプロジェクト」「クラブ文化の構築」「若手の育成」「明確なプレイスタイル」といった言葉を掲げながら、実際には監督にわずか数試合しか与えない――。ブレイディ氏は、この矛盾こそが現代サッカーの問題だと指摘している。

もちろん、無条件に監督を守り続けるべきだという主張ではない。重要なのは、周囲の声に流されるのではなく、クラブが本当に正しいと信じる方針を貫く「勇気」だという。

そして最後に、『THE Sun』のコラムはサッカーを取り巻くメディアやファンにも自制を求める。

「サッカーはテレビドラマではない。すべてのエピソードにどんでん返しが必要なわけではない」

一時的な不振をすぐ「危機」と捉え、監督解任を求めるのではなく、時には「何もしない」という退屈な決断こそが、最も賢明な選択になる――。ファーガソンの初期キャリアを引き合いに出しながら、ブレイディ氏は現代サッカーにおける「忍耐」の重要性を訴えている。

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