イタリアにはパスタのレシピが無数にある。本場だからそりゃそうだという話ではあるが、あまりに多いのでレストランなどでメニューを見ていると困ることもある。

「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ(ニンニクとオイルとトウガラシの意)」のように具材がそのまま名前になっているような場合は分かりやすいが、「〜風パスタ」のような名前だと全くイメージできないものも多い。どんな名前があるのか、ちょっとまとめてみたい。

・漁師風パスタ(ペスカトーレ)
パスタにやたらと使われる「〜風」という名前、その由来を調べてみた
(C)Austin Keys


まずは日本でも人気の高いペスカトーレ。イタリア語では「漁師」を意味する言葉で、その名の通り魚介類が入ったパスタのこと。ムール貝やエビ、イカなどの具材が定番だが、魚介類であれば特に種類は問わない。また、ソースはトマトで煮込んでいるイメージが強いが、トマトを使用しないペスカトーレ・ビアンコというバリエーションもある。


・炭焼き風パスタ(カルボナーラ)
パスタにやたらと使われる「〜風」という名前、その由来を調べてみた
(C)Popo le Chien


実はカルボナーラも「~風」パスタのひとつ。イタリア語で炭のことをカルボーネといい、カルボナーラは「炭焼き風」を意味する。名前の由来は諸説あり、仕上げにふりかける黒胡椒が、炭焼職人が手を払った時に落ちる小さな炭の粒に似ているという説や、炭焼き小屋にあるベーコンやタマゴ、チーズなどの保存食を使って作ったなどの説がある。

・木こり風パスタ(ボスカイオーラ)
パスタにやたらと使われる「〜風」という名前、その由来を調べてみた


イタリア語でボスコとは森のこと。ボスカイオーラは「木こり風」という意味になる。こちらもペスカトーレと同じように解釈するなら、森でとれた具材を使ったパスタといったところ。
ただ、実際はキノコが入っていればボスカイオーラと呼ぶことが多い。単純に「きのこのパスタ」と読み替えると分かりやすいかも。

・猟師風パスタ(カチャトーラ)
パスタにやたらと使われる「〜風」という名前、その由来を調べてみた


カチャとはイタリア語で狩りのこと。カチャトーラはそのまま「猟師風」という意味になる。肉が入っているパスタを指すが、大きく切った肉がごろごろ入っているものやミートソースのようなものなどさまざまで、決まった形状はない。イノシシやウサギなど野生鳥獣の肉を使ったほうが「それらしい」感じになるが、実際には鶏肉や豚肉が使われることも多い。


・農夫風パスタ(コンタディーナ)
パスタにやたらと使われる「〜風」という名前、その由来を調べてみた
(C)Tom Ipri


こちらも職業の名前がそのまま名前になったパスタで、意味合いとしては「農夫風」もしくは「田舎風」といった感じ。一般的には野菜とソーセージが入っているものを指すが、ソーセージが入っていないレシピもある。こちらもカチャトーラと同じで決まった形式はなく、コンタディーナと言われれば「野菜とソーセージなんだな」くらいで考えたほうがいい。

・菜園風パスタ(オルトラーナ)
パスタにやたらと使われる「〜風」という名前、その由来を調べてみた
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オルトはイタリア語で「菜園」を意味し、オルトラーナは「菜園風」という意味になる。こちらは数種類の野菜が入っているパスタで、基本的に肉は入らない。ソーセージの入っていないコンタディーナと何が違うのか疑問を持つ人がいるかもしれないが、正直このあたりは曖昧であまり明確な区別はない。


・娼婦風パスタ(プッタネスカ)
パスタにやたらと使われる「〜風」という名前、その由来を調べてみた
(C)Popo le Chien


ナポリの名物であるプッタネスカは「娼婦風」を意味する言葉。入っている具材はトマト、アンチョビ、ケッパー、黒オリーブ、トウガラシなどクセの強いものばかりだが、お互いの主張がバランスよくまとまっていてとても美味しい。
ちょっと驚くような名前だが、名前の由来は諸説ある。娼婦は忙しいから家にあるものをさっと混ぜてソースを作っていたという説もあれば、トウガラシのぴりっとした風味が一筋縄ではいかない娼婦を思わせるという説もある。

ここまで記事を読んでお気づきの人も多いかもしれないが、「〜風」と名前のつくパスタは思った以上に決まったレシピがないものが多い。今回紹介した中では「カルボナーラ」と「プッタネスカ」はほぼ具材が決まっているものの、それ以外は「魚介が入っている」「野菜が入っている」みたいなざっくりした感じ。
このあたりはシェフがどう呼ぶかによるところが大きいのかもしれない。
ちょっともやもやするが、メニューには「野菜パスタ」より「パスタ・オルトラーナ」と書いていたほうが注文してみたい気持ちにはなるので、多少の演出は大切なのかも。イタリア料理店で迷ったら、参考にしてみてください。

(鈴木圭)