【夏の甲子園】準決勝・天理 - 健大高崎 完投でつないだ天理、6人でつないだ健大高崎

第108回全国高校野球選手権大会は8月20日、阪神甲子園球場で第14日を迎える。
午前10時30分から準決勝第2試合として天理(奈良) - 健大高崎(群馬)が行われる。

ここまでの3試合すべてを先発投手が一人で投げ切ってきた天理と、4試合で6人の投手をつないできた健大高崎。同じ4強でも、ここまでの勝ち方の設計図はほとんど正反対だ。休養日となった19日、青柳博文監督(54)は西宮市内の球場でノックや打撃練習など約2時間の最終調整を終え、天理を「本当に格上ですからチャレンジャー精神でやるのみです」と評した。多くは点が入らないと見て、少ないチャンスを拾い、失点を抑えて競り勝つ——指揮官が描くのは、まさに前日の準々決勝と同じ絵だ。

ちなみに今大会の4強は天理、智弁和歌山、横浜、健大高崎。4校すべてが全国優勝の経験を持つ。夏の大会で4強すべてに優勝経験があるのは1961年、2025年に次いで2年連続3度目となる。

天理(奈良)― 「6回のチーム」が、準々決勝で先手を取った

大会成績
2回戦 8月10日(第6日第4試合) 天理 7 - 2 福山
3回戦 8月15日(第11日第1試合) 天理 6 - 3 高川学園
準々決勝 8月18日(第13日第1試合) 天理 7 - 0 三重

通算3戦3勝/20得点・5失点(1試合平均6.7得点・1.7失点)

2試合続けて、6回に4点

初戦となった2回戦の福山戦。天理は5回までわずか1点だった。4回に主将で4番の金本相有(3年)が本塁打を放って先制したものの、そこから流れは止まっていた。動いたのは6回だ。7番・大塚弘登(3年)、1番・山中喜晴(3年)、3番・永井仁之丞(2年)と適時打が続いて一挙4得点。

7回、9回にも加点し、7-2で押し切った。

続く3回戦の高川学園戦は、さらに極端だった。5回まで無得点、しかも3点のビハインド。だが藤原忠理監督(60)はクーリングタイムでビッグイニングの到来を選手に説き、その通りになる。6回、先頭の永井から中軸の3連打で1点を返すと、押し出し四球と押し出し死球で同点。1死満塁から山中の犠飛で勝ち越した。この回もまた4得点だった。山中は8回にも2点適時二塁打を放ち、この試合3打点。

2試合続けて6回に4点。藤原監督は「我々は後半のチームです」と、前半で試合を決めるチームではないと言い切っている。

エースは131球と158球、そして準々決勝は「初登板」の左腕

この2試合を投げ切ったのが、エース右腕・長尾亮大(3年)だ。福山戦は131球で9回2失点13奪三振。

中4日で臨んだ高川学園戦は自己最多の158球を投げ、3失点ながら6回以降を無失点に抑えた。2試合連続の完投、2試合連続の2桁奪三振。本人は「甲子園で最後まで投げ切れたのは自信につながった」と手応えを口にしている。奈良大会でもチーム最多の5試合に登板して無失点だった右腕である。

そして18日の準々決勝、藤原監督が先発マウンドに送ったのは、ここまで一度も登板のなかった左腕・橋本桜佑(3年)だった。

三重戦は、これまでの2試合とは逆の入り方になる。2回に金本主将が今大会2本目となる左越えソロで先制。4回には8番・小沢典弘(2年)の適時打で加点し、早い回から先手を握った。8回に大塚と小沢の連続適時打で3点、9回にも金本の適時三塁打などで2点。13安打7得点で突き放している。

橋本は9回を154球。被安打9で三者凡退の回が一度もないという苦しい内容ながら、6度の得点圏をすべてしのいで完封した。

試合後、藤原監督が驚きを口にしたほどの一世一代の投球だった。9年ぶりの4強入りを、大会初登板の左腕が呼び込んだ格好になる。

20日に向けて――長尾は3回戦から中4日。直近7日間の球数は158球にとどまり、球数制限の面での不安はない。橋本は準々決勝から中1日で154球を投げた直後。順当なら長尾の先発だが、3試合すべてを先発完投でまかなってきた天理が、ここで初めて継投に動くかどうかも焦点になる。

健大高崎(群馬)― 4試合で失点2、夏は初の4強

大会成績
1回戦 8月7日(第3日第2試合) 健大高崎 7 - 1 八幡商
2回戦 8月13日(第9日第1試合) 健大高崎 1 - 0 東海大甲府
3回戦 8月16日(第12日第1試合) 健大高崎 4 - 1 佐野日大
準々決勝 8月18日(第13日第4試合) 健大高崎 1 - 0 有明 ※延長10回

通算4戦4勝/13得点・2失点(1試合平均3.3得点・0.5失点)

4試合で許した点は、たったの2

初戦の八幡商戦は5回に6点を集中させて7-1。2年生右腕・石垣聡志が4安打完投し、毎回の11奪三振を奪った。8回を終えて102球という省エネぶりだった。

2回戦の東海大甲府戦から、健大高崎の夏は1点勝負に変わる。5回まで0-0。1死一、二塁から4番・佐藤麻恩(3年)が右前へ適時打を放ち、これが決勝点になった。

この佐藤は「4番・DH兼投手」で先発している。今大会から導入されたDH制を、二刀流の選手を打線に残したまま降板させる形で使った起用だ。降板後は左腕・北田莉玖(2年)、石垣とつないで完封リレー。

3回戦の佐野日大戦は2回に先制を許したが、その裏に岩井由来(2年)の右前適時打で同点、豊永飛輝(3年)の左前打で勝ち越し、神崎翔斗(2年)の適時打で3点目。6回には狩野蓮義(1年)の中前適時打も出た。マウンドは1年生左腕・大橋叡刀が2回1失点、新倉大輝(3年)が2回無失点、北田が4回無失点、9回は三塁手の石田翔大(3年)が最速147キロで締める4人の継投。青柳監督はこの試合、早めの継投で石垣ら主力投手を温存できたことを収穫に挙げていた。

延長10回、主将のバットが内野を破る

そして準々決勝。3試合連続の逆転勝ちで勢いに乗る有明の斉藤遼汰郎(3年)と、石垣の投げ合いになった。

石垣は初回、先頭打者に安打を許し、二盗・三盗で2死三塁のピンチを招いたが、4番を遊ゴロに仕留めて切り抜ける。以降もゼロを重ね続けた。9回裏、健大高崎は2死満塁と攻め立てたものの代打・園田蓮(3年)が見逃し三振。

0-0のまま延長タイブレークに入った。

10回表を無失点でしのぐと、その裏。1死二、三塁から打席に立ったのは、2番を打つ主将・石田雄星(3年)だった。打球は二塁手の正面へ。本塁へ送球されたが、走者の生還がわずかに早くセーフ。有明のリクエストによる映像検証でも判定は覆らず、サヨナラ勝ちが決まった。

石垣は延長10回を110球、5安打無失点。3回戦で完全に休ませたエースが、大一番を一人で投げ切った。6度目の夏の出場で、初のベスト4。夏の最高成績だった2014年の8強を、12年ぶりに更新した。

20日に向けて――石垣は準々決勝から中1日。直近の登板は18日の110球のみで、球数制限に抵触する心配はない。

ただし試合が終わったのは夜だった。北田、佐藤、石田翔ら控えの厚みをどう配分するかが、そのまま試合展開に直結する。

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得点力は天理、失点の少なさは健大高崎。天理は3試合で20点を挙げ、準々決勝でも13安打を放った。対する健大高崎は4試合で2失点しか喫していないが、13得点は4強で最も少なく、1点差勝ちが2つ含まれる。打ち合いなら天理、ロースコアなら健大高崎という構図は、青柳監督の前日の見立てともきれいに重なる。

準決勝の見どころ

1|石垣は中1日で行くのか

最大の焦点はここだ。石垣は18日、延長10回を110球投げ切った。しかもその試合は第4試合で、終了は日が落ちてから。天理は同じ日の第1試合を午前中に終えている。休養日を挟んで中1日という条件は同じでも、実質的な回復時間には差がある。健大高崎はここまで4試合で6投手を起用し、3回戦では石垣を完全に温存した。そのやりくりの余力を、どこでどう使うか。青柳監督の継投は序盤から動く可能性が高い。

2|「後半のチーム」は、先手を取れるか

天理は2回戦・3回戦とも5回まで沈黙し、6回に4点を奪って勝ってきた。ところが準々決勝では2回に先制し、先手を握ったまま押し切っている。相手が石垣なら、大量点は望みにくい。序盤に1点でも先に取れるかどうかで、天理の戦い方は大きく変わる。金本主将は準々決勝でソロと適時三塁打の2長打。4番の状態は上がっている。

3|1点をめぐる攻防

健大高崎は「機動破壊」の看板通り、足を絡めて1点をもぎ取る。天理も奈良大会5試合で失策4という守備のチームで、準々決勝では2年生捕手の強肩が光った。一方の健大高崎も準々決勝で幾度も好守を見せている。盗塁、バント、そして内野の一歩。どちらも守りから入るチームだけに、1点の重みは相当に大きい。

勝者は21日の休養日を挟み、22日午前10時からの決勝に進む。もう一方の準決勝第1試合(午前8時開始)は智弁和歌山(和歌山) - 横浜(神奈川)。

なお「バーチャル高校野球」では、開会式と開幕試合から決勝までの全48試合を無料ライブ配信する。

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