【夏の甲子園】健大高崎、3度目の「1-0」で初の決勝へ 46回2失点、6人でつないだ群馬の設計図

第108回全国高校野球選手権大会は8月20日、阪神甲子園球場で第14日を迎え、準決勝2試合が行われた。
第2試合は健大高崎(群馬)が天理(奈良)を1-0で下し、同校初の決勝進出を決めた。

天理   0 0 0 0 0 0 0 0 0 = 0
健大高崎 1 0 0 0 0 0 0 0 × = 1

【天】長尾-小沢 【健】佐藤、北田、石田翔、石垣-大岩

決勝は8月22日(午前10時開始予定)、智弁和歌山(和歌山)と対戦する。

「1-0」が、この夏3試合目だった

初回、健大高崎は四球と安打で1死一、二塁をつくり、4番・佐藤麻恩(3年)が右前へ運んだ。二走・石田雄星が生還して1点。試合を通じて動いたスコアボードは、結局この1マスだけだった。

この「1-0」は、健大高崎にとって今大会3試合目である。

1回戦(8月7日) 健大高崎 7-1 八幡商
2回戦(8月13日) 健大高崎 1-0 東海大甲府
3回戦(8月16日) 健大高崎 4-1 佐野日大
準々決勝(8月18日) 健大高崎 1-0 有明 ※延長10回タイブレーク・サヨナラ
準決勝(8月20日) 健大高崎 1-0 天理

【大会通算】5戦5勝 14得点・2失点(1試合平均2.8得点・0.4失点)

投球回は延長10回のあった準々決勝を含めて46回。そのうち自責点はわずか1で、防御率0.20という数字になる。
準々決勝を終えた時点で「37回2失点、防御率0.24」と報じられていた数字を、準決勝の9回無失点でさらに削った格好だ。

打線は決して打ち勝つタイプではない。準決勝前の時点で1試合平均3.25得点。天理の6.67得点と比べると半分以下だった。それでも勝ち上がってこられたのは、失点を「0か1」に固定し続けたからにほかならない。
青柳博文監督(54)は準決勝前、勝ち上がりの要因を投手陣が点を与えなかったことだと語り、「多く点を取られると厳しいので、3点くらいのなかで勝負できれば」と理想の展開を口にしていた。

実際の試合は、その想定よりさらに1点少ないところで決着した。

4番・DH兼先発投手――佐藤麻恩が「自分で決めた1-0」

先制打を放った佐藤は、そのままマウンドにも立っている。「4番・DH兼先発投手」。今大会から夏の選手権に導入されたDH制を、二刀流の選手を打線に残したまま降板させられる形で使う起用だ。

140キロ台の速球に得意のカーブを織り交ぜ、3試合連続で2桁安打を放っていた天理打線を8回途中まで2安打無失点に抑えた。

注目したいのは、佐藤が同じことを2回戦でもやっていることだ。東海大甲府戦では5回、1死一、二塁から右前へ適時打を放って決勝点を挙げ、投げては6回74球無失点。スコアはこの日と同じ1-0だった。自らの適時打が決勝点になった1-0の試合を、一つの大会で二度つくったことになる。

8回2死からの4人継投、締めたのは背番号「1」

健大高崎の勝ち方をもっとも象徴していたのは、8回2死からの継投だった。

佐藤が8回途中で降板すると、2番手は左腕・北田莉玖(2年)。北田は8回を無失点で締めたが、9回に1死二塁とピンチを背負ったところで3番手・石田翔大(3年)へ。石田翔が浅い外野フライを打たれた場面では、右翼の狩野蓮義(1年)がスライディングキャッチで拾っている。それでも2死から走者は満塁まで膨らんだ。

ここで4人目としてマウンドに上がったのが、背番号「1」の石垣聡志(2年)だった。一打逆転の場面を空振り三振で断ち切り、4投手による完封リレーが完成した。

石垣は準々決勝の有明戦で、延長10回を5安打110球で投げ切って完封している。中1日での登板は、この日の最後の1人分だけだった。

今大会、健大高崎のマウンドに立った投手は石垣、佐藤、北田に加え、3回戦・佐野日大戦で先発した1年生左腕・大橋叡刀、新倉大輝(3年)、石田翔大の計6人。5試合でのべ13人がマウンドを踏んだ計算になる。ベンチ入り20人のうち8人が投げられる陣容だと、指揮官は準決勝前に説明していた。

1点差を守り切るチームには、投手の数と同じくらい、狩野のような一つの好守が要る。

昨夏の健大高崎のエースは石垣元気。阪神甲子園球場で155キロを計測した右腕で、2025年秋のドラフト会議で千葉ロッテから1位指名を受け、今春プロ入りした。同じ「石垣」姓で、同じ背番号を継いだ聡志は沖縄県出身、元気は北海道出身で、血縁関係はない。
準々決勝後には「新しい石垣です。

今回の甲子園で弟ではないと知ってもらえたら」と笑って話している。

群馬大会では最速148キロを記録し、来年のドラフト候補として名前が挙がる2年生だ。1回戦の八幡商戦では毎回の11奪三振で117球完投。エースナンバーの継承は、数字の上でも成立しつつある。

天理はなぜ止まったか「後半のチーム」と579球

敗れた天理は、健大高崎とほぼ正反対の設計図で4強まで来ていた。

2回戦(8月10日) 天理 7-2 福山
3回戦(8月15日) 天理 6-3 高川学園
準々決勝(8月18日) 天理 7-0 三重
準決勝(8月20日) 天理 0-1 健大高崎

準決勝までの4試合すべてが先発完投。投げたのはエース右腕・長尾亮大(3年)と左腕・橋本桜佑(3年)の2人だけだ。長尾は福山戦131球(9回2失点13奪三振)、高川学園戦158球(3失点10奪三振)、そして準決勝が136球。橋本は準々決勝の三重戦で154球を投げて完封した。
4試合の合計は579球、すべて2人で分け合った計算になる。健大高崎ののべ13登板と、天理ののべ4登板。同じ4強でも、投手運用の思想がここまで違う。

打線の性格も対照的だった。

準決勝前の3試合で天理は20得点。うち17点、85.0%が6回以降に集中していた。
藤原忠理監督(60)が「我々は後半のチームです」と言い切る通り、高川学園戦では5回まで0-3から6回に一挙4点を奪って逆転している。

一方の健大高崎は、準決勝前の13得点のうち12点、92.3%が6回までに入っていた。
この日も1点は初回。「先に取る健大高崎」と「後から追う天理」がぶつかり、先に取ったほうの1点が最後まで残った。

天理は9回、2死満塁まで攻めた。だがこの日はわずか4安打。6回以降の得点は0で終わった。
長尾は136球1失点の熱投を完投で報いたが、味方の援護は届かなかった。天理の夏の決勝進出は、優勝した1990年以来36年ないままとなる。

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決勝は8月22日午前10時開始予定

第108回大会の決勝は8月22日(土)午前10時開始予定。

健大高崎 - 智弁和歌山の顔合わせとなる。

21日は休養日にあたるが、20日に登板した石垣にとって決勝は中1日。ただし直近の大きな負荷は18日の110球で、準決勝は2死満塁からの1人だけ。1週間500球の投球数制限には十分な余裕がある。5試合46回で2失点というチームが、初めての決勝で何点を守りにいくのか。数字だけを見れば、この夏いちばん点の入らない試合になる可能性がある。

なお「バーチャル高校野球」では、決勝までの全試合を無料ライブ配信している。

文:SPORTS BULL(スポーツブル)編集部
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