6月14日、北中米ワールドカップ。森保一監督が率いる日本代表はオランダ代表と対戦し、2-2で引き分けた。

先制点を奪われ、同点にしながら逆転され、終了間際に追いついた試合展開は、控え目に言ってスリリングだった。

 日本は、オランダにイニシアチブを握られている。しかし、攻められ続けることへの我慢を折り込みながら、自分たちに流れが来た時の試合運びは堅調で、"安定した強さ"も感じさせた。その結果、ほとんど自陣に立てこもるほど劣勢で、二度もリードされながら、FIFAランキングでも上位のオランダと引き分けている。それは勝ちに等しい一戦だった。

 では、どこに日本の"勝因"はあったのか?

 スペイン国内大手スポーツ紙『マルカ』は、バルセロナのプレーメイカーであるフレンキー・デ・ヨングに対し、厳しい評価を与えている。星はゼロ(0~3の4段階評価)で、ポゼッションしながらも有効な崩すパスがほとんどなかったことを糾弾。同じく中盤のタイアニ・ラインデルスも、星はゼロだった。ボール支配率6割を超えながら攻めきれなかった"戦犯"だ。

 一方、日本の中盤に君臨した鎌田は星二つだった。守る展開が長かった中盤で、効果的なパスやキープをしていた。鎌田は同じく『アス』紙でも両チームで一番高い評価の星二つで、中盤での優位性が勝負を分けたと言っても過言ではない。

サッカー日本代表のオランダ戦で上回った中盤の優位性 鎌田大地...の画像はこちら >>
 鎌田は左ボランチとして佐野海舟とコンビを組み、まずはディフェンス面のポジション的優位を崩さなかった。デ・ヨング、ラインデルス、ライアン・フラーフェンベルフがボールを回しても、しっかりと立ち位置を取りながら、危険な縦パスをほとんど入れさせていない。抜群のキープ力も誇り、ポゼッションを守備に利用し、押されながらも完全には相手に流れを与えなかった。

 そしてプレーメイカーとしての鎌田は、低い位置から長短のパスを織り交ぜ、中村敬斗、前田大然、上田綺世、久保建英などを使っている。

【安定した中盤が日本の好成績に不可欠】

 13分、CKの流れからボールを受けた鎌田は、左サイドで絶妙なタイミングを作って、中村、久保、谷口彰悟、前田らとコンビネーションの起点になった。タイミングをずらしたキックやコントロールは達人の域にある。44分、鎌田は低い位置から上田の動き出しにボールを合わせた。時間、空間を演算し、情報処理して出したようなパスで、タイミングも精度も完璧だった。

 特筆すべきは、鎌田が無理にグラウンダーのパスで引っかかるアクシデントを避けていた点だろう。相手の頭を超すようなパスを出すことで、カウンターのリスクをヘッジ。実戦的な選択だった。

 そこで思い出したのは、web Sportivaのご意見番で、久保建英が所属するレアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)で20年近くスポーツダイレクターなどさまざまな職務を担ってきたミケル・エチャリが鎌田について端的に語っていたことだった。

鎌田大地はトップ下の才覚も持っているが、ボランチのほうがいい」

 エチャリはそう断言し、ほとんど瞬時に特性を見抜いていた。

「鎌田は常にボールを受けることを好み、それによって自らがリズムに乗り、チームもリズムに乗ることができる。左のボランチで上下動を重ねながら、攻撃のタクトを振り、最大限の力を発揮できる。プレーメイカーが天職の選手だ。トップ下で決定的な仕事を増やすのもひとつだが、彼はボールをほしがって下がる。スタートポジションを左ボランチにすることで攻め上がるほうが効率的で、ペナルティスポット辺りにクロスやパスを呼び込み、シュートするのも得意だ」

 エチャリはその慧眼で、カタールワールドカップの前から鎌田がキーマンになることを予想していた。つい先日はバスク州ギプスコア県(ラ・レアルのあるサン・セバスティアン市のある県)のサッカー施設に『ミケル・エチャリ』という名前が冠せられるセレモニーがあり、ウナイ・エメリ(アストン・ヴィラ監督。久保とはビジャレアル時代に犬猿の仲だった)、シャビ・アロンソ(チェルシー監督)、ミケル・アルテタ(アーセナル監督)、フアン・マヌエル・リージョ(元ヴィッセル神戸監督)など錚々たる名将たちに「わが師」と慕われていたが、その言葉は重い。

 過去20年、日本代表がワールドカップでベスト16に躍進した大会では、中盤がうまく攻守の舵を取っていた。2010年南アフリカ大会は遠藤保仁長谷部誠(アンカーに阿部勇樹)、2018年ロシア大会は長谷部誠、柴崎岳、2022年カタール大会は遠藤航、守田英正。それぞれタイプの異なる選手同士が能力を補完し、チームの律動を生み出していた。守備面の強固さを担保しつつ、1本のパスで流れを変え、リズムを作れるコンビだ。

 鎌田も完全無欠ではない。たとえばオランダ戦も、局面のディフェンスでの強度はそこまでなく、プレスバックは弱かったし、ピンチも誘発していた。3人に囲まれながら圧巻のキープを見せたが、前田が重なってきてボールを失う形で"あわや決定機"ということもあった。体力的には終盤に入ると息が上がっていた。

 しかし、鎌田が中盤で森保一監督のコンセプトを体現していたのは間違いない。所属するクリスタル・パレスが同じようなシステムを運用し、カンファレンスリーグに優勝したのもアドバンテージなのだろう。いつ左ウイングバックの中村が有利になり、どうすればワントップの上田がシュートに持ち込めて、どこでシャドーの久保を使えばいいか。それらを彼が心得ているのは、森保ジャパンにとっては僥倖だった。

 チュニジア戦はうって変わって日本がボールを持つ展開になるだろう。だからこそ、鎌田の真価が問われる。スペクタクルなパスで堅牢な守備を崩し、際どい勝負をものにできたら――。大会屈指のプレーメイカーに名乗りを上げるはずだ。

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