【夏の甲子園】準々決勝・天理 - 三重 両校の勝ち上がりを振り返る

第108回全国高校野球選手権大会は8月18日、阪神甲子園球場で第13日を迎える。
午前8時から準々決勝第1試合として天理(奈良) - 三重(三重)が行われる。

2試合ともエースの完投で勝ち上がった天理と、3投手の分業で勝ち上がった三重。ここまでの4試合で、両校は投手起用の設計そのものが正反対だった。17日の休養日を挟んで中2日、天理の長尾亮大(3年)がこの舞台で3度目のマウンドに立つのか、三重が今度も継投で応じるのか。試合を前に、両校の戦いぶりを振り返る。

◆天理(奈良)― エースが2試合で289球、すべて1人で投げ切った

大会成績
2回戦(8月10日・第4試合) 天理 7-2 福山
3回戦(8月15日・第1試合) 天理 6-3 高川学園

【大会通算】2戦2勝 13得点・5失点(1試合平均6.5得点・2.5失点)

主将の一発で均衡を破り、6回に打者一巡(2回戦)

初戦の相手・福山は今大会が初出場。バッテリーを中心に守備を鍛えられたチームで、3回まで両校とも走者を出しながら得点に至らなかった。

均衡を破ったのは4回、4番の金本相有主将(3年)だった。先頭で左翼スタンドへ運ぶソロ本塁打。試合後、藤原忠理監督(60)は「キャプテンのソロホームランはベンチの苦しい雰囲気を変えてくれました。あの1点があったからこそ、(六回の)4点は私も思い切ってサインを出せました」と振り返っている。その6回は四球と失策で好機を広げ、1死二、三塁から7番・大塚弘登(3年)が2点適時打。さらに1番・山中喜晴(3年)、3番・永井仁之丞(2年)にも適時打が続き、打者一巡の攻撃で一挙4点を奪った。

7回、9回にも加点している。

先発の長尾は9回を131球で投げ切り、13奪三振2失点。福山に得点を許したのは8回2死からの3連打による2点だけだった。この勝利で天理は夏の甲子園通算50勝に到達。中京大中京、龍谷大平安、松山商に次ぐ史上4校目で、春夏通算80勝も同時に達成した。

0-3から6回に一挙4点、逆転で8強一番乗り(3回戦)

3回戦の高川学園はプロ注目の右腕・木下瑛二(3年)を擁し、春夏通じて初の8強を狙っていた。長尾は初回、先頭に四球を与えたあと無安打のまま1点を献上。4回、5回にも2死から適時打を浴び、5回を終えて0-3とリードを許した。

流れが変わったのはクーリングタイムの後だった。藤原監督が「絶対にビッグイニングが来る」と選手を鼓舞して迎えた6回、先頭の永井から金本の連打で無死一、二塁とし、5番・関村偉千陽(2年)の中前適時打で1点。無死満塁に攻め立てて木下を降板させると、大塚の押し出し四球、小沢典弘の押し出し死球で同点に追いつき、1死後、山中の犠飛で勝ち越した。8回にも1死満塁から山中が一塁線を破る2点二塁打を放ち、6-3とした。

長尾は9回を5安打3失点、10奪三振。球数は自己最多の158球に達したが、6回以降は2安打に抑え、味方の失策もカバーして最後まで1人で投げ切った。「甲子園という舞台なので、不思議に力が湧いてきて。疲れはあまり感じていない」。2017年以来9年ぶりの準々決勝進出に、8強へ一番乗りした。

中2日、球数制限には342球の余裕

長尾の大会成績は2試合18回で289球、23奪三振5失点。2試合連続の完投と2試合連続の2桁奪三振で、天理はここまで他の投手を1人も使っていない。1年の冬に捕手から投手へ転向した最速146キロの右腕が、そのままチームの生命線になっている。

初戦から中4日で158球を投げたのに続き、準々決勝は中2日。ただし「1人1週間500球以内」の制限で計算対象になるのは直近7日間、つまり15日の158球だけで、残りは342球ある。制度上は完投も可能な数字で、判断材料になるのは球数ではなく回復の度合いのほうだ。休養日の17日、天理は自校の天理親里球場でシートノックや打撃練習を行った。

藤原監督は「相手の(投手陣の)必勝リレーを何とか崩したい。アウトの取り方と取られ方を大事にしていきたい」と話している。

◆三重(三重)― 149キロ右腕を欠いたまま、3投手で守り切った

大会成績
2回戦(8月11日・第4試合) 三重 5-3 松商学園
3回戦(8月15日・第3試合) 三重 5-2 履正社

【大会通算】2戦2勝 10得点・5失点(1試合平均5.0得点・2.5失点)

序盤で主導権、早めの継投で逃げ切る(2回戦)

三重は初回、4番・福田篤史(3年)の適時打などで2点を先制。3回は無死一、三塁から福田の内野ゴロの間に1点を加え、5回にも2番・前野元佑(2年)の適時打と5番・立松宗馬(3年)の犠飛で2点を追加し、5-0と突き放した。福田は4打数3安打2打点と当たった。

先発の左腕・上田晴優(3年)は3回を4安打無失点。ただ走者は背負っており、沖田展男監督(48)は「ちょっとあかんな」と早めに動いた。4回から出た2番手・船橋昊(2年)が5回を1失点と好リリーフし、9回は背番号1の吉井海翔(3年)が2点を失いながら後続を断って5-3で逃げ切った。船橋は三重大会での登板が1試合2回だけの2年生。6回まで走者を許さず、8回2死三塁で相手5番に自己最速140キロを含む直球5球を続けて三ゴロに仕留めた場面が、この試合の分岐点になった。

初回の無死満塁を3点に変え、履正社を封じる(3回戦)

3回戦は優勝候補の一角・履正社との対戦だった。初回、無死満塁から相手捕手の三塁けん制悪送球でまず1点。

1死後、立松の適時内野安打で2点目を加え、内野ゴロの間にもう1点。長打なしで3点を奪った。2回にも3番・秋山隼人と立松の適時打で2点を加え、序盤で5-0とした。この回、履正社も初回に1死二、三塁の好機を無得点で終えており、序盤の1イニングの差がそのまま試合を決めた形になった。

上田は5回を52球、4安打無四死球無失点。6回から船橋に代わり、7回に2死から3連打を浴びて2点を返されたが、8回からマウンドに上がった吉井が2回21球、無安打1四球無失点で締めた。対戦した打者はわずか6人だった。三重の12安打はすべて単打。守備は2試合連続の無失策で、三重県勢としては夏の甲子園通算40勝の節目でもあった。2014年の準優勝以来12年ぶりの8強入りとなる。

3投手の合計18回、エースは3回しか投げていない

三重の投手起用は明確に分業型だ。大会2試合の内訳は、上田が8回無失点、船橋が7回3失点、吉井が3回2失点。

合計は天理の長尾と同じ18回だが、最も投げているのが背番号10の上田で、背番号1の吉井は3回にとどまる。球数の負担という点では、8強のなかでも軽いほうに入る。

もっとも、この形は当初の設計とは違う。三重は最速149キロの右腕・古川稟久(3年)を含む3本柱で三重大会を勝ち上がったが、決勝で古川が右腕を痛め、ベンチ入りしながら今大会はまだ登板がない。船橋はその穴を埋めるかたちで役割が回ってきた投手だ。大西新史主将兼捕手は、その仲間を決勝まで連れていくと話している。

休養日明けの16日には練習を再開した。履正社戦の8回、一塁へヘッドスライディングした際に左小指を脱臼して退いた水野央清は、検査で骨に異常なしと診断され、別メニューで調整している。指名打者で先発している東堂竜馬は約2週間ぶりに柵越えを放った。沖田監督は「いつも通り。それが良い」と話している。

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投球数制限を心配する必要があるのは、実は両校とも同じではない。

長尾は7日間の計算で158球しか消化しておらず、残り342球。制度上の制約は事実上ない。それでも、中4日で158球を投げた直後に中2日で3試合目という負荷は、数字に表れない部分で効いてくる可能性がある。三重は最も投げている上田でも大会8回、直近登板は52球。3人のうち誰から入っても余力はある。

勝ち方の質でも対比が出る。天理は3回戦で0-3から逆転しており、追う展開を1度経験している。一方の三重は2試合とも序盤に先行し、リードを保ったまま試合を進めた。先に取られたときにどう戦うかを、三重はまだこの大会で見せていない。

準々決勝の見どころ

最大の焦点は、天理が長尾で3試合目を通すのかどうかだ。ここまで他の投手が1イニングも投げていない以上、継投に切り替えれば実戦から離れた投手を大舞台で使うことになる。逆に長尾で押すなら、中2日・3試合連続完投という負荷を打線がどこまで援護できるかが問われる。天理は2試合とも6回に大きなイニングをつくっており、藤原監督が「我々は後半のチームです」と語る通り、試合が動くのは中盤以降になりやすい。

三重にとっては、その中盤をどの投手で渡すかが勝負どころになる。上田で立ち上がりをつくり、船橋でつなぎ、吉井で締めるのがここまでの形だが、7回に2点を失った船橋のイニングが唯一のほころびでもあった。藤原監督が「必勝リレーを何とか崩したい」と口にしたのは、まさにこの継ぎ目のことだろう。三重は初回に得点する試合が続いており、序盤で先行できれば継投の設計はそのまま機能する。長尾を早い回から動かせるかどうかが、三重にとっての分岐点になる。

もう一つ、指名打者制の使い方も見どころだ。今大会から夏の選手権でも導入された制度で、三重は東堂を指名打者に据えて打線を組んでいる。1人の投手に長いイニングを託さない三重の設計と、指名打者で打線に厚みを持たせる発想は連動している。天理が長尾の打席をどう扱うかも含め、投手起用と打順の組み方は序盤から表に出る。

勝者は19日の休養日を挟み、20日の準決勝に進む。相手は同日第2試合、仙台育英(宮城) - 智弁和歌山(和歌山)の勝者となる。

なお「バーチャル高校野球」では、開会式と開幕試合から決勝までの全48試合を無料ライブ配信する。

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